処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

日本思想史の名著30

2019-01-29 22:43:15 | 

著    者 苅部 直

出    版 ちくま文庫

頁   数  268頁

第一刷 2018.7.10

 

 

    

“恥ずかしくない程度には常識として身に着けよう”と殊勝な思いで読んでみた。何しろ思想史などとは無縁の来し方なのだから。しかし、なかなかに興味深く読めた。著者が“まえがき”で述べているように≪名著≫には定義もランクも領域もない。自分で勝手に≪名著≫と決めればいいのだ。果たして第三者が≪名著≫と認めようとなかろうと。そう理解したら気楽に読めた。

30の作品(論文)が、一編に6~12頁にかけて紹介されている。時代の古いものから現代への順で取り上げている。最初は『古事記』、最後が相良亮『日本人の心』。

『日本霊異記』、北畠親房『神農正統記』、新井白石『西洋紀聞』、福澤諭吉『文明論之概略』、丸山眞男『忠誠と反逆』等、多くの人に知られる有名諸論の中には、日蓮『立正安国論』、 『教育勅語』、『日本国憲法』なども含まれている。

聖徳太子『憲法十七条』のように、近年、中学学習指導要領に聖徳太子を厩戸王という名に変える案が盛り込まれたなどという近時の動向などにも視野が行き届いているというべきか。

それにしても、研究者というのは凄い。千五百年余の歴史に登場した書物を渉猟し分析・研究し、その成果を世に問うている。その内容は精神史であり魂ともいうべきもの。畏敬の念を抱かずにいられない。

本筋ではないが、この著作の意外な骨太さに感動をした。それは、中国を「チャイナ」と呼称しているのだ。その理由を12行にわたって記している。“「中国」という名称は、シナ人が自分の国を天下の中央の最も優れた国として誇って言う称、従って、我々外国人の立場の人がシナを中国というのは大義名分上おかしい”と『新明解漢和辞典』を援用した上で、「支那」「シナ」は、1946年、連合国の一員であった中華民国の要求による外務省通達で廃止されたが、占領後も踏襲する必要はない。アメリカなどにはzhongguoと呼ぶようには求めず、敗戦国に対してのみ要求するのは不公平な懲罰措置よぶべきではないか。しかし、「支那」「シナ」が差別語であるという誤解が定着してしまった今日、それを使うのはやはり不適切であると考え、「チャイナ」とした、と断っている。一歩を引いた上で正面から物申しているのだ。果たしてこう述べているは、著者なのか編集部なのか出版社なのか。リスペクトに値しよう


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