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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

京都、高台寺、そして日本人の仏教離れ

2016年12月20日 | 日記・エッセイ・コラム
京都は794年に都になって以来、日本の仏教の中心地でした。鎌倉時代に新しい仏教が幾つも出来、鎌倉も仏教の栄えたところですが、鎌倉のお寺は質素で比較的小規模です。
私はお寺を見に行くのが好きで随分と多くのお寺に行きました。
その多くのお寺の中で清冽な思い出になっている美しいお寺があります。京都の禅宗の高台寺です。
今日はまず写真家の水野克比古さんの「高台寺の四季と禅」というHPから3枚の高台寺の写真をご紹介いたします。
HPのURLは、http://www.kodaiji.com/season/#spring です。

1番目の写真は「虚心」と題する作品です。
水野克比古さんは1941年、京都市上京区に生まれました。同志社大学文学部卒業後、京都の風景に取り組み、撮影を続けているプロの写真家です。

2番目の写真は「直心是道場」と題した作品です。
2002 年にBook of the Year Award で、Landscapes for Small Spaces(『坪庭』)がアメリカで金賞を受賞しました。

3番目の写真は「心自閉」と題した作品です。水野さんは130冊の写真集を出版していますが、その中に『高台寺 水野克比古写真集』(東方出版)があります。
京都生まれの水野さんも高台寺が好きなようです。嗚呼、私と同じ趣向のプロの写真家がいるのだと嬉しくなったので3枚の写真をご紹介致しました。
このような美しいお寺が日本の文化遺産として永久に残って貰いたいと祈っています。
しかし最近の日本人の仏教離れの様子を見るとこの美しい高台寺の将来も少し心配になってきます。
そこで以下において日本人の最近の仏教離れの様子を客観的に描いてみたいと思います。

最近の日本人の仏教離れにはいろいろな原因がありますが、一つには寺院仏教から離れる現象が顕著です。
日本の経済の高度成長にしたがってお寺の裏にある墓地から、お墓を自宅のそばの共同墓地へ移す人が増えて来ました。民間会社が開発した無宗教の大型共同墓地が全国的に流行し、そこに自分のお墓や先祖代々のお墓を作る人が急に増加したのです。
江戸幕府のキリシタン禁教政策の一つとして全ての家はお寺の檀家になっていたのです。その風習は明治、大正、昭和になっても連綿と続いていた日本の仏教的風習でした。
その仏教的風習が1960年代あるいは1970年代そして1980年代と次第に大きく崩れ出したのです。
この社会的風潮に従って日本人はお寺との関係が疎遠になって来たのです。この檀家制の崩壊が日本人の仏教離れや宗教離れの原因の一つになっていることは間違いありません。

その結果、多くの人は宗教抜きの葬儀を行うようになりました。
その中に遺骨の葬送方法を樹林葬や海への散骨葬など自然葬にすることもあります。
これは1990年頃から生まれた日本の新しい社会現象でした。
1990年以前は、遺骨を決められた墓地以外に埋めると、刑法190条により「遺骨遺棄罪」になったのです。この刑法を支えているのが戦後の昭和23年に出来た「墓地、埋葬等に関する法律」の規定です。しかし1991年に法務省と厚生省がこの法律をゆるめたのです。
1991年に「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県の相模湾で海への散骨をしたのです。
1991年に、法務省と厚生省は刑法190条と墓地、埋葬等に関する法律に関して新しい解釈を発表し、「葬送の自由をすすめる会」の葬送は違法ではないという趣旨を公にしたのです。
適切な方法なら海への散骨だけでなく樹林葬や桜葬や山岳などなどへの散骨葬は違法でないという解釈です。
私の家の近所の東京都立小平霊園でも大規模な樹木葬を行っています。

この自然葬の流行を見て私は深い感慨にとらわれています。お釈迦さまはご自分が死ぬ時、「私の遺骨は野に捨てよ」と言って涅槃に入られたのです。ですから自然葬こそお釈迦さまの教え通りなのです。
さて高台寺の将来ですが、幸いにもこのお寺は檀家からの収入には依存していないようです。財政的に裕福な臨済宗に属しています。
日本中の寺院が次第に檀家制度から離れ、純粋に仏教の修行の道場として、そしてお釈迦さまの教えを人々へ伝える場として再生するように努力するのも良いと思う今日この頃です。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)

====参考資料======================
(1)自然葬を行っている団体の数例:
風という会社:http://sankotsu-kaze.com/about/index.html
NPO葬送の自由を進める会:http://www.shizensou.net/
家族葬の会:自然葬(海洋葬・里山葬):http://www.npo-kazokusou.net/support/nature.html
7つの海で海洋散骨:http://shizensou.com/
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(2)自然葬に要求される必要な条件:
1、火葬にした遺骨は必ず米粒以下の粒子か粉にすること。一見して遺骨と判らないようにし、海水中や土中へ溶けやすい状態にすること。(遺骨はリン酸カルシュウムが主成分で水には難溶性です)
2、海への散骨は海水浴場や湾内の養殖筏の近辺はいけない。沖でも漁場に使われる海域はいけない。風評で魚が売れなくなることへ充分配慮する。
3、陸上での散骨は土地の所有者の承諾を得ること。自分の所有する山でもキノコや山菜取りの入会権へ充分配慮する。自分の別荘の庭に散骨するのは別荘が他人の手に渡った場合についても充分な配慮をする。(アメリカでその為に不動産価格が下がって裁判になった例があるそうです。)
4、国有林は広大で散骨に適しているが、管理している農水省や国土交通省の明確な見解が発表されていない。NPO葬送の自由を進める会が現在、国有林の散骨葬への解放運動をしている。
僻地の町や村の所有する山林はその役場に願い出ると許可される場合もあるそうです。
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(3)都立小平霊園の樹林葬式の詳細:
都立小平霊園の場合;費用は粉状の遺骨で持ち込めば44000円です。纏めて44000円支払えば、以後一切の費用は不要です。粉状でない普通の遺骨の状態で持ちこめば134000円です。
遺骨を粉状にするには火葬場に頼むとしてくれるそうです。設備が無くて粉状に出来ない火葬場もあるので、あらかじめ相談の上火葬を頼むことが肝要だそうです。
遺灰は水に溶ける紙製の容器に入れ、何個か纏めて樹林に囲まれた芝生の中に埋めるそうです。30年間そのままにして土中へ自然に混合するのを待ちます。30年後に残った遺灰はまとめて共同埋蔵します。
埋葬後、故人へ花や線香を供えるための献花台は用意するそうです。詳しくは管理お事務所、電話:042-341-0050へお聞き下さい。
以上は東京都の場合ですが、全国の市町村役場で管理している墓地や、お寺が管理している墓地でも急速に樹林葬墓地が普及していると想像できます。