「
シルバー假面」(第1話 はなやしき)
とんでもない作品なのである。見る者の知識を試す作品だ。
大正九年。スペイン風邪、シベリア出兵、過熱する労働争議、米騒動……世情不穏な帝都。七人もの婦人が不可解な死を遂げていた。血液中の赤血球が減り、白血球が異常に増えているのだ。
その状態は、レントゲン氏の発見せるエックス線の強力なるものを照射されたかのような症状ではないか……。
この怪死事件と浅草で小屋掛けしている独逸(ドイツ)ダンテ一座の関係を探るべく陸軍士官 *本郷義昭が任じられる。
本郷は「浅草やら芝居小屋や活動などならお前の方が詳しかろう」と、友人の物書きを伴う。彼(ドラマが進むと「*平井(太郎)」と本名が明かされる! 最新作の探偵小説は自信の「意外な犯人=妻」なのである。)
凌雲閣(浅草十二階)も、震災前のこのころは当然聳え立っている。
怪しい小屋の舞台では *カリガリ博士が *眠り男チェザーレを操り未来を予言している。本郷の問いに応えてこの国の未来は「大地が鳴動し、逃げ回る人々は灰になる」という。その怖ろしい未来は「幻視(イリュージョン)」か「活動写真」でもあるのか、人々の前に霧の映写幕上に映し出される。
同じ小屋にひとりの舞姫がいる。名をザビーネ。母はドイツの舞姫エリス。父は元陸軍大尉 *森林太郎、文豪森鴎外そのひとである。
エリスにかつて託された指輪こそ、ニーベルンゲンの指輪であり、これをつかってザビーネは「シルバー假面」に変身する!
凄いよね! 次どうなるんだろう。実相寺監督の死は影響しないかしら?
ああ、終わりまで出来てはいるんだね。DVDのリリースがまだなだけで。
うん。とにかく面白いからみんなも見てね!
*注をまとめて以下に掲示。ネタバレだからね。要注意!*
本郷義昭。山中峯太郎の「敵中横断三百里」において、日本の優秀なる間諜(スパイ)として登場。この「シルバーの冒険」の後にも、昭和6年(1931年)の「亜細亜の曙」にても大活躍をすることになる人物である。
平井太郎。筆名を江戸川乱歩。件の画期的な探偵小説「D坂の殺人事件」の発表は大正14年(1925年)。発表までに四年余の期間を要した理由は、この「シルバーの冒険」の過程で明かされるのであろうか。
カリガリ博士。ヴェルナー・クラウス監督。ドイツ表現主義映画の最高傑作「カリガリ博士」(Das kabinett des Dr.Caligari)の登場人物。
眠り男チェザーレはオリジナルではカリガリ博士の催眠術で犯罪を犯すが、「シルバー」では悪の宇宙人らしい。
森林太郎。ドイツ留学時代は「伯林 一八八八年」(海渡英祐の乱歩賞作品)などという作品があるとおりで、そこから起算すると「シルバー」のザビーネの年齢はちょっと合わない気がするが、あるいは、この奇想においては許容範囲だろうか?