ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

ミラー・ワールドの中核(コア)には、一番の嘘つき鏡があると決まっている……?

2006-08-14 | 映画
Mirror 鏡の中」(Into The mirror)。キム・ソンホ監督 ユ・ジテ主演。

一昨日の日本版ワイドドラマレベル映画鑑賞に次いで、今日は韓国のワイドドラマレベル映画を見た。実際に劇場公開された映画のようだが「四天王に次ぐ期待の男優ユ・ジテ」が売りらしい、キム・ソンホ監督第一作なのだそうで、DVDのリリース会社がこんな惹句くらいしか用意できないところに、既に「作品的限界」が丸わかりというところか。(だいたい「四天王」って誰がそうなのかも、よく知らない。ヨンさまは、そうでしょう? あと、クオン・サンウとかかな? ソン・ガンホは違うよね。まあ、いいや)。

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不審火による火災から一年。再開店間近のデパートで、次々に不可解な殺人事件が起こった。自分で首を切ったかのような若い女性。耳から脳までボールペンが串刺しにされた男性。自分の車の中で不可解な死をとげた男性。

警備責任者のウ・ヨンミン(ユ・ジテ)は、事件の真相を追ううちに、3人がもともと同じ部署で働いていたことを知る。しかも、全ての死が、ウ・ヨンミンが刑事を同僚を死なせ刑事を辞職した原因の、鏡に結びついていた。

……以上、DVD発売元アットエンタテインメントの作品紹介(ストーリー)から。

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当然というか、映画はこういう風には進みません。「鏡」を用いたホラーの「怖さ」は、そこにいるはずのないものが写ること。つまり犠牲者は鏡の中の自分が勝手に動き出して、それに殺されるわけ。もう一回ひねりがない限り、鏡の中の何かにヤラれていると、被害者と観客だけが確定的に知っている。
せっかくヨンミン刑事の後輩が精神科医であるという設定をしたのだから、「酷いショックに遭うと、意識が乖離して鏡の中の自分が独立したように感じる」なんて(まあ、ラストには意味を持つわけだが)半端な注釈させないで、もっと「ミスディレクション」を誘うような、そう、たとえば「催眠」とかではないけれど、強い暗示で被害者も乖離感を感じていて「自殺させられている」とか、そういう勘繰りを観客に抱かせてくれたらよかったのに、と思った。

ウ・ヨンミン、そもそも叔父の経営するデパートの警備主任なんだよ。そのことに情けない気持ちも抱いている。それに一年前に「同僚を死なせた」ということなのだが、今度のデパートの事件を担当することになったハ・ヒョンス刑事(キム・ミョンミン)にとっては親友、ウ・ミョンミンにとっては相棒だった刑事が人質に取られている状況で、遊園地のミラー・ハウスみたいな場所(そこは鏡張りのうえ、全体が揺れるように出来ている)で、射撃大会常勝の射撃の名手ということになっていたヨンミンが誤って「鏡の中の犯人の額」を打ち抜いたために人質の刑事が殺されたということなのである。

これ、伏線になるのは想像に難くない。そうです。「道義的真犯人」(こう説明すれば、合っているかな?)にヒョンスが人質になるんだな。

精神病歴のあるイ・ジヒョン(キム・へナ)は、双子の姉を「火災」で失っているが、姉は行方不明なのだという確信を持っている。ここでも双子という、わかりやすいミラー・イメージが提示されるほか、デパートのリニューアル・オープンで催されるファッション・ショーにも同じような服装のモデルの左右対称のポージングとか、まあ、念入りな積み重ねには納得してあげるべきなのかもしれない。

しかし、あのオチ! あれは必要かね? ホラーだから? ならば、もう少し引っ張って、「シックス・センス」的に落とすべきだったんじゃないかな。それなら心も温まるだろう。何も不安・不快ばかりがホラーのオチではないと思うぞ!

*ミラー・ワールドは「仮面ライダー龍騎」に出てくる鏡の中の世界で、モンスターの住む世界。ライダーはモンスターと契約したカードの持ち主で、そのカードデッキを収めたベルトで変身し、鏡の中に入り込む。ミラー・ワールドは、その世界の秘密、すなわち大きな嘘を秘めたコア・ミラーを中心に形成されている。*