ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

「バニラ・スカイ」でしょうか? それともルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンド?

2006-08-19 | 映画
バニラ・スカイ」はスペイン映画「Abre los ojos(Open your eyes)」をハリウッド・リメイクしたもの。トム・クルーズが、ロバート・デニーロの「フランケンシュタイン」クリチャーばりに、スカー・フェイス特殊メイキャップ顔を見せている。

オチがなんともかんともね。

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目を覚まして……優しく語り掛ける声。お気に入りの映画のシーンを目覚ましにしている……。

「若き出版王」(そのモテ男ぶりに、悪意のあだ名で「市民ケーン」ならぬ「市民ペニス」といわれている)デビッド。誕生パーティーに親友ブライアンが、その日に知り合ったばかりのソフィアを伴って来た。デビッドは運命の恋人を見つけたのだ。

その誕生パーティーには体だけの関係に違いないジュリーも、呼びもしないのに来ており、ソフィアに傾斜するデビッドに怒りを抱いていた。

その晩、ソフィアを自宅に送り、しかし、悪名に似合わず本当に相手を大切にしたいとばかり、清い仲のまま一夜を過ごしたデビッドは再会を約し、部屋を出る。

そこへジュリーが車でやって来て、話があるから乗ってくれという。ジュリーはデビッドに自分の情熱をすべてぶつけるが、聞き届けられないとわかると、陸橋のガードフェンスを破るように車を走らせた……。

事故で顔に醜い傷を受けたデビッド。それとともに、現実と夢・妄想・幻想と分かちがたい奇妙な「体験」に襲われることになる。

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ドラマのフレームとして、マスクで顔を覆ったデビッドが刑務所におり、精神科医のマッケイブが接見し、「何が起こったのか」はっきりさせようとしているという、そういうシーンが(もっとも現実らしく)差し込まれている。

結局のところ、この最も現実臭いシーンもデビッドの夢。夜中にうなされて「エリー」と叫んだとかいう「ヒント」に従い、「LE(エルイー)」という「会社名」のことだと気付くシーンから急展開! 実はデビッドは延命措置のための冷凍状態にあり、「特別コース」のオプションで「夢」を見ているのだという。

本当の現実では百五十年が経過しているし、彼をモニタしている「LE社員」もいよいよ彼を起こすべきか、それとも夢の修正をすべきか迷っているという。

「ぼくは高所恐怖症なんだ」というデビッド。「だからこそ、夢の終着点はここなんでしょう」救命員という現実からのエージェントがいう。高層ビルの屋上。マネの描く淡い「バニラ」色の「空(スカイ)」のもと、「起きることを望むなら高所恐怖を克服する」ように自分が夢をそう設定したのであった。

ビル屋上からダイビングし……「目を覚まして(オープン・ユア・アイズ)」

優しくささやく声に従い、見開いたデビッドの目に映ったものは?

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夢から覚めて、また夢、かもしれないよね。だから、このオチも仮のオチなのかもしれない。そうじゃないでしょうかね?

*そういう意味では観客の想像に以後を託した「リドルストーリー」だね。*

*実はあまり期待していなかったのだが、まあまあだったかな。アクションしないカート・ラッセルもいいじゃないか、とか、ソフィア役のペネロペ・クルスが可愛らしいね、とか、キャメロン・ディアスの毒婦っぷりがいいね、とか……そういう見方で、充分という感じですかね。*

*「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ」。本作品中にも「昔はジョンが好きだったが、今はポールだな」「ぼくは最初からジョージが好きだ」なんて会話があるが。リンゴが可哀相かな、ということは置いておいても、酩酊感のあるこの「バニラ・スカイ」に、「LSD」という薬品の持つという酩酊感が重なるかな、と思ったわけである。*