「
P.S.アイラヴユー」
「
イルマーレ」だって、「シルク」だって見たんだ。「
プロヴァンスの贈りもの」に至ってはレビューだってした。だから、たまにはこんな映画も見るさ。滂沱の涙は流さずとも、薄っすら位は泣くよ……。
亡き夫ジェリーから、驚くほど的確なタイミングで残された妻ホリーに届く「手紙」。
いわく、
「おしゃれをして出かけてみよう!」
「ベッドサイドにディスコ・クィーンにふさわしいピカピカスタンドを買おう!」
「ディスコのカラオケ大会で思い切り歌ってみよう!」
…………。
そして、それぞれの手紙は「P.S.アイラヴユー」と締めくくられる。
このストーリーは心霊(あるいは不思議)感動譚ではない。つまりは「ゴースト/ニューヨークの幻」やら、「イルマーレ」やら、「花田少年史」やら、「黄泉がえり」やら……の路線のお話ではない。
「手紙」が正しい間合いに時を逃さずに届くのにも合理的な理由があり、納得のいく「犯人」(もちろん犯罪ではないが、この人物にはこの呼び名が似合う!)がいる。納得しながら、描かれなかった「計画」の場面を想像し、また胸が締め付けられるような感を味わう。
生きるということは、どこかくすぐったくもあり、また酷く残酷でもある。
安易な結末も許されない(ダニエル曰く「妹とキスしているようだ」)代わりに、存外、急な辻褄あわせ的可能性(ウイリアムとの再会。また、その父親!)の広がりも降って湧くことも、現実にも、時にはあるもので……。
その矛盾するような双方を最後に示したのはよかったと思う。
それから、場面にSpring(春)というように、季節の推移が示されるのであるが、この文字がペン書きのような書体であるのにはちゃんと意味があったのだと終盤でわかる。
まさに「P.S.(追伸)」と書き添えたり、まあ、「The end」と示したりするのにね、ふさわしいんだな。
アイルランドの風景もきれいだし、ホリーの親友たちも味があるし。そのくすぐりで笑えるところがあるから、反対にしんみりもできるんだな。
必見とは言わないが、たまにはホッとするような映画が見たければぜひ御覧なさい。
人生は、確かに都合のよい展開ばかりとは限らないけれど、存外、これで辻褄が合った、とでも言うしかない出来事というものは、現実にも起こりうるんじゃないだろうか。