ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

断ち切りがたい「連鎖(リング)」は「呪い」だけではない。それともこれは「復讐」の「感染」ですか?

2006-08-11 | 映画
復讐者に憐れみを」。パク・チャヌク監督の復讐三部作の第一。

聾唖者のリュ(シン・ハギュン)は、自分の思いをラジオ番組に託し、姉に告げる。自分のために何もかも犠牲にしてくれた姉に。姉の患った腎臓病から彼女を解放するため、自分の腎臓を提供したいと。しかし、姉弟といえ、血液型が異なり、その夢も叶わず、適合者が現れるのを待つしかないという。

姉の看病から無断欠勤が続くリュは勤めていた工場を解雇になってしまった。皮肉にもその退職金が手に入ったので、リュは密売臓器を手に入れようと考える。臓器密売者は対価が足りないといい、代わりにリュの腎臓摘出をも条件に適合臓器を提供するという。リュが目覚めてみると、自分の腎臓は摘出され、金も持ち逃げされていた。

更なる皮肉がリュを追い詰める。病院から適合臓器が見つかったので、五日以内に手術したいという。手術費用も、もうない。どうすればいいのか。

リュの恋人ヨンミ(ペ・ドゥナ)は「共産革命思想」の持ち主で、労働者から搾取する資本家から労働の尊い対価を取り返すのは正しいことだといい、リュを解雇した工場の社長ドンジン(ソン・ガンホ)の娘ユソンを誘拐するようそそのかす。離婚したばかりのドンジンにほったらかしにされている娘は、お兄さん・お姉さんと遊んでもらって、わずかな期間で家に戻れて、楽しい「夏休み」の思い出を作るだけだから、誰も傷つくわけではないと、ヨンミはいう。

自分の病気をはかなみ、弟の犯罪を戒めて自殺してしまう姉。姉の遺体を思い出の川辺に葬ろうと、ユソンを伴ってやってきたリュ。しかし、その川でユソンは溺れて死んでしまう……。

リュは臓器密売者への、ドンジンは誘拐犯(つまり、リュ)への、それぞれが復讐に向かって動き出す。

その過程でドンジンはヨンミを殺すのであるが、ヨンミは「わたしの共産革命の同士がお前を許さない。同士はテロリストだ」と言う。

これらの伏線がラストで陰惨な「殺害シーン」へと結びついていく……。


三部作中、一番泥臭く、それだから痛々しい殺害シーンであるように思う。

「オールドボーイ」の方が、殺し方にも迫力はあるし、バジェットも高そうに見えるが、この泥臭い重々しさには敵わないように思う。

親切なクムジャさん」には、復讐の後に救いさえあるのだ。

筋立てにもどこか粗さがあって、破綻もあるのだが……面白かった。

*ソン・ガンホの新作は「グエムル~漢江(ハンガン)の怪物~」。監督は「殺人の追憶」のポン・ジュノ。ソウルを流れる漢江から、突如巨大な怪獣が現れ、人々を殺戮するが、父ソン・ガンホの目の前で娘コ・アソンがさらわれる。この娘を取り戻そうと家族が頑張るという話だそうだ。怪獣の秘密を巡り、政府も米軍も「敵」らしい。……すごーく、面白そうだ。誰か、一緒に見に行かない? 今のところ最良の映像はこれ!