こんにちは、少し風邪の気配を感じつつあるサンバタウン店主です。げほごほ。
けっこう長いことカラダの調子も良かったのですが、やはりどこかしら疲れ、あるいは毒素が体内に蓄積されてきたのかもしれません。東洋医学的に考えると、ここはあえてすんなりと風邪をひいちゃって、それから強制代謝で体内を浄化して再びバイオリズムを上向きに持っていく、という好機でもありますから、あまりクスリに頼らず、十二分な水分補給&保温に努めてなんとかうまくやり過ごしたいものです。
さて、そんな店主のホームレメディな話題なんかはどうでもいいとして、今回はCDの販売についてのおハナシを。
先週末は中原仁さんのブラジル音楽講座が名古屋でありました。で、毎度恒例の、終了後に行われる「仁さんを囲む会(仮称)」に不肖ワタクシも参加してまいりました。都合の良い事に今回の会場はCafe Dufi。1月のCDローテーション作業も控えていたので、併せて用事がいっぺんに済ませられます。なんて効率的なサタデイナイトなんでしょう。
今月のDufiラインナップは以下の通り。
Casuarina/ Certidão
Glória Bomfim/ Santo e Orixá
Leo Minax/ Aulanalua
Marcelo Camelo/ Sou(ちなみに初日で完売)
Marcelo D2/ A arte do barulho
Pedro Luis e a Parede/ Ponto enredo
Renata Arruda/ Deixa
Sérgio Santos/ Iô sô
Yamandu Costa/ Lida
おかげさまで「囲む会」の間もDufiの試聴コーナーは大賑わい。なんせ店内はほぼブラジル音楽好きばかりで占められているわけですからそりゃ当然っちゃ当然なのですが、何にせよ嬉しい限りでございます。
で、試聴をお楽しみいただいている仁さん講座メンバーに解説フォローなどしておりますうちに、ふといりなか時代の接客を思い出して懐かしくなりました。だからといってここで安易にサウダーヂなんて言葉は使ったりしないんであります。
当時はご来店いただいた方に一通りオススメ音源/映像を試視聴いただいていたわけなんですが、お客さんのブラジル音楽リテラシーっちゅうのかな、まあ早い話、お客さんが上級者になればなるほど、接客も一筋縄ではいかなくなってくるんであります。
ブラジル音楽を聴き始めたばかりの、いわゆる初心者の方の場合はこうです。
「なんかイイのない?」
これは単純に、店主であるワタシに提案を求めています。それも諸手を広げて。選択権はほぼ店主側にあります。まだブラジル音楽の知識がそう深くない方は、プロの提案が頼りなのです。そう、彼らは(どっちかというと)仕留めてもらいたがっているのです。この場合こちらとしては、いわゆる「良く売れている商品」、あるいは「一般的に評価の高い商品」からオススメしていくのが最もカタい戦法と言えるでしょう。あるいはお客さんの好みのジャンル等をヒアリングすることによってピンポイント爆撃ワザを使うこともそう難しいことではありません。
しかしこれが上級レベルのリスナーさんになってくると状況は一変します。彼らも同様に、
「なんかイイのない?」
と訊いて来られますが、その言葉裏にはどこかしら「いざお手並み拝見つかまつらん」というニュアンスも込められているような気がするのは店主だけでしょうか。
彼らはブラジル音楽の知識も豊富。贔屓のミュージシャンとか、好きなジャンルとか、レコーディングの音質だとか、数多くのこだわりをお持ちです。そういった方々に通り一遍の接客で「これどうですか」なんて言ってもムダ。なぜなら彼らはたやすく撃ち墜とされたくないからです。ワタシがエースコンバットのパイロットだとしたら、お客さんも百戦錬磨のトップガン。こちらはミサイルをロックオンしようとしますが、彼らはすんでのところでひらりと機体をかわし、照準から外れます。メガストアあたりで山積みされるような売れ線どころには目もくれず、ひたすら自分だけの必殺アイテムを、店のスタッフにいとも簡単に見透かされないよう、しかし鵜の目鷹の目で狙っているのです。ワタシはあの手この手でお客さんのハートをわし掴みにする音源・映像を提案すべく、キーワードを(それと悟られないよう)聞き出します。この間、店主とお客さんとの間に互いのプライドを賭けた静かながらもスリリングな駆け引きの応酬が繰り広げられるのです。そして最終兵器を持ち出した店主の乾坤一擲の1枚!
我がライバルは「おお!」と身悶えしながら、我が一撃により見事昇天。
これこそが接客営業の醍醐味なのであります。いけねえ、手に汗握っちまったよ。
で、今回見事撃墜に成功したミサイルはこれでした。
Anna Luisa/ Girando
昨年夏にセレブなファッション雑誌「ELLE Japon」でブラジル特集が組まれた時(こういう記事を見るたびに、ワタシの愛するブラジルはどこに行ってしまったんだろうという気にさせられます。いや、ただのひがみ発言です、ごめんなさい)、このアナ嬢がどどーんと載ってましたね。ジャケは一瞬裸エプロンかと我が目を疑ってしまいましたが(失礼)、内容は実に洗練されたラパ系のMPBポップス。涼やかな色気のある歌声は女性ヴォーカルファンにかなり訴求します。そしてサウンドの核はギタリスト、フェルナンド・カネッカという男。以前カニョット・ダ・パライーバのトリビュート作を発表したこともあるなかなかの腕前を持った人物で、彼のこりこりっと活きのいいヒラメの縁側の歯応えのような(何だそりゃ?)ガットギターが実に効いてます。そして全体を流れるブラジリアングルーヴ。単なる8ビートの欧米チックなモノではなく、CDのアタマはいきなりジョンゴのリズムが2連発。ペドロ・ルイスあたりの人脈も見え隠れします。その後もマラカトゥ(バックはリオ・マラカトゥ)やコーコ(こっちはニコラ・クラシッキ&コルデスチーノスの伴奏だぜ?)、ジルベルト・ジルのParabolicamaráや、ノーヴォス・ナニワ、もとい、バイアーノスの名曲Os pingo da chuvaまでもフレッシュな感覚でカヴァー。最後は大御所エドゥ・ロボまで迎えて盛大にフレーヴォで締めてくれる。これがいい。やはり新世代とはいえ、その音楽の根底にはブラジルの伝統リズムが存在していてほしいものです。
このアルバムは、サウンドの垢抜け具合からすると、本来はむしろブラジル音楽に入ったばかりの方にオススメしたいのですが、今回の対戦相手は「女性ヴォーカル偏愛」という決定的弱点をお持ちでありまして、そこを店主は逃さずつけこみました。
そんなわけで、このアナ・ルイーザの2nd、例えばアレクシア・ボンテンポのCDにハマった人ならかなりの高確率で気に入りそうな好アイテムなのに、通販ではしばらくの間さっぱり売れずじまい。ようやく今になって回転してきたので、調子に乗ってラスト1枚の在庫を消化すべくわざわざ記事にしてみました。店主、けっこう回りくどい性格だったりして。