マチンガのノート

読書、映画の感想など  

ワイルド・ミッション (2022)監督 ダラス・ジャクソン  出演 タイリース・ギブソン 感想 ネタバレ

2023-04-10 21:41:50 | 日記

原題は「The System」という2022年の米国の映画です。

【あらすじ】

軍隊を退役した主人公は、娘の治療費のために武装強盗をして捕まり、そこで警察幹部から民営刑務所内部での

不正を暴くことに協力することを依頼されます。

そして彼は刑務所の中からスマホで警察幹部と連絡を取り合うことになるのでした。

【感想】

最初の方はクライムサスペンスぽいのですが、刑務所の中に入ってからは一気にトーンダウンです。

何かとチャチに作られていてツッコミどころが沢山で、終始主人公のしかめっ面が画面の中で浮いていました。

軍人が退役後に困窮することを描きたいのか、親子愛を描きたいのか、民営刑務所の問題を描きたいのか、格闘技映画にしたいのか、

定まらないまま物語が進んでいきます。

様々な映画やドキュメンタリーで取り上げられてきたアメリカの刑務所の内部を舞台にした映画ですが、

その様な緊迫感は無い刑務所内部の様子や、さらに何かと雑で中途半端な格闘技大会の様子など、

ゆるゆると進んでゆく内容でした。

監督やプロデューサーにやる気がなかったのでしょうか。

 

 


「自己愛トラウマ」をめぐる岡野憲一郎氏への反論

2023-04-08 21:19:01 | 日記

岡野憲一郎氏は著書『恥と自己愛トラウマ』の中で、自閉症圏のケースである「レッサーパンダ帽男殺人事件」

においても、自己愛トラウマとして論じています。

しかしながら、自閉症圏では自己や主体が曖昧なので、自己愛トラウマということには

当てはまらないのではないでしょうか。

自己や主体があってこそ、誇りや恥などの自己に対する価値づけが生じるので、そこが曖昧な

ある程度障害の重い自閉症圏の人には「自己愛トラウマ」を当てはめるのは無理だと思います。

自閉症圏ですと、自己や主体が曖昧なので、この事件の場合、犯人が自己愛を傷つけられて犯行に及んだのではなく、

犯人が被害者の反応を、それまでに本人が受けてきた様々な暴力などの被害体験と結びつけて、

行動に及んだのではないかと思います。

周囲の反応をどう捉えるのかは、それまでの本人の成育歴などで、かなり違ってくるのだと思います。

 

恥と「自己愛トラウマ」―あいまいな加害者が生む病理

電子書籍ストアKinoppy、本や雑誌やコミックのお求めは、紀伊國屋書店ウェブストア! 1927年創業で全国主要都市や海外に店舗を展開する紀伊國屋書店のECサイトです。ウェブス...

紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

 

 

 

岡野憲一郎のブログ:気弱な精神科医 Ken Okano. A Blog of an insecure psychiatrist

 

 

 


時代と作家について 柳美里と川上未映子の比較

2023-04-07 19:10:52 | 日記

20年ほど前には柳美里さんが売れていて、自著の中で御自身の成育歴についても書いておられました。

それによると父親はパチンコ屋さんの釘師で、職業柄かなりの収入があったのですが、家庭に入れないので、

母親がキムチを作り橋で売ったり、庭で鶏を飼い、それをさばいて食べていたとのことでした。

母親は裕福な人に憧れ、柳美里さんを有名私立校に入れようとしていたとのことです。

 

小説『ゴールドラッシュ』が話題になり、故・河合隼雄さんも注目していたようでした。

対談が何かに載っていた記憶があります。

代表作『ゴールドラッシュ』の主人公というと、パチンコ屋で儲けた家の子供で、大きな家にすみ、地下室もあるという

設定でした。柳美里さんが子供の頃は、御自身の周りにもパチンコ屋さんや飲み屋さんをして、

結構儲けた人が居たのでしょうか。

 

 

柳美里 『ゴールドラッシュ』 | 新潮社

風俗店が並び立つ横浜黄金町。14歳の少年は、中学を登校拒否してドラッグに浸っている。父親は、自宅の地下に金塊を隠し持つパチンコ店〈ベガス〉の経営者。別居中の母、知...

 

 

最近話題になっている『黄色い家』などを書いた川上未映子さんの小説に出てくる主人公というと、

母親がスナックのホステスで、父親はおらず、子供と古くて狭いアパートに住むというものが多いようです。

御本人もその様な暮らしの中で育ったのでしょうか。

柳美里さんの子供時代とは貧しさのレベルが違ってきている感じです。

その時代に売れる女性作家の背景がかなり違ってきているようです。

 

 

川上未映子のおすすめ小説8選。人気の感動作品をご紹介

歌手としてもアルバムを発売、小説家としては芥川賞をはじめとし多くの賞を受賞している作家「川上未映子」。そこで今回は、大阪弁を駆使したリズミカルな文体が魅力の川上...

SAKIDORI(サキドリ) | ほしいが見つかるモノメディア

 

 

 

 


生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる  下西 風澄 文藝春秋 感想 その5

2023-04-03 22:33:34 | 日記

本書の第4章で取り上げられているフランシスコ・ヴァレラの言う、

主体が環境の中に存在するのではなく、行為によって主体と環境が存在し始める、

と言うのは、河合俊雄氏の言う、最初の数字は2とか、竹中菜苗氏の言う、主体が発生するから

対象も発生するというあたりと似ているのが興味深いところでした。

京大の臨床心理の人たちが影響を受けているW・ギーゲリッヒ氏は’42年生まれとのことなので、

ヴァレラの著作やオートポイエーシスに関することに影響を受けていそうです。

やはり臨床でクライアントを前言語的なところから扱うには、主体や内面のあるところから考えても難しいのでしょう。

織田尚生氏の述べていた、『変容的逆転移』というのも、言語以前のところで相互の主体が曖昧になることで

治療が進展することについて取り上げていたのでしょうか。

主体や内面、そして様々な境界の曖昧な自閉症スペクトラムに関わるのにも、言語レベルのみでは難しいのでしょう。

 

 

ギーゲリッヒ夢セミナー

夢を「外から見る」のではなく「内から見る」。まさにすべてのイメージに魂が宿っているかのように一つひとつのイメージに丁寧に添っていくことで、夢の内側からクライエン...

紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア