処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

過去を変えた男

2018-11-18 10:49:09 | 

著  者  篠原 勲

出版社  ごま書房新社

定  価  1404円

 

    

著者がこの本で取り上げた人物久米信廣の仕事は、読む限り、“生き方啓蒙家”と呼ぶに相応しい。とても利益を追う経営者とは思えない。生きていく上で最も大事なことは何なのか。目指すべきは何なのか。どうやればいいのか。著者は久米の波乱万丈の半生をたどりながら、この異色の経営者の形成過程を綴っている。普通の人がここまで変われるのか、こうして自分も変わっていけるのかと、読めば安心感と希望とやる気が出てくる。

どうやら久米は、常に思考しているようだ。といっても、哲学者のする思考ではない。立ちはだかる壁をどうするか、正面突破か迂回か二歩後退か、過去の成功と失敗を顧み、考える。そしてそれをメモる。詩あり散文あり決意文あり。いわば久米の時どきの心奥を、著者は恰好の箇所で読者に紹介する。その内容がいい。読者に自分もメモれば変われるかと思わせる。少なくとも私がそう。

著者は、長年にわたり経済専門誌の編集に携わり大学で教えコンサル業も展開するなど経歴が豊富で著作も多い。実業家や経済人との交わりも夥しい数にのぼろう。その百戦錬磨の目と勘が選んだ久米なる経営者。今は中小企業だがやがて大企業に、とはならないのが常人と違うところ。自らの会社を、人間関係業と呼んで憚らない不思議な御仁である。テンから目指すものはそこにはない。一方で昨今はKYS、スルガ銀行、スバル、神戸製鋼所など利益を追う企業の不祥事や不正・腐敗は枚挙に暇がない。松下や土光、稲盛などが堅持してきた高い商道徳は地に堕ちてしまっている。

久米が掲げる高い理想と精神性優先の考え方は、そんなやりきれない今日の経済世界を再構築する手がかりになる。今、日本社会は一日も早くそして強く、久米に感染すべきなのかもしれない。Change for the better である。

 

 

 


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