ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

これぞ! ダイナミズム。Gガンも真ゲッターも、これあってこそ!

2006-08-31 | アニメ
「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」

数日を掛けて、DVD版の「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」を見終わった。

何度も涙を流しそうになった。

天野正道のサウンドトラックがいい。あまりにいい。

序曲に乗ったオープニング。

シズマ・ドライブという新エネルギー・システムが世界を変えた。しかし、悪の秘密結社BF団は「ビッグ・ファイア(BF)」のために世界を狙っているという。それに対抗し得るのは国際警察機構のエキスパートたち。その中に巨大な力を秘めたロボット、ジャイアントロボを操るわずか12歳の少年、草間大作がいた……。

これだけを提示して、本編はいきなり始まる。大作がロボを任される場面なんかは、かなり終盤での回想だ。1話から順番ですよ、というそんな展開ではない。あらかじめキャラクターがあり、それが既に「生きてきた」世界である。

シズマ博士と銀鈴、そして鉄牛の危機! 救出に現れるジャイアントロボ! 印象的でリズミカルな序盤から魅せられっぱなしだ。

フランケン・フォン・フォーグラー博士とバシュタールの惨劇。

エキスパートとしての呉先生、中条長官。その能力、わくわくする要素たくさんである。

アンチ・シズマ・フィールドによるシズマ停止現象の中ではシズマを動力とするメカは動けないのに、動いているジャイアントロボ! ロボの動力は禁断の原子力だった!

……これは、レビューじゃないな。

承知だよ。

もう、とにかく見なさい。あのずんぐり超重量感のロボットを!

絶対見なさい。ジャイアントロボ。傑作だよ!

今川泰宏監督を拝め! そして、あんなの「ガンダム」じゃない、なんて言わせちゃいかんぞ「機動武闘伝Gガンダム」を! 監督名を消されていたって「真ゲッターロボ/地球最後の日」も拝みなさい。

絶対にそれだけの価値があるから!

物欲に負けた~。いえ、鬼神(デモンズ)に負けた~。

2006-08-30 | Weblog
酷い作品なんだ。

うん。とんでもなく酷い作品なんだ。

でも、どこか好きなんだよ~、「デモンズ」。

ウチの近所の古本屋さんで、2,000円程度だったんだよ。しかも「デモンズ2」も売っていて、合せても4,000円か、それとも「2」がもう少し高かったか……。そんな値段だったんだよ~。

まさか、わたし以外にあんなもの欲しがるヤツがいたなんて! 買い損ねた時は本当に落ち込みました。

で、レンタルDVDも出ていないこの作品に……先日、また、出喰わしました! 場所もあろう、秋葉原で。

「DEMONSⅠ&Ⅱ コレクターズDVDボックス(限定3000セット)」!

悩みました。6,200円は高いか、安いか。

アレから10日弱。買いに行きました。買ってしまいました。

ご覧の通り。「アキロンの大王お面」付きです。そんなもの要りはしないのですが、ほら、2,000円ほど高いわけですから、これくらいの差別化がないとやりきれません。

このお面をおちゃらけて被りながら、本編を見て、そのままわたしもデモンズの仲間入り……なんて、イヤですねぇ。

中身のレビューは何時(いつ)になるやら……。なかなか見そうにもありませんが。

(こうなってしまうと、ミケーレ・ソアビの「デモンズ’95」とかも欲しくなりますねぇ。「マカロニ・ホラー・コレクション」、中古商品でも1万とかするんだよね。3枚セットだと、一枚あたりの単価は同じか~)

こうなると、魔の方が楽しそうな「遺産」だなぁ、と思わせるよ、「センチネル」。

2006-08-29 | 映画
センチネル」(The Sentinel)

The Sentinel「前哨」というタイトルの短編SFを知っているか? 

月に到達した人類は月面に明らかに人造であるモニュメントを発見する。そのモニュメントは宇宙のいずこかへと「通信」を送っている。その秘密をなんとか調べようと努力するが、結局壊してしまう。「通信」は途絶え、取り返しがつかないことをしたと悲嘆にくれるが、その直後に気付く。「通信が途絶えた時、遂に我々人類が『ここ』まで到達したと『かれら』は知るのではないか」と。そして、そのモニュメントこそ人類の前哨(見張り)だったのではないか、と。

アーサー・C・クラークの、「2001年宇宙の旅」の原案になった、自身の短編である。

この短編の存在から、The Sentinelという言葉は「前哨基地」のことで、もっと平たくいうと「見張り」のことだと知っていたのだな。

で、昨日の「レガシー」が、魔の遺産をヒロインが結果的には受け継いで、前途洋洋な未来に向かって、死に掛けた恋人とともに生きていこうというお話だが、「センチネル」の役割は……神の側の任務とはいえ、受け継ぎたくないと思うよ、きっと。

ニューヨークのトップモデルであるアリスン(クリスティナ・レインズ)は、弁護士である恋人マイケル(クリス・サランドン。役者だけでお分かりでしょうが、コイツは悪者です)もいて、幸せな毎日を過ごしていた。新しいアパートに引っ越したアリスン。このアパートの最上階の窓辺には、ひとりの物静かな盲目の神父(ジョン・キャラダイン。まあ、この方も普通は化け物役!)がいつも座って外に顔を向けている。その他の隣人たちも、奇妙な人物揃いなのだが、管理人に話す機会があって、実はアパートにはアリスンと神父以外は住んでいないという。隣人たちの代表格であるチェイズン(バージェス・メレディス)が実は悪魔で、住民どもは地獄の亡者であった! 恋人マイケルは前妻殺しで地獄の亡者の仲間であり、アリスンに死ぬことを迫る。それは、アリスンこそ神より大切な使命を授かることが定められたひとだったからだ。盲目の神父同様、自殺未遂で生き延び、罪を負いながら生と死の端境に立てる者が地獄の門の前哨、すなわち「悪魔の見張り(センチネル)」なのである。

アパートの管理人が、入居希望者を案内してきた。「ここは本当に静かな環境よ。最上階に物静かな尼さんが住んでいるだけなの。あの方はただ、窓辺でああして見張っているだけ。とても物静かな方なのよ」

*「センチネル」は、劇場公開も確か短かったし、ビデオ・ソフトは未発売。もう二十数年前に深夜にテレビ放送されたきり、という不遇な作品だ*

*DVD、出ないかなぁ。クライマックスでアパートの部屋にわらわらと現れる地獄の亡者役に、奇形(フリークス)の役者が大挙出演しているのでビデオソフト化できないのだという噂もあるが……それこそ差別じゃないのかな?*

*クリス・サランドンがいい者役なのは「チャイルド・プレイ」。やっぱり悪者なのは……「フライト・ナイト」だね*

*原作「悪魔の見張り」(ジェフリー・コンヴィッツ)は早川書房刊行。文庫もハードカバーも簡単に見つかると思うよ*

「レガシー」! 車ではありません。つまりは、「遺産」なのですが……。

2006-08-28 | 映画
レガシー」(The legacy)

どこか「悪魔の墓場」を思い起こさせる出だし。ただ、メインの人物は「悪魔…」のレイモンド・ラブロックのような男性ではありません。男性サム・エリオットは添えものキャラクター。あくまでキャサリン・ロスなのです、大事なのは。

アメリカ人建築デザイナー、マギー(キャサリン・ロス)は招待を受けて、偶々訪れていたロンドンの、遥か郊外、16世紀に立てられた城館を、恋人のピート(サム・エリオット)を伴って訪れる。城館には同時期に各界で新進気鋭と期待される若き才能が招待されていた。

館には召使いや主人のための看護婦らが勤めている。また、謎めいた白猫たちが闊歩している。

招待客が不可解な死を遂げ始める。(屋内プールで、潜水で泳いで、息を継ごうと顔を上げたところ、ガラスか何かで遮蔽されたか、そのまま溺れることになったりする)。

マギーとピートは脱出を図ろうとするが、容易には果たせない。そしてピートには命の危機が!

実はマギーこそ、この館の魔女の遺産を受け継ぐ人物だったのである。召使いたちは白猫たちが化身した使い魔だった!

それだけの内容で102分。「卒業」のキャサリン・ロス主演といいつつ、この段階では早くもオバさん、という感じで、ちょっとがっかりもする。

しかし! 監督が「ジェダイ」のリチャード・マーカンドで、しかもこの作品が監督デビュー作品なのだ。全体に、スタイリッシュというよりも、何とはなしに、サントラなんかもお洒落な感じの映画ではある。

*やはり日本では未DVD化作品。*

*わたくしはVHS所持です。*

*今日は「テレビの力」という番組を娘が見ていたので、映画鑑賞はなしでした。

夏休み終盤。列島も一様ではありません。靖国問題の向こうに隠れようとしてるお前。反省しろよ!

2006-08-27 | Weblog
昨日は阿佐ヶ谷にお泊りでした。

恒例「高円寺阿波踊り」見物です。本来、26日前夜祭、27・28日本番だったのが、今年は違うようです。第50回ということで、方針変更なのでしょうか?

最近、毎々そうなのですが、さて、どこで呑もうかね、という段になると結果的には「阿佐ヶ谷駅前」に歩いてしまいす。今年の某居酒屋さんは、かなり「洋風」というか、「縁日風」というか、まあ、悪くはないけどね……という感じでした。

一夜明けて、

テレビでアベシンゾウとかアソウタロウとかが、偉そうなことを言っているので、しばらく「靖国にも参ったことがない」ので、靖国に行くことにしました。

わたくしは、この機会にと、正しい手水屋での作法など、息子に伝えました。えー、本来は息子の方が専門家になるのですが、いまだそういうことは伝えられていないそうなので……。(手水屋で、水飲む馬鹿者もいないかと思ったら「あー、みんな水飲んでる~」と言う、いい年した方がいましたよ)。

(あれは、略式の禊《みそぎ》なのです。左手を洗い、右手を洗い、左手に注いだ水で口漱み、また左手を洗う。これで「全身を洗ったことにする」のです。綺麗な体で神様の前に行くのです)。

息子。神職になる気はないといいますが、まあ、資格は取得するのだろうから……。

やはり、靖国は、実際には「政治」の場ではありませんでした。参拝のしかたもわからない多くの人が参拝し、零式戦闘機が展示され、参道の食堂はビールと焼きそばと、お好み焼きと、フランクフルトな……いやいや、それ以上に「靖国うどん」な場所でした。

なにかと、「無宗教な慰霊のにわ」として対比される「千鳥が渕戦没者墓」。まあ、靖国よりは遥かにひっそりしていましたが……これは「神道」と「無宗教」の違いかなぁ~。

ひとに歴史あり。花田少年史。そうか、死んで幽霊になっても個人史の一部?

2006-08-25 | 映画
花田少年史 幽霊と秘密のトンネル

水田伸生 監督

そもそも原作マンガも、アニメ版も見たことがなかったので、まるで情報無垢に等しい状態で見ました。

充分に面白い作品ではありますが、あまりに欲張り過ぎな内容と、過剰なほどの予定調和(というか、うまく行き過ぎとしか言えない収まり方)が気に掛かりました。「欲張り過ぎ」ということとも関連するのでしょうが、ドルビー・サウンドも過剰で、音だけでもびっくりさせられました。心臓停止寸前の「音」が、三箇所はあったぞ!

舞台は、広島県竹原市忠海町という漁港町です。原作・アニメ版は知らないのですが、この舞台設定に、日テレ=ジュブナイルゆえの匂いを感じ取ったと思いました。つまり古くは「転校生」の尾道、昨年同期の「妖怪大戦争」の鳥取の漁港、そして本作です。なんというべきかはわからりませんが、中国地方の港町に特有な「明るさ」がファミリー・ムービーあるいはジュブナイル・ムービーに馴染むのでしょうか、と小難しく考えておりましたが、あるいはもっと単純な着想があるのかも知れません。というのは、監督の水田伸生、広島市の出身のようです。エリアを広く捉えれば、監督にとってはご当地ムービーなわけですね。

「成長するトンネルの幽霊」こと香取聖子を演じる安藤希。「さくや/妖怪伝」(映画)だの「陰陽師 妖魔討伐姫」(Vシネ)だのと、だいたい「化け物退治系」の役どころが多いが、なぜ女子高生? と思っていたら、クライマックスではやっぱり……なVFX格闘でした。しかも、嵐の海の上空で、善・悪が激突するというモチーフには、直接関係はありませんが「仮面ライダー AGITΩ(アギト)」を思い出しました。

「悪徳弁護士幽霊」役の北村一輝。ドラマ「夜王~YAOH~」みたいな微妙な役もないではないのですが、だいたいこの人も化け物系の役が多いので、わかりやすいといえばわかりやすいのですが……。ちょっとねぇ。「あなたの隣に誰かいる」(ドラマ)の伝説の不死身の怪人とか、「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」(映画)のX星人(「マグロ喰ってるヤツはダメだ!」という、あのセリフ!)とか、けっこうこの人のキャラは好きなんだが、この役はあざと過ぎるかもしれません。

花田一路の母親役の篠原涼子。天真爛漫なキャラクターが似合っている。そして、彼女と濱田マリの組み合わせを見て、「アンフェア」(関西テレビ)を思い出してしまった。後遺障害の危険性や臨終を告げた瞬間に一路に飛び起きられる濱田マリの女医というパターン・ギャグは、意外に緊張の場面が続く中で、見事に観客を弛緩させる役割を果たしていたと思います。

父親を演じる西村雅彦。80年代末の東京でのシーンは、例によってのカツラ着用で、これが笑えるのです。

花田一路少年役の須賀健太。なかなか達者な子役です。他の作品は、と確認したら「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」! あれですね。ミニラと一緒に人間とゴジラの睨み合いの間に立つ子ども! それから「ALWAYS 三丁目の夕日」か。なるほど。まあ、とにかく最近の子役の達者ぶりは目を見張るものがありますね。子役といえば、かえすがえすも「GAMERA」を見逃したのが悔やまれる。

「成長するトンネルの幽霊」のもと、幼いころの聖子役の女の子が凄い! 安藤希に似たところもあるし、北村一輝の面影もある。それから一路の親友荘太の幼児時代の子! 見えるんですよ、荘太役の子の、更に幼かったころに。

動物が可愛かった。ジロは、まあ、狙い通りなんでしょうが、それよりも、あの猫がよかった。首掴まれてぶら下げられて、なんだよ、とばかり手(前足)で一路を押し返すさまが……キュートでした。あとは、ちょい役中のちょい役で、触れ合い動物園のウサギも、ウサギ飼い(ウチのペットはウサギの「ももん」!)としては見逃しておりません。

総評:二時間の本編ですが、あっという間に終わったと思います。それは「散漫なほどのあれこれテンコ盛り」だったからだと分析します。どうも辻褄が合わないと思われるシーンがあったりするのですが、それを無視して繋いであるのは、もしかしたら「DVD特別編」で未公開シーンを再現するなんてことが最初から意図されているのではないでしょうか。うーん。合理で見ずに、何となく涙を流してみる、という見方が、やっぱり正しいのだろうと思います。最近涙腺が緩いわたしは……しかし、泣けませんでした。(やっぱり、大味・散漫風味のためだと思います)。

「2」を語る前に、少し語っておこう、「エクソシスト」!

2006-08-23 | 映画
「エクソシスト」(THE EXOCIST)にまつわるあれこれを書き出してみようと思う。

1.イラクの遺跡

考古学者でもあるメリン神父が指導しているイラクの遺跡。ディレクターズ・カット版ではシークエンスが長くなりすぎているので印象が薄れるが、「パズズ」の頭部とともに出土したコイン(オリジナルでは「時代が違う」と言っている)は、ディミアン・カラスのメダイなのである。全編の「予兆」をなす印象的なシーンなのだが。終盤、石段に身を投げたあのカラスのメダイだ。鎖ごと千切れて宙に舞うショットがあるが……。意味はあるのだろうか?

2.音声解析を行うスタジオ

壁面上部に「TASUKETE」と書いてある。もちろん、そこに持ち込んだ録音物を採ったもと、リーガンの肌に浮かんでいた「Help me」の日本語をローマ字表記したものと思しい。

3.病院の精密検査

公開当時も一番怖かったのはこのシーン。「エクソシスト」公開時はわたくし、高校生でしたが、後に大学のとき、同級で以前に「脳腫瘍を疑われたことがある」女の子の話を聞いたが、そのときにその話をとてもリアルに脳裏に描けたのは……思えば「エクソシスト」のこのシーンが浮かんだのだろうと思う。
ホント、スパイダーウォークより怖いですよ。
なお、「犬神の悪霊(たたり)」でも泉ジュンが診察を受けるシーンがあるが、明らかに「エクソシスト」のこのシーンを意識したもの。

4.精神病院重度患者病棟

そして、これまた怖ろしく、悲しいのがディミアン・カラス神父の母親が収容された病棟。「死」に到る病としての、老いは本当に悲しくも怖ろしい。

5.キンダーマン警部

リー・J・コッブがいいなぁ。「エクソシスト3」のジョージ・C・スコットよりも断然いいなぁ。
コロンボばりで、「こんなときに、なんですが、サインをいただけますか?」とかね、カラスとの映画談義もいい。これがあってこその「エクソシスト3」なんだがなぁ。
リー・J・コッブの飄々とした雰囲気がよかったのに。善人に見えるか悪人に見えるかというようなことではなく、ジョージ・C・スコットだと変に真面目すぎていけない。

6.要所要所の顔

心霊写真ではないけれど、あたかもそんな感じで要所要所に「顔」が挿入されるんだよなぁ。

7.チューブラー・ベルズ

マイク・オールド・フィールドのフル・ヴァージョンって、あの当時以来聞いたことがないね。なんか、だらだら長いだけだってようにも思う。

ミッドナイトクロスの原題 BLOW OUT は破裂音。でも、Blow jobは……「あれ」、です。

2006-08-22 | 映画
ミッドナイトクロス」(BLOW OUT)。五本の指に数えたい、マイベスト。

ブライアン・デ・パルマ監督のスプリット・スクリーンとか、定点回転とか、もう、職人芸といわれるテクニックも美しいが、この筋立てが大好きなんだ。完全ネタバレで「映画」を再現します。(出演はジョン・トラボルタとナンシー・アレン。そして、ジョン・リスゴー)。


映画音響技師ジャック①

三流映画「血の浴槽(ブラッド・バス)」を迫力あるサウンドに満ちた作品とするため、「おいおい、ジャック。使い古しの音ばかりじゃないか! それに、あの娘はオッパイ目当てで雇ったんだ! 本人の悲鳴じゃあ、作品がダメになっちまう」という監督の勝手な言い種に、「あたらしい音」を求めてぼくは河畔の公園にやってきた。テレビでフィラデルフィアの「新しい自由の鐘」のお祝いと、そのパレードが近づいているというニュースをやっていたが、新しいってことはそんなにいいことかねぇ?



化粧品販売員サリー①

自分の頭がちょっと足りないかもしれない、なんてことは自分でもわかっている。映画産業でメイクアップ・アーティストとして働く夢を持っていたって、それも容易には叶わない。だからって、美人局紛いの仕事はうんざり。うんざりなの! それでも、近い将来の大統領候補から「お礼」をいただくということは……将来に向かっていい記念かも知れない。



映画音響技師ジャック②

夜の音。木々の葉先が風に揺れてざわめく。囁き交わす恋人同士。呟くようなウシガエル。フクロウは、ウシガエルを獲物にするだろうか? あれは? 虫集く声? 違うな? カーブをスピードを緩めぬままやってきた自動車……バーン!……BlowOut!……ざぶりとそのまま河に没していく! 大変だ! 助けないと!



化粧品販売員サリー②

朦朧とする。あたし、どうなっちゃった? え? あなた誰? あなたが助けてくれたの? ジャック? じゃあ、もう一回助けてよ! だって上院議員は死んだのよ。こんな、病院になんかいられるわけがないじゃない!



美人局のカープ

こんなチャンスはたんとあるめぇ。「偶然」さね。新しいフィルムのテストだったのさ。そう、こんな事件を収めることができるなんざ、思いもよりゃしませんよ。はい、はい。お売りしますよ。明日の発売ですか。特集号! そりゃあ、上院議員悲劇の事故死の瞬間を連続写真で掲載できるんだから、たんと弾んでいただけるんでしょうな……。



映画音響技師ジャック③

この写真を……連続で……ぼくの録音テープ、あの銃撃・破裂音と合わせることが出来れば……。そうだ、こうして、ひとコマずつアニメーション台で撮影すれば……そう、思ったとおりだ!



化粧品販売員サリー③

あたし、あの人たちにお金をもらって、列車に乗って街を出るつもりだった。それなのに、ジャックに捕まっちゃった。わかったわよ。あんた、そもそも映画の音響担当とか言ってるけどさ、どんな素性の主なのよ? きちんと話してみてよ!



映画音響技師ジャック④

ラジオやステレオいじって幸せなヤツっているよな。ぼくはそうだった。で、そういう学校から、因果にも警察勤め。いやいや。警官そのものじゃない。キーン委員会。悪徳警官の証拠を暴く役割。そう。仲間の警官にワイヤーって、バッテリと通信機を素肌に貼り付けて、音トバして録音して……。マフィア強請って儲けてると噂の野郎が、上手いこと囀りだした途端、ワイヤーからノイズが聞こえ出したんだ。ぼくのドジさ。絶縁を忘れた! 仲間は慌ててトイレに駆け込んだが、そこで無惨にも首括りにされちまったのさ。二度と繰り返したくない、ドジだ。だから、こんな仕事していても、ひとの都合で嘘を塗りたくられて捻じ曲げられるのは本当にゴメンなんだ。



狂信的暗殺者バーク

フザケやがって! 馬鹿娘に若造と、強請り屋か。フィルムと録音テープは消し去るとも。そしてあの馬鹿娘は、そう、ブロンドばかりを狙う連続殺人鬼の犠牲という筋書き。自由の日の絞殺魔(ストラングラー)、自由の鐘を犠牲者の腹にアイスピックで刻み付ける……。なかなか、愉快な着想じゃないか!



《さすがにちょっと端折りましょうね。》



化粧品販売員サリー④

ねえ。ジャック。これが終わったらサ。ニューヨークに行こう! ミュージカルを見ようよ。タイムズ・スクエアかあ、いいなぁ。ねえ、ちゃんと聞いてる?



映画音響技師ジャック⑤

おい。今ワイヤーで拾った声! テレビキャスターだと? ぜんぜん違う声じゃないか。おい、どこへ連れて行く気だ! ……畜生! 電車が出ちまった! こうなったら車で……。花火の見える場所? おい! 「自由の鐘のパレード」だと! どけ! どいてくれ! ああ、避けられない! ショウウインドゥに突っ込んじまう! そして……暗転。



映画音響技師ジャック⑥

酷い頭痛に目覚めてみると、あたりはもう暗い! (「間に合うのか、トラボルタ!」公開当時の惹句) 花火が始まる! そして、「ああ、ジャック! ジャック、助けて!」サリーの悲鳴が聞こえる。花火の反響! 近い! しやぁぁぁぁーきぃっ。これは、虫集く声? イヤ、違う。あそこだ! ああ、サリーが! 畜生! 間に合ってくれ!



自由の信奉者バーク

さてさて。リバティ・ベルが間もなく鳴る。おれの頭の上で鳴り響く。馬鹿娘にも自由の鐘を刻んでやろう!



映画音響技師ジャック⑦

その殺人鬼の腕を、そのまま力いっぱい本人の腹に振り下ろして、振り下ろして、振り下ろして……。
ああ、サリー。間に合わなかった。ぼくは、また、取り返せない罪を重ねた。重ねて、しまった。



そして信念のホラー監督と「血の浴槽」クライマックス・シーン

バスタブに立ついいオッパイの娘。肉切り包丁が振り上げられて「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」! 迫真の悲鳴じゃないか! おい、やっったな、ジャック。凄ぇ、いい悲鳴だ。



映画音響技師、そして人間ジャック⑧

そう。いい悲鳴だ。
歯噛みして、耳を閉ざしても、耳の奥から蘇ってくるほど、……いい悲鳴だ。


《暗転。エンドクレジット》


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ここまでネタバレしても、未見ならぜひご覧なさい。ピーノ・ドナッジョの音楽も胸に染みます。とにかく必見!

なんでもかんでも食い物にする寄生虫みたいな輩こそ規制したいね!

2006-08-21 | 映画

THE KISEI 寄生」(白い部屋)(Unborn but Forgotten)

またまた韓国ホラーの未見ストックを消化いたしました。

これまた安っぽい作品です。

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テレビ局勤めのソジュンは、チョ刑事と約束したとおり、彼の密着取材を敢行するが、ひどく不可解な連続女性殺人事件に巻き込まれていく。

被害者たちは皆同じサイトを訪ねていた。マリ産婦人科、そのポップアップからリンクが張ってあるのだ。

産婦人科――。ソジュンには嫌な場所だ。目下同じ局の人気キャスターと付き合っているのだったが、どうやら彼の子を妊娠したようなのだ。

ソジュンがポップアップをたどると……モニタ画面ではない、彼女自身が「幻視」の中に捕らわれてしまった。「白い部屋」の中で赤ん坊を抱いたまま、死んでいる女は彼女自身なのだ。

被害者たちは、死の前に、その知り合いに「自分の死んだ姿」を見たと言っていた。チョ刑事がサイトのアクセス記録と被害者の死との間に働くひとつの因果律を発見してしまう。サイト閲覧から二週間、十五日目にみな死んでいるのだった。

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「リング」や「着信アリ」のパクリとしかいえない本作。実にチープです。それに「破瓜」「生理」「産褥」など、血を流さずには置かれない「女性」方にとって「不愉快」に違いないモチーフを「恐怖」の素材にしている点も、ひたすら卑怯な作品だなと思いました。

そして、何でこんな作品がDVDになったんだ? と疑問を抱いていたら……この、主役のソンジュを演じていたのがイ・ウンジュ なんだね。納得しました。

昨年二月に自殺した「韓国美人女優」というのが、彼女だったんだね。その、ファン狙いのDVD発売だったわけです。ホラーとかサスペンスを適当に選んでしまうわたしには、そんなことはわからなかったわけです。

そんなこととは知らないから、主役の女性もイマイチさんだなぁ、とか思っておりましたよ。でね、さっき慌てて「バンジージャンプする」とか、「永遠の片想い(恋愛小説)」とか、別の作品のスチールをネットで検索してみたら、そっちの方が美人に映ってるじゃありませんか。やっぱり、そういう意味でも本来はフィルモグラフィー上でも彼女自身が見て欲しくない作品なのかもしれませんね。まさに「死人に口なし」で、そのうえ「THE KISEI 寄生」なんて変な邦題付けられてしまって、惨い限りです。韓国原題(白い部屋)英題(Unborn but Forgotten)なら、それぞれ含蓄を感じますが、急にお腹がせりあがるからって、「寄生」はないんじゃない? 「エイリアン」とかじゃないんだから。

不幸な女優さんと、不遇な作品に、合掌。


「バニラ・スカイ」でしょうか? それともルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンド?

2006-08-19 | 映画
バニラ・スカイ」はスペイン映画「Abre los ojos(Open your eyes)」をハリウッド・リメイクしたもの。トム・クルーズが、ロバート・デニーロの「フランケンシュタイン」クリチャーばりに、スカー・フェイス特殊メイキャップ顔を見せている。

オチがなんともかんともね。

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目を覚まして……優しく語り掛ける声。お気に入りの映画のシーンを目覚ましにしている……。

「若き出版王」(そのモテ男ぶりに、悪意のあだ名で「市民ケーン」ならぬ「市民ペニス」といわれている)デビッド。誕生パーティーに親友ブライアンが、その日に知り合ったばかりのソフィアを伴って来た。デビッドは運命の恋人を見つけたのだ。

その誕生パーティーには体だけの関係に違いないジュリーも、呼びもしないのに来ており、ソフィアに傾斜するデビッドに怒りを抱いていた。

その晩、ソフィアを自宅に送り、しかし、悪名に似合わず本当に相手を大切にしたいとばかり、清い仲のまま一夜を過ごしたデビッドは再会を約し、部屋を出る。

そこへジュリーが車でやって来て、話があるから乗ってくれという。ジュリーはデビッドに自分の情熱をすべてぶつけるが、聞き届けられないとわかると、陸橋のガードフェンスを破るように車を走らせた……。

事故で顔に醜い傷を受けたデビッド。それとともに、現実と夢・妄想・幻想と分かちがたい奇妙な「体験」に襲われることになる。

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ドラマのフレームとして、マスクで顔を覆ったデビッドが刑務所におり、精神科医のマッケイブが接見し、「何が起こったのか」はっきりさせようとしているという、そういうシーンが(もっとも現実らしく)差し込まれている。

結局のところ、この最も現実臭いシーンもデビッドの夢。夜中にうなされて「エリー」と叫んだとかいう「ヒント」に従い、「LE(エルイー)」という「会社名」のことだと気付くシーンから急展開! 実はデビッドは延命措置のための冷凍状態にあり、「特別コース」のオプションで「夢」を見ているのだという。

本当の現実では百五十年が経過しているし、彼をモニタしている「LE社員」もいよいよ彼を起こすべきか、それとも夢の修正をすべきか迷っているという。

「ぼくは高所恐怖症なんだ」というデビッド。「だからこそ、夢の終着点はここなんでしょう」救命員という現実からのエージェントがいう。高層ビルの屋上。マネの描く淡い「バニラ」色の「空(スカイ)」のもと、「起きることを望むなら高所恐怖を克服する」ように自分が夢をそう設定したのであった。

ビル屋上からダイビングし……「目を覚まして(オープン・ユア・アイズ)」

優しくささやく声に従い、見開いたデビッドの目に映ったものは?

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夢から覚めて、また夢、かもしれないよね。だから、このオチも仮のオチなのかもしれない。そうじゃないでしょうかね?

*そういう意味では観客の想像に以後を託した「リドルストーリー」だね。*

*実はあまり期待していなかったのだが、まあまあだったかな。アクションしないカート・ラッセルもいいじゃないか、とか、ソフィア役のペネロペ・クルスが可愛らしいね、とか、キャメロン・ディアスの毒婦っぷりがいいね、とか……そういう見方で、充分という感じですかね。*

*「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ」。本作品中にも「昔はジョンが好きだったが、今はポールだな」「ぼくは最初からジョージが好きだ」なんて会話があるが。リンゴが可哀相かな、ということは置いておいても、酩酊感のあるこの「バニラ・スカイ」に、「LSD」という薬品の持つという酩酊感が重なるかな、と思ったわけである。*