祖母の23回忌で上京。
さくさくと法事が済んだので、お散歩にでかけることにした。
知らない街の古本屋で思わぬお宝本をみつけたり、その土地でしか味わうことのかなわぬ奇妙な食べ物にでくわしたり、散歩はなにかと発見があるものです。
今回は、上野駅周辺。
江戸時代の風習に興味があるよしざるは、日本堤へぶらり散歩にでかけてみました。
花魁の街、吉原です。
でも、なーんもなかった。
江戸情緒なんてものはかけらもなく、ただのソープ街になりはてていました。
昼のソープ街ほど味気ない街はないですね。
あてもなくぷらぷら歩いていると、突然ふたりの警官に制止されました。
「あの~、ちょっといいですか~」
口もとは商人みたいに笑っているけど、目のほうが本気と書いてマジと読む、って感じだ。
「はい?」
「どちらからこられましたか」
「沖縄です」
「(免許証をみながら)ふーん、沖縄からね。なにか用事でこられたんですか」
「法事で・・あ、いや、観光・・かな?」
突然のことで、しどろもどろ。これだから小心者はいやだ。
「ところでバッグの中身を拝見したいのですが」
「はぁ・・」
「では、いいですか、一緒に確認してくださいね」
一緒に確認しながら、っていうきまりがあるのだろう、眼の前で商人的警官がバッグの中身を次々とバラバラにしていく。
ヤバイものは何も入っていない(とおもう)が、あまりの手際の良さにちょっとドキドキしてきた。
これが職務質問なのか。
「ん~?これはお薬ですかね」
ピルケースをみつけ、中身を確認される。
「はい、常備薬です」
中身は各種の睡眠剤と胃薬と・・まではよかったのだが、こともあろうに齧りかけの漢方薬・ヘンシコウのかけらがでてきた。
怪しげな茶色の小粒に警官が激変する。
「おいっ、これはなんだ!」
商人が怖い憲兵へと変貌だ。
「いや、だから常備の漢方薬ですよ」
「・・何のクスリなんだっ」
警官のもうひとりが俺の背中にするっとまわり、退路が絶たれる。
逃走防止のフォーメーションだろうか。
同時に肩の無線機で免許の確認がはじまった。
おお、生の柳沢慎吾みたいじゃないか。
なんだ面白くなってきたので、ここは大人の対応でいこう。
俺の心臓はノミみたいに小さいけれど、毛がはえているのだ。
「主成分は田七(デンシチ)という福建省の貴重な薬草でして(嘘)、薬効は胃腸障害と肝機能低下ですね。二日酔い防止のウコンみたいなもんですよ。おととし福建省の漢方薬局で購入したときはもう少し軟らかい錠剤だったのですが・・・・以下略」
「ふうん。 あぁ、そう。」
怖い憲兵が昭和天皇になってしまった。
10分ほどで職務質問が終了したので、雑談をまじえながらさりげなく俺を職質した理由をたずねてみると。
・黒いジャンバーを着た男が
・小ぶりなバッグをたすきがけにして
・昼間のソープ街をきょろきょろしながら歩いてたから
とのことでした。
・・・ごもっともです。(笑)
おまわりさん、日夜ご苦労様。おかげで貴重な体験ができました。
ヘンシコウは輸入禁止のジャコウ鹿が入ってるので、じっくり調べられたらアウト!