「世界自然遺産」の保全と活用、そして新規登録の戦略と、国際協力の在り方について環境委員会で質疑を行いました。
環境委員会で世界自然遺産について質問-衆議院インターネット中継(4月26日)
現在、世界遺産は合計962件あります。文化遺産が745ヵ所、自然遺産が188ヵ所、複合遺産が29ヵ所です。そのうち日本の世界自然遺産は屋久島、白神山地、知床、小笠原の4か所のみです。世界的な視点から「顕著な普遍的価値」があり、真実性(オリジナルな状態を維持)、完全性(価値を表すもの全体が残っている)、将来にわたって保護する保護管理体制を有することが認められ、登録されるまでのハードルは高く、たとえば富士山は自然遺産での登録は叶いませんでした。現在、文化遺産としての登録を目指しています。
世界遺産の推薦が可能なのは、毎年、自然遺産、文化遺産のそれぞれ一か所ずつです。ユネスコは1000ヵ所を目途にこれ以上増やさない意向とも言われ、競争は苛烈になっています。また、世界遺産登録が、地域の活性化につながることもあって、特に文化遺産は現在日本国内の10ヵ所以上がリスト掲載待ちの状態です。
一方、政府は「奄美・琉球」をユネスコのリストに掲載し、2015年にも自然遺産として推薦する予定です。もっとも奄美・琉球は絶滅危惧種の生息地などの重要地域の一部が未だ十分に保護されていないことが指摘されています。
大きな障害になっているのはマングースの存在です。マングースは猛毒のハブを駆除するために持ち込まれましたが、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなどの絶滅危惧種の天敵でもあり、その根絶が大きな課題です。小笠原では、外来種のヤギが大量に繁殖し、固有種を脅かす存在になっていましたが、根絶作戦が大きな成果を挙げ、この取り組みがなければ数年で絶滅の可能性があるとされた固有種が回復したことが世界遺産登録のカギになりました。奄美・沖縄でもマングースの根絶に力を注いでおり、もっとも多く生息した時点に比べると、今は10%程度の生息に減少したと言われています。
私はエコ・ツーリズムの推進も大きな可能性を生み出すと考えています。自然を学び、保護する試みに参加する新しい観光の形態である「エコ・ツーリズム」という言葉が一般に知られる前から、このツーリズムの理念に着目していました。1995年にはNHKスペシャル(BS)のレポーターを務め、カンボジアにおける観光開発の問題点を指摘し、エコ・ツーイズムの可能性を指摘しました。また、エコ・ツーリズムを国策にしているコスタリカに調査に行き、エコ・ツーリズムの経済効果をテーマにして、カンボジアとコスタリカの比較研究をしています。環境や平和という普遍的な価値を守るエコ・ツーリズムの理念がさらに浸透することで、日本の世界遺産をさらに増やせる可能性が生まれると思います。
このような視点で質問しましたので、興味のある方がぜひ、ご覧ください。
写真上:昨日の質疑の様子です。
写真上:今月18日に立ち上げた超党派の「世界遺産議連」の事務局長としても、今回質問したテーマを形にすべく頑張っていきます。
その報告談の中で見せていただいた美しい羽根を持つ鳥、ケツァールの写真はいまもその美しさが脳裏に焼き付いています(しかしケツァールはコスタリカの国鳥ではなく、グアテマラの国鳥なのは不思議です)。
コスタリカは、隣国にニカラグアやエルサルバドルのような紛争国を近くに持ちながら、軍隊を持たない国として知られていますが、エコツーリズムの先進国と非武装国家という事実(これは解釈の問題で、かならずしも‘非武装国家’とは言えないとする見方もあるようですが)の因果関係には大変興味を抱くところです。
私自身も観光業に長らく関わってきましたが、観光の前提は平和であることを痛感しています。平和なくして観光は成立しないことは自明の理です。
そのことは、阪口さんの専門フィールドのひとつであるカンボジアのアンコールワットがまさに証明していますね。
阪口さんには、平和構築と合わせエコツーリズムの発展にこれからもますます寄与していただきたいものです。
追記
そういえば日程は前後していましたが、ともに白神山地を訪ねたのは、もう何年も前の丁度今頃の季節ではなかったでしょうか?
東北地方の桜が満開の季節のことでしたね。