Baradomo日誌

ジェンベの話、コラの話、サッカーの話やらよしなしごとを。

割り算とポリリズム

2006-12-23 | ダトトパ教本(ネット版)
先日、ありがたいカキコミを頂いたので、そのアイデアを採用。
このところまとめているジェンベの奏法やら、これに基づくリズムの解釈について考察した内容を「ダトトパ教本」としてシリーズ化します(決定)!


○ 表記パターン凡例
 高音 Slap = S
 中音 Ton = T
 低音 Bass = B
 休符 -


 (1) BTTBTTBTTBTTBTT―
 (2) S―TS―TS―TS―TS―T―
 (3) S――SS―TTS――SS―TT

前回は(1)を元に発展させてみた。
今回は(2)で考えよう。
多分このフレーズは、まさにウォーミングアップのためのフレーズ。
秘めたる意図はスラップと中音の叩き分け、だと思うんだが、多分、空間把握、タイム感の持続、みたいな面もあるように思う。
ともかく、「パントパントパントパントパントン」と聴こえるこのフレーズ、どう叩くと気持ちよくなれるか?
まず、簡単に「右パン-左ト右パン-左ト~」としてやってみる。
感覚的にはスキップをするような感じ、ただ、右半身でつっかえつっかえ・・・かな。
これは楽にできるだろう。
試しに1年生の娘をカホンに座らせて、カホンでやらせてみたら・・・あれま!
「とんととんととんととん~。」
できちゃった。
では。
「右-右左-左右-右左-左~」ではどうだ?
「・・・たっかとっこたっかとっこ~」。
げ!これもできちゃった。しかも「っ」って休符にゴースト入れてるし・・・おいおい!
さっきよりは大分揺れるけれど、どうもこの方が休符を意識できるみたいで、休符を確かめながら叩いてることがありありと。
たどたどしくても、先程よりもスキップ感は格段に上だ。
あんまりやると手が痛くなるので止めさせたけど、これくらいは何とかなるもんなんだな。

ところで。
ジェンベに戻して、再度考察。
(2)の休符をTで埋めて叩くと上記の(1)、つまり前回のパターンに近くなる。
BがSに変わっただけ、掌の平行移動がない分、むしろ手順的には楽。
ただし、指先での叩き分けが必要だから、非常にいい練習になる。
また、全部埋めて叩くことで、小節の長さというか(アフリカンだから小節って概念はないのかも)、ひとかたまりの時間の感覚、タイム感が掴めてくる。
ここで、再度(2)に添って音符を抜いてみる。
手順は埋めていたときと同様にして、叩かないときはゴースト的に腕を振ると、左右それぞれがスラップ―中音の繰り返し、つまり下記のような動き方になる。

右 S―T―――S―T―――S―T―
左 ―――S―T―――S―T――――
  1―――2―――3―――4―――
※数字は便宜上入れたクリック。4拍子としてカウントしている。

手順はどうあれ、一定のフレーズが叩けたら(とりあえず憶えたら)、このように一度休符を全部埋めて叩いてみて、再度抜いたフレーズに戻る、という方法をとってみると、どれだけ間があいているか?ということをある程度正確に身体で感じることができるはずだ。
重要なことは、時間と空間を感じること。
休符とは休みではなくて、無音。
音を出さないこともグルーヴのキモだ。

次に。
(1)におけるベース音同様、スラップをアクセントと考えると、クリック的なカウントとアクセントはずれていって帳尻を合わせるように同期し、またずれて・・・の繰り返し。
ところが、アクセントのずれに気を取られると、このフレーズは叩けない、従って、音楽にならない。
このため、リズムキープのために、クリック的なタイム感を「感じながら」叩く必要がある。
問題は、どこで「感じる」か?

右 S―T―――S―T―――S―T―
左 ―――S―T―――S―T――――
  1―――2―――3―――4―――

これを見ると、1拍目は「パントパ」、2拍目は「ントパン」、3拍目は「トパント」となり、2拍目のアタマのみ休符。ここがグルーヴのキモだろう。
足で1,2,3,4と踏みながら、「パントパ (ん)トパン トパント パントン」と声に出してみるとわかりやすい。

さて。
慣れてきたところでもう一つ。
こいつの4拍目(パントン)を消してしまう。
すると、

右 S―T―g―S―T―g―
左 ―g―S―T―g―S―T
  1―――2―――3―――

となる(gはゴーストモーション)。
一見3拍子だろうか?
ところが、左右の手順をカウントしてみると、ゴースト(休符)含めて12ある。
そこで、スラップをアタマとして解釈すると(下記)

右 S―T―g―S―T―g―
左 ―g―S―T―g―S―T
  1――2――3――4――

これは4拍子、シャッフルだ。
例えばSOLIなどはこれに近い。

djembe1 ♪―♪♪――♪―♪♪――♪―♪♪――♪―♪♪――
djembe2 ♪――♪♪♪♪――♪♪♪♪――♪♪♪♪――♪♪♪

このdjembe1のアコンパニマ(=パートごとのパターンのこと、アコンパと略されることが多い)は、3連系のアフリカン・トラッド(それもマリンケ族関連かな)によくある手順だそうだ。
3連かな?と思ったら、「パントパン パントパン」と入れば何とかなることが多いらしい。
しかし、これにしても、1つの区切りの中に単純に3連譜が4つ納まっている、と言う解釈では音楽的に貧弱だ。
実際、SOLIのアコンパには、「ドンンントンンンパンンン」という、大きな3連をかぶせるものもあると、先日の練習会で耳にした。
これを先ほどの1のアコンパに乗せると、

♪―――♪―――♪―――♪―――♪―――♪―――
♪―♪♪――♪―♪♪――♪―♪♪――♪―♪♪――

となる。
声にすると、「パントパ ンンパン トパンン」となる。
これって、さっきの「パントパ (ん)トパン トパント」とそっくり。
やはりここでも2拍目のアタマがキモだ。
こうなってくると、4拍子だとか3拍子だとか、そんなことはどうでもよくなってきて、とにかく、一つのフレーズがある一定の時間枠に収まっているんだ、という事実だけがあることに気付く。必要なのは時間と空間の把握だ。
たまたまそれが偶数拍によって構成されているのか、3を基本とした奇数拍で構成されているかの違い。まさにポリリズム。

3連系のリズムはこういう解析がしやすく、また、意識的に大きな偶数を感じたり、小さな偶数のフレーズに分割したりすることで空間を表現できるので、非常に参考になる。
しかし、もしかすると、4連譜系として紹介されることが多いリズム(KUKU,SINTE,DJOLE,TOROその他もろもろ)も、ドゥンドゥンバなどの横太鼓のフレーズを解析していくと4×8×3とかで1サイクルになっている場合があるのかもしれない。
おもしろいぞ。

本当は、小学校の算数なんて、こうやって音楽室でやればいいんだよな~。