処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

村上 春樹

2008-03-04 21:32:06 | 


書棚を整理していて遭遇した。B4版半折綴じの『スイング25年の歩み』である。ザラ紙に黒インクでテキスト印刷された小冊子。外側は黄ばんでいる。水道橋駅至近の神田川のほとりのビルの地下にあったトラッド・ジャズ専門の喫茶店「スイング」が開店25周年を記念してつくったものである。発行は昭和58年1月20日。
賑やかで活発な関西と違って、貧弱な関東のトラディショナル・ジャズ・シーンを牽引してきた同店だけあって、当時錚々たる面々が記念のメッセージを寄せている。油井正一、河野隆次、瀬川昌久らのジャズ評論家の各氏。ジャズ・クラブの主宰者、レコード会社の幹部などだ。その中に混じって、作家・村上春樹氏も一文を寄せている。

その中で彼は、自分が同店でアルバイトをしていたのは11年前まで、つまり昭和47年までと述べている。何年働いたのだろうか? 期間によっては私が通っていた時期と交錯する。



「トラディショナル・ジャズの良いところは人目を気にしたり格好をつけたりしないで聴けるところじゃないかという気がします」
「当時は大学紛争なんかがポシャちゃった直後で、そういうエア・ポケットのようなところがかえって体になじんだという記憶があります」と書いている。

店に迷い込んだ猫にメズロウと名付けてみんなで飼ったこと、ブラインド・フォールド・テストで一度も当たらなかったこと、『響』でアルバイトをしていた夫人と待ち合わせをして帰宅したこと、神保町「いもや」の天丼が170円だったことなどを紹介し、「大昔の話みたいな気がします」と懐かしく追想している。

彼の作品に通底するジャズ感覚は、ここでも培われたのだろう。
コメント (2)
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