ぜじろぐ

SAMBATOWN・ゼジの書くブラジル音楽やその他あれこれ

店主の心を支えるもの(その2)

2009-01-21 11:30:31 | 日記

こんにちは、オバマ新大統領誕生にあたり、円高ドル安ストップの動きにならないうちにさっさとブラジル取引先への送金を済ませてきた、ちょっとセコいサンバタウン店主です。いつになってもある程度のまとまった資金を動かすというのはドキドキものです。ATMを目の前にして心臓バクバクしちゃいました。ワタシ絶対金融マンにはなれそうにありません。

さて、そんな弊店のか弱いキャッシュフロー話などはどうでもいいとして、今回はブラジル音楽に全っ然関係のない本の紹介を。最初の記事を一体いつ書いたのかさえ覚えていない「店主の心を支えるもの」シリーズの第2弾。「ホワンの物語~成功するための50の秘密」(Robert J. Petro著、山川紘矢+山川亜希子訳、飛鳥新社版)について。

店主も2003年に世間で言うところの脱サラなる行為に及び、サンバタウンを立ち上げたわけなんですが、やはり自分で何か事業を起こすにあたり、coraçãoの拠り所といいますか、指針となる大事な書物というのが何冊かあります。その中でも経営理念とか目指す生き方について、迷ったときにいつも目を通すのが本書です。ちなみに訳者はあのパウロ・コエーリョの名著「アルケミスト」の翻訳も手がけられています。

両親があいついで亡くなり、非情な地主に農場を追い出され、少年ホワンはロバとともに都会へと旅立つ。
自分自身を愛し、信頼していくこと。それによって危機でさえも飛躍するためのチャンスと考えることができる!
(表紙肩の序文より引用)


とまあ、どこかの国の雇用不安情勢を想起させるストーリー展開ですが、本書は例えば「蟹工船」のような夢もチボーもない暗鬱な雰囲気はなく、逆境を感じさせながらも光ある出口に守られているような、まあ予定調和と言われればそれまでなんですが、読んでてストレスを感じません。また「あなたのために、とても嬉しいわ」みたいな「ひょっとして下訳のまんま入稿しちゃった?」といぶかってしまいそうな凄まじい訳文も素晴らしく、おれならこう訳するけどなあ、と想像力を存分に働かせつつ文章に深く入っていけるので、「アルケミスト」と同様、ある意味名訳と言えるでしょう。あ、ちなみに物語の舞台はメキシコです。

実体のないマネーゲームや自己利益の追求にしか興味がない方には本書はちゃんちゃらおかしく思えるかもしれませんが、自分の人生を、自分なりの確かな足取りで歩んでいきたいと常日頃お考えの方にオススメしたい一冊です。経営の要所についても実に平易に示唆されているので、特にこれから起業したいと思っている方にはうってつけでしょう。個人的には、ある種SF小説にも近い荒唐無稽さを感じた「アルケミスト」より遥かに読みやすく、素直に感動できる名作だと思います。

一点だけネタバレに近い話題に触れてしまって申し訳ないのですが、ストーリー中ホワン(ブラジルだとジョアンですね)が幾度となくピンチを迎える場面で必ずと言っていいほど登場するパトロン的存在の大富豪・エクトル翁の描写が、ワタシにはどうしてもエルメート・パスコアルの姿とダブって仕方ありません。

以上、なんとかブラジル音楽ネタに無理矢理つなげて終わらせてみました(笑)。