Baradomo日誌

ジェンベの話、コラの話、サッカーの話やらよしなしごとを。

豊かさとは何か?

2006-05-25 | 今日の「この音」
先日の夕食後。
洗い物終了後一服していた私にカミサンから声がかかった。
「なんか、君の好きそうな番組だよ!」
見れば、NHKの「世界遺産」という番組。
キューバ・ハバナの街並みを紹介するそうだ。

「遺産」とは言っても、ハバナの街は現在も人が住み、息づいている。
実は、この事実こそが彼の地の歴史を雄弁に物語る。

また、キューバといえば音楽。
ソンやサルサ、マンボはもちろんのこと、そういった商業ベースの音楽の源流として、ルンバ、サンテリアが紹介されていたことが嬉しかった。
街角の広場のような場所でのルンバの演奏シーンでは、どう見ても手作りのカホンが大量に登場。
「君が作ったのと一緒じゃん?」
とカミサンが言えば、
「あー、これも、あれもいっしょだ!」
リビングに置きっぱなしの自作カホンによじ登った下の娘が嬌声を上げ、かかとでカホンを鳴らし始める。
テレビでは、ペルー式と思しき箱型のそれに座り、小脇に小さな角柱型のカホンを抱えたおっちゃんが、葉巻くわえてドコドコやれば、小さな子ども達まで踊りだす。

続くサンテリアのシーンは夜の屋内。
コンガ3人のアンサンブルが紡ぎだす磁場の中で、憑かれたように踊る女性のしなやかな肉体、肌の美しいこと。
近頃さらにダンスマニア度を増した上の娘が思わず息を飲んだ。
「うわっ、かっこいい…でも、これって何?」
サンテリアというのは、ブードゥー、カンドンブレなどと同様、アフリカ起源の精霊信仰とカソリックとのシンクレティズム(混交)宗教。
ルンバの源流といえるサンテリアだが、最近は信仰よりむしろ観光用の舞踊として実施されることが多いとも聞く。

なんて言っても、小学生には難しすぎて話せないから、「もののけ姫や千と千尋にでてきたような、八百万の神々に近づくための踊りだな」などなど、要領を得ない説明に終始してしまう。
しかし、映像の持つ説得力に勝るものはない。
猥雑に感じる人もいるようだが、これこそが肉体の持つ健全なエロスだ。
ウチの娘達が、この映像に感動できる感性を持っていてくれたことに感謝。

自動車はクラシックカー、楽器も手作り。
カストロ体制のもと、経済的には貧しいとされるキューバ。
しかし、物質的な貧しさは、むしろ精神的な豊かさを維持する源なのではないか?
我々の国では既に忘却の彼方となってしまった、地域のコミュニティが確実に維持されている。
だからこそ、子どもの頃からあれほどの強烈なポリリズムを全身に浴びて育っていけるのだ。

渋いタクシー運転手のおっちゃんのセリフが印象的。
「革命は我々に自由を与え、物を大切にしなきゃならん、という精神を教えた。」
「自由を与え、モノを奪った」と言いたいんじゃないのか?と勘ぐってしまう俺こそがバビロンの住人か。