Baradomo日誌

ジェンベの話、コラの話、サッカーの話やらよしなしごとを。

同じように怒る訳

2007-02-09 | 子どもの視線・親の気持ち
このところ、毎晩カミサンの帰宅が遅いので、6時30分までに学童保育所に娘たちを迎えに行く。
帰宅すると、上の娘は風呂の準備、下の娘は音読の宿題、俺は晩御飯の仕度に取り掛かる。
ま、娘たちがすぐ動いてくれればいいんだけど、そう甘くはない。
昨夜も帰宅するなりじゅうたんの上にどべ~っと寝そべり、やおら上の娘がテレビをつけた。
「おい、約束が違うぞ!明日の準備は?風呂の仕度は?とっとと動けぇ!」
包丁と中華なべを握って仁王立ちする父の姿を見ても、
「ちょっと待ってぇ~。」
とだらけている。
敵も疲れているし、日常生活なんてこんなもんだ。

そんなこんなで二人とも宿題と明日の準備を終わらせ、風呂にも入り、さぁ夕食。
この日はとにかく家にあふれかえる葉っぱもの野菜を食べつくそうと、白菜を半分丸々使った中華スープ、親父が畑で育てたほうれん草のソテー山盛り、鶏肉のバター焼き、にんじんのグラッセ。
中華だか洋風なんだかわからんが、ともかく、野菜を食べさせようと、ウチにしては珍しく、各々の皿に取り分けてテーブルにセット。
連中の嫌いな素材は入ってないから、ぱくつくだろう、と思っていたのだが・・・。

「あ~、レストランみたい~!」
「野菜食べるんだよ。残したら、テレビ見せないよ。」
「いっただっきまぁ~す!」
その日の学校でのこと、学童でのこと、テストのこと、プールのこと。
二人の娘は我先にとマシンガントークを繰り出してくる。
話したいこと山積みなんだよね。
君たちの話はどんなささいなことでも昨日の君たちとは違うんだ。
少しずつだけど、着実に育つ心。
でもねぇ、おまえら。ご飯冷めちまうよ。

そうこうするうちに9時近く。
やっと帰宅したカミサンも加わり、マシンガントークはさらに加熱。
で、皿の上は?

「スープ残ってる、ほうれん草のこってる、もう冷たいんじゃないの?9時から見たい番組あるんじゃないの?」
「あ~!」

そして・・・ほうれん草が最後に残った。

「だって苦いんだもん。」
異口同音に娘たち。
「じゃ、残してもいいから。」
「ううん、食べる。」
しかし、遅々として進まず、おしゃべりも止まらず、時計の長い針は12を指した。

「いい加減にしとけよ。言われなきゃ宿題もやらない、風呂掃除は結局俺がやって、お前ら今日は帰ってきてから何にも約束果たしてないだろう?それでしまいにゃご飯残すかぁ?勝手にしろ!」
そう言って、俺は自分の皿だけさっさと片付け、2階の自室へ閉じこもった。

しばらくして、まず下の娘が上がってきた。
「ごめんなさい(すでに泣いている)。」
「食べ終わったのか?」
「全部食べた(鼻をすすりだす)。」
「言われたことはやりなさい。で、あのほうれん草は、誰が育てたんだ?」
「おじいちゃん(涙腺が本格的に決壊)。」
「おじいちゃんが、お前らに食べさせたくて作ったんだから、気持ちが栄養になってるんだ。だから味が濃いんだ。今日の味を忘れるなよ。」
「ごめんなさ~い(号泣)。」

そして上の娘。
こちらはちょっと手ごわい。
「ごめんなさい(とりあえず涙目)。」
「何が?(努めてにっこり)」
「ほうれん草残したこと。」
「ん~?」
「あと、帰ってきてから、怒られないと何もしなかったこと。」
「明日から、ちゃんとできる?」
「できる・・・ぶえぇぇぇ~ん(突如号泣)。」
「何で泣くの?」
「だって、くま、本気で怒ってたから、おじいちゃんのほうれん草だし、口も訊いてくれないんじゃないかと思って、そしたら普通に話してくれるし、さっき怒られたのは何なんだろうって・・・。」
「んで?」
「うちだって、毎日毎日おんなじように怒られて、毎日怒られるのやだし、毎日考えてるのに、結局怒られて、なんでだろうって。くまがよく言うように、うちだって毎日考えてるし、少しずつだけど出来ることも増えてるのに、でも、くまが毎日同じように怒るから、うちはぜんぜん出来るようになってないんじゃないかって、なんか嫌になってきちゃったんだもん。」
「君は、毎日同じように怒られてる?同じことで?」
「似たようなことだけど、同じじゃぁない。」
「じゃ、違うことで怒られてるっていう自覚はあるんだ?」
「うん。」
「それなら成長してないってことにはならんでしょ?」
「なんで?毎日違うことなのに、おんなじように、なんか、こう、上からべしって叩くみたいに怒られてるよ。」
「俺がさぁ、立ったままこうやって腕を振り上げて、君の頭をばしっと叩いたとするだろ?ところが、君は毎日少しずつ背が伸びてるだろ?」
「だから?」
「俺が毎日君を叩くためには、俺は毎日すこ~しずつ背伸びするか、台の上に載らなきゃなんないね。毎日違うことで同じように叩かれてると思うなら、それは君が少しずつ心も成長してる、ってことなんじゃないの?」
「なんで?」
「だって、もし毎日同じことでひっぱたいてるんだったら、なんでできないの!って、最初はスリッパ、次は平手打ち、それでもだめなら拳骨、右ストレート、しまいにゃ蹴り、って、どんどん激しくなるでしょうに。」
「・・・あぁ!そうか。」
「君を叱るのも一苦労なんだよね、俺としては。俺は父親だから、爺ちゃん婆ちゃんから受け継いだ君たちの命を大きく育てる責任があるんだ。だから、君たちを叱るのさ。でも、君たちなりに出来ることも増えてきているし、成長してることがわかるから、結局怒り方は変わらないの。納得?」
「わかったような、わからんような・・・でも、なんかすっきりした。」
「じゃ、次にやることは?」
「下へ降りて歯磨き!」

みんなわかってるんだよな、君たちは。
そして、わかってることをわかってほしいんだよな。
だから子どもたちは体を張って怒られちゃう。
俺たち親は、そのことに気付いてあげないと、「できた!」っていう無邪気な声を聞くことはできないんだ。