ZIPANG
今回改めて見直して、これは、林海象監督の「インディアナ・ジョーンズ」コンプレックス作品だと再認識した。
巻頭いきなり紹介される賞金首、地獄極楽丸。その手配書の金額に騒然となる賞金稼ぎ一同に、「この懸賞首はあたいが戴く」と名乗りをあげる鉄砲お百合。
場面変わると獅子の歌舞伎舞を舞う男がいる。血気に逸る男たちをからかうように舞うこの男こそ、その羽織にも「右に極楽、左に地獄」すなわち地獄極楽丸であった。
ここから大群の男たちを七本の(大半はふざけた)刀で切って、突いて、倒しまくる!
その間に、彼の、ユニークな仲間たちが紹介される。
鉄砲お百合との出会いの場面を挟んで、この人物が埋蔵金やお宝に目のない怪盗であるとわかる。
リズム、リズム、リズム感だけで、その人物を、観客にとっての馴染みの人物に強引にしてしまう遣り口! インディ・ジョーンズとその模倣者のやり方そのものだ。
しかし、それだけじゃない、鉄砲お百合と地獄極楽丸の男女関係の醸す雰囲気に、別の親しいものがあるぞと思ったら!
そうか、これ、すなわち「インディアナ・ジョーンズ」コンプレックス映画で、且つ実写版の「劇場版ルパン三世」なのだ!
鉄砲お百合は峰不二子なのだね。
林海象監督、のちに「キャッツアイ」を撮るが、ルパン三世を既に撮っていたのだな。
そう思って見ると、大団円に至るクライマックス、群集による追撃シーンが「高所恐怖症」を惹起しそうな階段であるのも、終幕、こっそりと笛に仕込んで砂金を持ち帰ったお百合とか、また、地獄極楽丸のお仲間一行がイカダでどこかに流されて行くところとか、
なんともルパン映画的じゃないか!
だいたい、東宝マークの映画だしね。
あ。題名が「ZIPANG」であるのは高天原的な黄金の真世界ジパングを巡る冒険だから。(とても簡単に書くと、黄金の国ジパングは、神の嫁である巫女の恋により神の寵愛を失って凋落している。その国力を取り戻そうと目論む巫女の弟王と、いくたび死のうとも巫女のもとに駆けつけようとする男の千年愛……というモチーフが絡んでいる。)
だから、ジパングの話は今回限りで、あくまで地獄極楽丸一行に関する続編があってこそ当たり前なツクリになっている。
それなのに! 映画での続編はいまだにない。
来年には20周年を迎えるこの映画、10周年にはPS2ゲーム版で「セブンブレイズ」という続編も(マンガも)出ていることだし、意外なかたちで映画版の続編にも飛び出してもらいたいものだ。
*写真は鉄砲お百合と地獄極楽丸。地獄の旦那を慕う一行の研造、文七、鍵玉、鳥介そしてお百合の弟分の菊丸。モンタージュ技巧=口づけするふたりからカメラがパンダウンすると百合の花に鉄砲、あるいは笛、によってふたりの関係が深まったと暗示させる。そして千年愛のふたり。
*そういえば、映画公開当時、ファミコンでは「地獄極楽丸」という歌舞伎男が髪の毛を武器に戦うという変なアクションゲームが、またPCエンジンではそのものずばり「ZIPANG」という題名ながら実は「ソロモンの鍵」のキャラ載せ換えゲーム(オリジナルの妖精の替りが小象のカステラ!)が、出ていたのだった。