ぜじろぐ

SAMBATOWN・ゼジの書くブラジル音楽やその他あれこれ

ワタシの好きな1枚(その壱)

2006-10-28 17:41:15 | CD

う~ん、10月に入ってから記事エントリ数が激減してますね。こりゃいかん。
ブラジル音楽専門店たるもの、もっと積極的に情報発信せねば。
というわけで思いつき企画「ワタシの好きな1枚シリーズ」。その壱だけで終わらないようにしたいものです。

売り物としては在庫で残っていないのですが、知る人ぞ知る女性シンガーソングライター、ファチマ・ゲヂス(Fatima Guedes)の93年作、"Pra bom entendedor..."を。

この人はレイラ・ピニェイロとシモーネ・ギマランエスのちょうど中間点にあたるようなクセのある声質の持ち主で、なかなかブラジル音楽入門者の方には受け入れられない傾向にあるのですが、はっきり申しますと、ものすごい傑作だと思います。
店主は96年末に初めてブラジルに行った際、友人のブラジル人ドラマーから現地で「これをやろう。お前なら絶対気に入るはず」と言ってプレゼントしてもらったのがこのCD。白状すると、本当の意味で気に入るのに5年の歳月を要しました(笑)。それくらい当時のワタシの耳は未熟だったというわけですね。なんせやれスカンキだとかやれチンバラーダだとか騒いでいた頃ですから・・・。

で、この盤、何が凄いかというと、もう作詞・作曲・編曲・演奏陣から全てにおいて極上アコースティックMPBの要素が思い切り凝縮されているわけであります。
まず1曲目のスエリ・コスタ作、"Violão"から。エリオ・デルミーロの美しいギター1本をバックにファチマが歌い上げます。パウロ・セーザル・ピニェイロによる詩がこれまた美しすぎ。拙訳ご容赦。

ある日
わたしは見た
道の途中
横倒しになった木を
それは丸太ではなく
松の一枚板だった
それを一人の職人が
女体の形に彫っていた

そのあと
わたしは見た
夜のさなか
あの職人が
月の光を集め
銀色の弦を紡ぎだしていくのを
それらはぴんと張られ
露わな女体を震わせた

そして最後に職人は
この木でできた女に
心を埋め込んだ
そして彼女を抱き締め
素敵な名を与えたのだった

かくして
ヴィオラゥンが生まれた

もうギターファンにはたまらない歌詞ですね。弾き語りとかしたくなってきませんかこういう歌。松の木?てことは表板?とか思ってしまうアナタとワタシは立派なギターフェチ。さて、2曲目はギンガによる一度聴いたら絶対耳にこびりついて離れない変態フレヴォ、"Vô Alfredo"。ギンガのギターワークとスザーノのパンデイロが強烈そのものです。どうやったらこんな作曲ができるんでしょうか。毎回思うんですがちょっとおかしいです、ギンガって人。

その他参加ミュージシャンとしてはクラウヂオ・ジョルジ(ギター)の名がありますね。この人の名前がクレジットされてたら、まずその内容には安心していいです。も、最高です。それからベースにはシザゥン・マシャードにアルトゥール・マイアがほぼ半々で担当。これで粘り腰サウンドも保証されました。ジルソン・ペランゼッタの名前も見られます。

4曲目には我が兄貴レニーニの"O silêncio das estrelas"が入ってます。正直言って兄貴のオリジナルヴァージョンより数倍カッコいい。なんつったってレニーニ&スザーノがバックで演奏してるンですから。あの伝説の名盤「Olho de peixe(通称ウオノメ)」を製作した同年の録音ですよ。ていうか年代的に考えるとむしろこれこそがオリジナルと呼ぶにふさわしい。もう目頭が熱くなります。

次にヂジャヴァン(わざわざそういう書き方すんな)の"A rota do indivíduo (Ferrugem)"ではなんとヂジャヴァン(笑)本人がギター弾いてます。ここでのファチマの歌、そして演奏の「間」は本当に素晴らしい。

少しおいてセルジオ・サントス作曲の粋なサンバも良い味わいを出してます。そしてハイライトはファチマ本人の作曲による"Silenciosa"。これは間違いなく泣けます。ハンモックに揺られながら優しく頭を撫でられているような安らぎ感・そよ風感。ちょっと世の中にお疲れ気味の方など一気にぶわッと来ちゃうかもしれません。かと思うと直後にまたあの変態ギンガおじさんが今度は自身の歌をも披露してファチマとデュエットする曲まであったりしてもう一筋縄ではいきません。その他も挙げていくとキリがない佳曲揃いであります。

しかしながらサンバタウンでは、そのあまりにパッとしないジャケのせいか当初なかなか売れず、耳の肥えたお客さんに店主の手持ち盤を聴いてもらい「おお、これは!」と唸られた時には既に残念ながら在庫ゼロ、入手が極めて困難な状態になっていました(なんつってもVelasレーベルですから)。もう取り寄せは無理かなあと先日このアルバムを店でかけながら調べていたら、意外や意外、廃盤にはなっていないようです。早速オーダーしてみようと思います。タイトルは「良き理解者へ・・・」という意味ですが、皆さんにも彼女の音楽の良き理解者になっていただきたいと祈りつつ、ほんのちょびっとだけCD発注する店主ゼジであります。

尚美おねえさん、再び名古屋へ

2006-10-18 21:58:16 | イベント

いやー、リリアナ・エレーロの初来日公演、すごかったっすね。感動の余韻が今もこの身の内に残っております。
しかしそれでも我々は前を向いて進まなければなりません。そう、ショーロイベントの開催ご案内です(なんでそうなるの)。

リオで活躍中のフルーティスト・熊本尚美さんが、またも散髪のためかどうかは知らねど、再び帰国ライヴを名古屋で行います。最近どんどんショーロづいている名古屋、そしてサンバタウン。この企画は今年の2月に実施して大変好評をいただきました。今回が第2回になります。観る方も参加して演奏する方も是非!是非!是非ぃぃぃ~っ!(息切れ)

「熊本尚美里帰りライヴ&公開ホーダ・ヂ・ショーロ稽古」

日時:12/9(土)18:00開場 19:00開演 23:00頃終了
会場:Cafe Dufi(名古屋市中区新栄3-17-11 TEL 052-263-6511)
    http://www.grappee.com/weekly/cafe/ca020327/top.html

【プログラム】
1.19:00~20:30 ショーロデュオライヴ 熊本尚美(フルート)・Paulo Aragão(8弦ギター)
2.21:00~23:00 公開ワークショップ「ホーダ・ヂ・ショーロ形式での実践稽古」

Charge:ライヴ 予約3,000yen 当日3,500yen(飲食代別) ホーダ受講 1,500yen(楽器演奏者のみ) 

今回もやってくれました尚美さん。相方ギタリストに、あの!ギター四重奏軍団「マオガニ」のリーダー、パウロ・アラガゥンを引き連れての凱旋帰国でございます。まるで宝石のようなパウロのあの8弦ギターを聴けるとは!これはショーロファンのみならず、ギター野郎も見逃せませんね。尚美さん曰く、パウロもやる気マンマンだとか。いいですね、頼もしいですね。

更には名古屋で高まりつつあるショーロ熱の更なる盛り上げを図るべく、またまたホーダ・ヂ・ショーロ(Roda de Choro、ショーロの輪)の形式で、和気あいあいと演奏しながら、なおみおねえさんにショーロアンサンブルの極意を伝授いただきます。管弦楽器から打楽器まで、楽器を演奏できる方でしたら幅広くご参加いただけます。この機会に是非ご自身でショーロを演奏する醍醐味を味わってみませんか?
また楽器をおやりにならない方も、わいわいやりながら演奏するのを見物しているだけでも楽しいですよ。見物のみの場合は受講料はかかりませんので、ギャラリーの方はお気兼ねなく、楽しい演奏の様子をBGMにDufiさんでの飲み食いをお楽しみ下さい。
そして尚美さんには2月以降一段とレベルアップした名古屋ホーダの面々をご覧いただくべくお待ち申し上げております。

※ホーダでは課題曲を予め決めてあります。受講者の方には事前に資料を郵送させていただきますが、各自練習時間の確保のため、お早目のお申込みをお奨め致します。またホーダ稽古希望の方は、お申込み時に郵便番号/ご住所/お名前を併記下さい。

当日の課題曲
◆ Cochichando (Pixinguinha)
◆ Na Gloria (Ary dos Santos/ Raul de Barros) ナ・ゴーヤ!
そのほか名古屋ホーダのメンバーの知ってる曲をランダムに演奏していきます

当イベントのキーワードは前回同様「のんびり、ゆったり、まったり」。プログラム中は飲み食い自由。年始と変わらず今回も年末の無礼講。出演者も飲みまくるらしいです。なんせパウロは尚美さんの飲み友達。名古屋でも熱烈なファンの多いCafe Dufiが、この日再びブラジルの街角のカフェに変わります。こんなユル~い企画、そうそうありません。ていうか店主の趣味だとユルい企画しかできないんですよね・・・。そんなわけで12/9、皆で素敵な音楽漬けの夜を過ごしましょう。

お申込・お問合せ:SAMBATOWN
メールor電話にて受付中です。Mail zezi@sambatown.jp Tel 052-861-0336
※ホーダ不参加でライヴのみご予約のお客様はCafe Dufiにても承っております。
 (Cafe Dufi 052-263-6511)

【追加情報】
※翌日12/10(日)は本山のCafe Milou(ミル)さんにて、なんと名古屋2日目の
ライヴもあります!こちらも要注目!

日時:12/10(日)二部制(入れ替えあり)
会場:Cafe Milou(名古屋市千種区楠元町2-35-1F TEL 052-764-4936)
※ライヴ当日は会場準備のため、17:30オーダーストップ、18:00閉店となります

【プログラム】
 ①第一部 18:50開場 19:00開演
 ②第二部 20:30開場 20:40開演

【チャージ】
各部 2,200yen(入れ替え制) ①②両方ともお申し込みの場合は3,900yen(通し券)となります
 
お申込・お問合せ:Milouさんまでお電話にて直接お願い致します


以上、皆さんのご参加をお待ち申し上げます。

リリアナがやって来る

2006-10-03 20:01:56 | ライヴ

今日はアルゼンチン音楽の話題になります。
ぜじろぐをいつも読んで下さっている方でしたら、あのメルセデス・ソーサをして自身の後継者と言わしめたリリアナ・エレーロが、遂にこの10月、待望の初来日を果たすことをご存知の向きも多いと思います。アルゼンチン音楽界において、フォルクローレと音響派とも一線を画した、人の魂に直接ゆさぶりをかける歌。これはブラジル音楽ファンのみならず、全ての音楽を愛する人に聴いていただきたい機会なのであります。地元の方でしたら中日新聞にこのあいだ記事が掲載されていたのをご覧になられた方もいらっしゃることでしょう。

店主は2年ほど前に彼女のアルバム「Confesión del viento(風の告白)」を聴いたときの衝撃が忘れられません。そこに収録されていた、かつてミルトン・ナシメントもメルセデス・ソーサと歌った「十四歳に戻れたら」や、エドゥアルド・マテオの「Esa tristeza」、あれがもし生で聴けたらと思うと店主、今から指先がぶるぶると震えてきます。危ねえなこいつ。ちなみに不肖ワタクシ、前述の「十四歳に~」をいつか歌いたいと思っているのですが(スペイン語だぜおい)、今んとこ歌詞カード追うだけで泣けてきちゃって歌うどころじゃありません。まだまだ年季が足りないということでしょうか。ていうか誰もワタシの歌にゃ興味ないですよね。失礼しました。

名古屋会場は地元民ならご存知、今池・得三(Tokuzo)。
10/12(木)・13(金)と堂々の2daysです。
open 18:00 start 19:00 前売3,800円/当日4,300円(全席自由・オーダー別)

Liliana Herrero(歌)
Aki Suzuki(歌、ピアノ、招聘発起人)
Matias Arriazu(ギター)
Mariano Cantero(パーカッション)
Yoichi Okabe(パーカッション)
Keisuke Ohta(ヴァイオリン)
Hiroshi Funato(ウッドベース)

お問合せ Tel 052-733-3709(得三)
チケット取扱い:チケットぴあ、得三、そしてサンバタウン(052-861-0336)

詳しくはリリアナ・プロジェクト公式サイトを是非ご覧下さい。

※ご注意:リリアナ・エレーロによる大学での講演会(日本語通訳つき)は日程が下記の通り変更となっております(10/10→10/11に変更)。ご参加予定の方はご確認下さい。
 10月11日(水)17:00- 名古屋大学 国際開発研究科1Fプレゼンテーションルーム

嬉しいことに南山大のあるゼミの団体様が連れ立って名古屋公演にご来場下さるとのこと。南山大とそのお膝元にあるサンバタウンとの具体的な接点がブラジルでなくアルゼンチンというのもやや皮肉と言えば言えますが、そんなちっぽけなことにこだわっていてはいけません。良いものは良いのです。ハンカチかハンドタオルをお忘れなきよう。

皆さん、それでは得三でお会いしましょう!

(当日CD即売会コーナーの売り子として働く予定の店主)