マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「グリーン・ヘル/The Mous」監督:イエイヨー・ヘレイロ

2018-05-21 00:18:18 | 日記
紛争とトラウマによる記憶の混乱と格差と貧困を扱った映画。
SFホラーと思ってみて、全く違ったが、
よくできていると思う。
「グリーン・ヘル/The Mous」

ボスニアのスレブレニツァで虐殺された両親と兄の遺体が発見され、
埋葬に戻ったイスラム教徒の女性のセルマ(愛称がマウス)とドイツ人ボーイフレンドのアレックス。
森林地帯で車が故障して、なんとか抜け出そうとしているうちに犬が地雷を踏んで
大怪我をする。
そこで密造酒を作っているセルビア人二人が関わるのだが、自分たちを虐殺した
セルビア人ということで、セルマに様々な記憶がフラッシュバックする。
セルマも結構なケガをしていて、それには手当をしてくれている。
アレックスが警察に電話をしても、厄介がって相手にしてくれない。
そこでセルビア人二人がアレックスに、1万ユーロ出せば地雷がたくさん転がっている
森林地帯を抜けて、街まで二人とも連れて行ってやると言うのだが、
ドイツ人のアレックスからすると、そんなことは無償で当然だから払う気は無いとなり、
セルマに逃げるように言うと、背後からライフルで殴り倒される。
酒の密造所にセルマは逃げ込み、追ってきた二人をナイフで殺害。
ドイツ人のアレックスは、セルマのことも想像できないし、セルビア人二人のことも
想像できない。
物語の前半から、セルマとアレックスが近くにいても、お互いの見えているものが
まったく違う描写がある。それがその後の展開に繋がっている。
セルマの顔にしても、最初にアレックスと二人でいるときは綺麗に撮っているが、
物語の進行とともにすごい顔に撮っていて、映像で表現している部分が凄い。




感覚過敏と協調運動障害などについて

2018-05-17 09:51:31 | 日記
「自閉症の現象学」で村上靖彦の言うところの視線触発などによって、
養育者と目が合う、共同注視をするなどを通じて、
外部世界や他者、自己身体や自己感覚などが分節化され、
その場になじんだ乳幼児になっていくのだろう。
そのあたりでの上手くいかなさがあると、外部からの刺激や内的感覚の分化を進められず、
その結果として感覚過敏や協調運動障害などに繋がるのではないだろうか。
分節化が進まずにいると、自己感覚や他者の様子についての認識が発達しないので、
自己の視覚中心のままに留まるのではないだろうか。
共同注視などを安定してする相手がいないことなどは、大きな影響を残すのだろう。
「言葉とイメージの解離」(渡辺あさよ)なども、そのあたりに起源を
持つのだろう。