▼北海道の地名は、アイヌ語に漢字をあてはめたものが多い。カムイナイを“神”の“恵”が“内”にあると漢字表記したのは、なかなか洒落ていると以前から思っていた。
▼ちなみに「カムイナイ」とは「神の沢」という意味だそうだ。アイヌの人々が、神の恩恵をあずかる、素晴らしい大地と称えるほど、暮らしやすい集落だったに違いない。
▼そこに、国の交付金を目当てに、核のゴミの地下埋設処分場の誘致が湧き起こっている。地元商工会や議会、さらに村長も前のめりのようだ。
▼高齢化と過疎化で、人口は800人程だという。国は文献調査2年、概要調査4年、精密調査14年で、90億円程の交付金を支給するという。
▼アイヌ語で「ヤチネモシリ」とは、じめじめした嫌なところ、化物が封じ込まれる一種の地獄という意味だそうだ。
▼神恵内村は「カムイモシリ」から「ヤチネモシリ」になろうとしているのではないだろうか
。「アイヌモシリ」とは「人間が住む静かな大地=北海道」のことだ。核のゴミの処分場を「神の沢」の埋めるのは、神の怒りを買うことにならないだろうか。
▼今年7月白老町に、アイヌ民族の博物館、民族共生象徴空間=ウポポイが開館した。ウポポイとは「大勢で歌う」という意味だ。
▼「カムイナイ」が「ヤチネモシリ」になれば「アイヌモシリ」は「ウポポイ」は出来ないだろう。
▼「人間が住む静かな大地」とは、持続可能な大地を意味する。ゆえに、北海道には核のゴミ処分場は持ち込ませないというのが、先住民族が現在の道民に残した、メッセージではないだろうか。
▼核のゴミにはプルトニウムも含まれているという。この元素を発見した科学者は、冥王星「プルートー=冥途の王」から名付けたという。
▼創造者の科学者たちは、巨大なエネルギーが将来人類を滅ぼすのではないかと想像したからだろう。さらに、軍事的な重要さを感じ取った科学者たちは、プルトニウムを「銅」というコードネームで呼んでいたという。
▼そのために、本物の銅は【神に忠実な銅】と呼んでいたという。これらのエピソードからも
、この元素は人類と共存できないことを危惧していたに違いない。・・・高木仁三郎著「プルトニウムの恐怖」岩波新書から参照。
▼故高木仁三郎の言葉で印象に残っているものがある。「原子力は専門家だけが知っているという事ではいけない。国民も学ぶべきだ」という意味の言葉だ。
▼神恵内村民は原子力についてどれほどの知識を持っているのだろうか。NUMOや経産省の専門家が来村し、住民説明会を開いた。
▼住民の多くが賛意を示したという、報道が流れている。私の村も15年程前に函館市に吸収合併された。住民説明会も、合併特例債などののメリットだけを強調しただけだった。
▼私は村社会に生まれて、人生の多くを村社会で生きてきた。村の将来をかけた決断をしなければならない時、社会教育の重要性を実感した。
▼「教育とは健全な人間と健全な地域社会をつくることだ」という、プラトンの言葉が浮かんできた。まちづくりの最大の使命は、住民教育にあるのではないかということを、その時つくづく感じた。
▼「その国のトップを見れば国民のレベルがわかる」という言葉も思い出す。神恵内というのは「神の沢」だ。冥途の王が住む土地ではないはずだが。