ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

ひとに歴史あり。花田少年史。そうか、死んで幽霊になっても個人史の一部?

2006-08-25 | 映画
花田少年史 幽霊と秘密のトンネル

水田伸生 監督

そもそも原作マンガも、アニメ版も見たことがなかったので、まるで情報無垢に等しい状態で見ました。

充分に面白い作品ではありますが、あまりに欲張り過ぎな内容と、過剰なほどの予定調和(というか、うまく行き過ぎとしか言えない収まり方)が気に掛かりました。「欲張り過ぎ」ということとも関連するのでしょうが、ドルビー・サウンドも過剰で、音だけでもびっくりさせられました。心臓停止寸前の「音」が、三箇所はあったぞ!

舞台は、広島県竹原市忠海町という漁港町です。原作・アニメ版は知らないのですが、この舞台設定に、日テレ=ジュブナイルゆえの匂いを感じ取ったと思いました。つまり古くは「転校生」の尾道、昨年同期の「妖怪大戦争」の鳥取の漁港、そして本作です。なんというべきかはわからりませんが、中国地方の港町に特有な「明るさ」がファミリー・ムービーあるいはジュブナイル・ムービーに馴染むのでしょうか、と小難しく考えておりましたが、あるいはもっと単純な着想があるのかも知れません。というのは、監督の水田伸生、広島市の出身のようです。エリアを広く捉えれば、監督にとってはご当地ムービーなわけですね。

「成長するトンネルの幽霊」こと香取聖子を演じる安藤希。「さくや/妖怪伝」(映画)だの「陰陽師 妖魔討伐姫」(Vシネ)だのと、だいたい「化け物退治系」の役どころが多いが、なぜ女子高生? と思っていたら、クライマックスではやっぱり……なVFX格闘でした。しかも、嵐の海の上空で、善・悪が激突するというモチーフには、直接関係はありませんが「仮面ライダー AGITΩ(アギト)」を思い出しました。

「悪徳弁護士幽霊」役の北村一輝。ドラマ「夜王~YAOH~」みたいな微妙な役もないではないのですが、だいたいこの人も化け物系の役が多いので、わかりやすいといえばわかりやすいのですが……。ちょっとねぇ。「あなたの隣に誰かいる」(ドラマ)の伝説の不死身の怪人とか、「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」(映画)のX星人(「マグロ喰ってるヤツはダメだ!」という、あのセリフ!)とか、けっこうこの人のキャラは好きなんだが、この役はあざと過ぎるかもしれません。

花田一路の母親役の篠原涼子。天真爛漫なキャラクターが似合っている。そして、彼女と濱田マリの組み合わせを見て、「アンフェア」(関西テレビ)を思い出してしまった。後遺障害の危険性や臨終を告げた瞬間に一路に飛び起きられる濱田マリの女医というパターン・ギャグは、意外に緊張の場面が続く中で、見事に観客を弛緩させる役割を果たしていたと思います。

父親を演じる西村雅彦。80年代末の東京でのシーンは、例によってのカツラ着用で、これが笑えるのです。

花田一路少年役の須賀健太。なかなか達者な子役です。他の作品は、と確認したら「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」! あれですね。ミニラと一緒に人間とゴジラの睨み合いの間に立つ子ども! それから「ALWAYS 三丁目の夕日」か。なるほど。まあ、とにかく最近の子役の達者ぶりは目を見張るものがありますね。子役といえば、かえすがえすも「GAMERA」を見逃したのが悔やまれる。

「成長するトンネルの幽霊」のもと、幼いころの聖子役の女の子が凄い! 安藤希に似たところもあるし、北村一輝の面影もある。それから一路の親友荘太の幼児時代の子! 見えるんですよ、荘太役の子の、更に幼かったころに。

動物が可愛かった。ジロは、まあ、狙い通りなんでしょうが、それよりも、あの猫がよかった。首掴まれてぶら下げられて、なんだよ、とばかり手(前足)で一路を押し返すさまが……キュートでした。あとは、ちょい役中のちょい役で、触れ合い動物園のウサギも、ウサギ飼い(ウチのペットはウサギの「ももん」!)としては見逃しておりません。

総評:二時間の本編ですが、あっという間に終わったと思います。それは「散漫なほどのあれこれテンコ盛り」だったからだと分析します。どうも辻褄が合わないと思われるシーンがあったりするのですが、それを無視して繋いであるのは、もしかしたら「DVD特別編」で未公開シーンを再現するなんてことが最初から意図されているのではないでしょうか。うーん。合理で見ずに、何となく涙を流してみる、という見方が、やっぱり正しいのだろうと思います。最近涙腺が緩いわたしは……しかし、泣けませんでした。(やっぱり、大味・散漫風味のためだと思います)。