このカップルについて、書き忘れていたことがある。
彼らが素朴で心温かい人だということは前述のとおりである。
「どう?日本の滞在では問題なく過ごしている?」と尋ねたとき、こんな話をしてくれた。
成田着で、スタートさせた彼らの日本旅行は、多くの外国人がそうするように、JR乗り放題(のぞみとみずほ以外)のパスを利用しての周遊であった。
「うん東京も京都もとてもいい滞在であったよ。ただ唯一のトラブルを除いては」
「何かあったの?」
「実はJRパスの使用開始日が一日ずれていて、東京から京都までの新幹線は現金で払ったんだ」
それは彼らの日程の中で一番料金が高い区間である。
「なぜそんなミスが?言ってもダメだったの?」
「フランスで手配した会社のミスだよ。だからその時は説明したけれど、払うしかなかったんだ」
言葉の問題もあるのかと思ったが、規則厳守はある意味仕方のないことなのか?
「でも帰国したら、手配した会社に交渉してみる?」と私が聞いた時だ。
彼は「交渉?ノン、抗議だよ。当然、その費用は返してもらう」ときっぱりと言った。
お人好しそうにみえる田舎育ち?の彼でも、そこはフランス人である。
「抗議」なのだ。
パリに帰ったあと、もちろん抗議、そして返金してもらったらしい。
個人主義ととかく言われるフランス人であるが、パッケージ旅行や宿、レイルパスなどをパリの旅行社で手配をする人も多く、時々アクシデントがあるようだ。
その時の彼らの対応は一貫して同じである。
相手のミスはあくまでも抗議である。
革命で自由を勝ち取ったレジスタンスの国であることを、こんなことからも感じるのである。