ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

出鱈目な推理ではなかった模様

2008-01-12 | 映画
こちらの記事で

> 『フェノミナ』の殺人鬼は、奇形の子供とその身を守るために殺人を犯す彼の母親である。「この映画では善人は金持ちで美しく、悪人は醜く貧しい」。ニコロディには、『フェノミナ』が極めて保守主義的な作品で、ダリオの著しい後退に思えた。ニコロディにとって、「アルジェントは愛した作家であるが、少なくとも、彼がこのような道を進みつづける限り、彼とは一緒に仕事をしたくない」とまで語っている。
> こうしたニコロディの批判に対し、アルジェントは「恨みは言いたくない。わたしが描くのは精神の奇形であり、肉体の奇形ではない。ブルックナーは邪悪な女性で、本当の狂人は彼女であり、息子ではない。哀れな生き物を鎖で壁につなぎ、家に閉じ込めたのも彼女だ。より凄惨な結末は息子ではなく、彼女に起きる。彼女の息子は、湖に消えてしまうだけである」と反論している。

……と、まあ、「フェノミナ」の小人犯人については不満やわだかまりがあった模様ですし、

> 2001年3月、多くの水中シーンを含む『フェノミナ』の続編が作られるとの噂が流れた。だが、アルジェントは『スリープレス』に続き、メデューサ映画と2本のジャーロを作る契約を結び、この話は消えた。

……とあることから見ても、「フェノミナ」と「スリープレス」には通底する要素があったとみて構わない気がします。

最近の購入ブツ

2008-01-08 | Weblog
「プラン9」関連で、DVD版「エド・ウッド」。以前VHSで見た作品なのだが、入手。

「ゾンビ ディレクターズ・カット版」。年末にスマイルBESTと称して「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド スペシャル・エディション」「アルジェント監修版」「米国劇場公開版」「死霊のえじき 完全版」とともに廉価版が発売されたので。これと「アルジェント監修版」の2枚は持っていなかったんだ。これで残りは「アルジェント監修版」のみ。まあ、それも近々……。

そして「ミディアン」! Amazonとかでも中古価格がかなり高めなのですが、BookOff某店で2割引セールを実施していたのでかなりなっとく値段で。
これは間もなくレビューしたいと思います。

眠れぬ心境。だからといって動物を殺してまわるわけはない。

2008-01-05 | 映画
スリープレス」(NON HO SONNO)

原題の意味を、念のために調べてみました。実感! ネット検索万々歳ですな。

「NON」は見るからに否定ですね。「HO」は「AVERE」(英語のhave、というよりも同じラテン系の言語であるフランス語のavoirと同じですね)が人称変化したかたち。「io ho」で、英語の「I have」フランス語の「j'ai」に相当するわけです。で、イタリア語では人称代名詞の省略は普通に行われるようですから、「NON HO SONNO」は「わたしは眠くない」ということ。I'm not sleepy.英語ではbe動詞が用いられることになるわけで、ちょっと間抜けな感じです。それが理由でしょうか、欧州英題及びアメリカ公開タイトルは「Sleepless」になったらしい。邦題は最近の標準的な付け方、そのままのカタカナ表記です。

ダリオ・アルジェント監督の2001年作品。Bookoffにて購入いたしました。「眠らない・眠れない」という状態にちょっと惹かれる心境にあったので。(実際は貪るように惰眠していますけども……)。

1983年にトリノで起こった三件の猟奇連続殺人。子どもの頃に母が目前で殺された(地下室の隙間から見えるだけで、助けに行くことも犯人をきちんと目撃することもかなわなかった)ジャコモ。17年後の2000年、忌まわしい記憶から逃げるようにローマで暮らす彼の許に旧友ロレンツォから一本の電話が掛かってきた。殺人の続きが始まった、と。当時の担当刑事で、既に引退していたモレッティ(マックス・フォン・シドー!)は、犯人の自殺という納得のいかない形で終止符が打たれていた事件が新展開を見せたことで、ジャコモとともに警察とは別に独自の捜査に乗り出す。

子守唄の見立て殺人。
犯人と名指された小人。
血みどろの殺人シーン。
そして意外な真犯人。

いかにも、ダリオ・アルジェント好みです。

まあ、しかし、ネタバレは上記タイトルのリンク先で(goo映画「スリープレス」。解説とあらすじの詳細には犯人の名前まで)ばっちり書かれているから、こちらは違うコメント(別のネタバレあり)をしておきたいと思います。

劇中の現在2000年の事件、17年前は1983年。
公開年2001年、その17年前は1984年!
そう、アルジェントの「フェノミナ」(Phenomena)のイタリア公開年にあたります。

ここでネタバレ! 「フェノミナ」の犯人は異形・邪心の小人なのです。

「スリープレス」作中で、偽りの犯人=小人の母親が「生まれに対して偏見と差別を受け、その上ありもしない嫌疑を掛けられた」無念を述べていました。
もちろん、作品としての「フェノミナ」の犯人は動かしようがありません。
しかし、今度は正常に見える器に怖ろしく歪んだ心の持ち主という「17年後の真犯人」を以ってアルジェントは「小人の事件」に終止符を打ったのではないでしょうか。

データ主義、総洗い主義の警察が、普通の市民である「小人」を何人も呼び出して捜査するシーンと相まって、そんなことを考えました。ちょっと評論っぽい着想でしょ?

*【写真コメント】裸のお姐さんと、アルジェント監督作にはよくある大雨被害お姉さんのふたりは「見立て殺人」には入らない可哀相な被害者。犯人の犯行ファイルを偶然手に入れてしまったために殺された。それと同時に、犯人が「我慢していた殺人衝動に火をつける」役割でもある。猫メイクのお姉さんは2000年の第一、1983年から通しでは第四の見立て殺人被害者。ハープ奏者は一応ヒロイン。*