ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

こうなると、魔の方が楽しそうな「遺産」だなぁ、と思わせるよ、「センチネル」。

2006-08-29 | 映画
センチネル」(The Sentinel)

The Sentinel「前哨」というタイトルの短編SFを知っているか? 

月に到達した人類は月面に明らかに人造であるモニュメントを発見する。そのモニュメントは宇宙のいずこかへと「通信」を送っている。その秘密をなんとか調べようと努力するが、結局壊してしまう。「通信」は途絶え、取り返しがつかないことをしたと悲嘆にくれるが、その直後に気付く。「通信が途絶えた時、遂に我々人類が『ここ』まで到達したと『かれら』は知るのではないか」と。そして、そのモニュメントこそ人類の前哨(見張り)だったのではないか、と。

アーサー・C・クラークの、「2001年宇宙の旅」の原案になった、自身の短編である。

この短編の存在から、The Sentinelという言葉は「前哨基地」のことで、もっと平たくいうと「見張り」のことだと知っていたのだな。

で、昨日の「レガシー」が、魔の遺産をヒロインが結果的には受け継いで、前途洋洋な未来に向かって、死に掛けた恋人とともに生きていこうというお話だが、「センチネル」の役割は……神の側の任務とはいえ、受け継ぎたくないと思うよ、きっと。

ニューヨークのトップモデルであるアリスン(クリスティナ・レインズ)は、弁護士である恋人マイケル(クリス・サランドン。役者だけでお分かりでしょうが、コイツは悪者です)もいて、幸せな毎日を過ごしていた。新しいアパートに引っ越したアリスン。このアパートの最上階の窓辺には、ひとりの物静かな盲目の神父(ジョン・キャラダイン。まあ、この方も普通は化け物役!)がいつも座って外に顔を向けている。その他の隣人たちも、奇妙な人物揃いなのだが、管理人に話す機会があって、実はアパートにはアリスンと神父以外は住んでいないという。隣人たちの代表格であるチェイズン(バージェス・メレディス)が実は悪魔で、住民どもは地獄の亡者であった! 恋人マイケルは前妻殺しで地獄の亡者の仲間であり、アリスンに死ぬことを迫る。それは、アリスンこそ神より大切な使命を授かることが定められたひとだったからだ。盲目の神父同様、自殺未遂で生き延び、罪を負いながら生と死の端境に立てる者が地獄の門の前哨、すなわち「悪魔の見張り(センチネル)」なのである。

アパートの管理人が、入居希望者を案内してきた。「ここは本当に静かな環境よ。最上階に物静かな尼さんが住んでいるだけなの。あの方はただ、窓辺でああして見張っているだけ。とても物静かな方なのよ」

*「センチネル」は、劇場公開も確か短かったし、ビデオ・ソフトは未発売。もう二十数年前に深夜にテレビ放送されたきり、という不遇な作品だ*

*DVD、出ないかなぁ。クライマックスでアパートの部屋にわらわらと現れる地獄の亡者役に、奇形(フリークス)の役者が大挙出演しているのでビデオソフト化できないのだという噂もあるが……それこそ差別じゃないのかな?*

*クリス・サランドンがいい者役なのは「チャイルド・プレイ」。やっぱり悪者なのは……「フライト・ナイト」だね*

*原作「悪魔の見張り」(ジェフリー・コンヴィッツ)は早川書房刊行。文庫もハードカバーも簡単に見つかると思うよ*