おお、ぜじろぐカテゴリでようやく「楽器」の話題が満を持して(持してたの?)登場です。今回はカヴァキーニョ(以下カヴァコ)の話を。
よく「どこのカヴァコが良いか(好きか)?」という話題になった際、サンパウロ派とリオ派に分かれます。サンパウロですと店主の知っている限りでは、
・JB(João Batista)
・Carlinhos ※06/10訂正:工房はミナス、代理店はサンパウロというのが正解でした
・Ariass
・Manoel Andrade
・MATER
といったところで、中でも上から三つ目までは日本でもポピュラーです。特にJBについてはその音と仕上がりの素晴らしさ(但し値段もメチャ高)でファン垂涎の名器といえましょう。ちなみにRozini, Del Vecchio, Gianniniの3社はいわゆるメーカー品です(もっとも最上級機種あたりですと専任の職人さんが造ったりしてます)。
しかしながら、やはり皆が憧れるのは本場(何がどう本場なのかよくわかりませんが)リオの職人さんの手による弦楽器でしょう。特に日本においてDo Soutoの名声は揺るぎないものになっています。これは特に70年代から80年代の前半にかけての製品が経年変化も併せて極上の音を出す名器と言われているからではないでしょうか。店主も少し前に何かのオークションで、このDo Soutoの70年代モノが日本円にして約15万円という値段(ブラジルでですよ!)をつけられていたのを見てびっくらこいた記憶があります。ここ毎年来日してくれている5 no choroのカヴァコ奏者、ルシアーナ・ハベーロの愛器が正にこれ。70何年モノだったかせっかく聞いたのに忘れてしまいました。彼女曰く「これはぜったい誰にも譲らない」と言ってたのが印象的です。Naaaaaão, とかゆってましたもんね。この他にも、Jo Nunes, Barrosといった職人さんがいたりしますが、これらのオーナーさんはまだ日本で見かけるのは稀です。
そんな中、5 no choroのルシアーナやマウリシオ・カヒーリョ(7弦)らが「リオで今いちばん良い職人さんはどこ?」という店主の質問に対し、口を揃えて答えたのが
「Rogério Santos!」
とのことでした。ホジェーリオ・サントス。職人さんの名前はRogério dos Santosですが、ブランド名はRogério Santosといいます。さて、本日この職人さんの手による楽器が2台入荷して参りました。メイプルとハカ(モゴモゴ)胴のものです。
2006年製、出来たてのホヤホヤなので音はまだまだ硬そうですが、それでも音のデカさが違う、粘りが違う、甘さが違う。JBに比べると細部の仕上げが粗いのがご愛嬌ですが、良い味出してます。特徴はネックがやや薄く、Carlinhosに代表される三角型ネックとは対照的です。このへんは好みが分かれるところでしょう。マニアな話になりますがYAMAHAのエレガットAPXシリーズをご存知の方なら「ああ、あのネック形状か」とご理解いただけるでしょう。あの薄さです。また同型器を比べて見ると、使用木材だけでこうも音が違うのかと驚かざるをえません。店主は最初「ハカ(むにゃむにゃ)が甘め、メイプルが明るめ」の音だと思い込んでいたのです。昔フェンダー社のエレキギターのネックでローズウッドとメイプルを使用しているのを見た影響が強いようです。JBはいざ知らず、Rogério Santosに関しては全く逆でした。ハカ(ゲップ)の音が「いきなりベアナックルでストレートパンチを浴びたようなインパクト」とすると、メイプルは「いつの間にかマットに気持ちよく倒れていた」といった感じの音なわけです。すみません、全然言っている意味わかりませんね。つまり、前者がスパーン!ガツーン!といったアタッキーでパワー剥き出しの音なのに対し、後者は輪郭がフワッと柔らかくもいつの間にかスッと立ち上がってくれる音のように(ワタシには)感じられました。ともあれこのへんは個人の感覚によるところが極めて大きいので、実際に手にとってお試しいただければと思っております。
それにしてもみんなどうしてリオの楽器に惹かれるのでしょう。音でしょうか?仕上がり等の風合いでしょうか?サンパウロが大都会・東京だとすると、リオはまさに大阪。カリオカ訛りもある意味関西弁に近いものがあります。まあ関東風お雑煮か関西風お雑煮のどっちが好きか、みたいな議論と似ているかもしれません。しかし要は本人のお好み次第。音の相性、実際に持って弾いてみた時の「おお、これは・・・」という出会いの予感。そういったところで予算と相談しながらチョイスしていただくのがやはりベストなのではないでしょうか。
そんなわけでサンバタウンは日本で唯一の「ブラジルの職人さんが造った楽器の弾き比べができる店」を目指して今後も頑張って参ります。遠方からのお客様は何かの折に無理にでも用事を作って是非お越し下さいませ(名古屋はカヴァコ/バンドリン/7弦ギター人口が極端に少ないもので・・・)。