「熱闘」のあとでひといき

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第29回 関東大学ラグビー連盟セブンズ(2015.4.26)の感想

2015-04-29 21:36:40 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


毎年4月限定のセブンズの締めは今年も関東大学ラグビーフットボール連盟のSEVEN A SIDE(通称:連盟セブンズ)。この大会、かつてはYC&ACセブンズと東日本大学セブンズの間に行われることが多く、関東リーグ戦G校にとっては後者の前哨戦(セブンズ仕様チームの試運転)の位置づけの意味合いもあった。また、それが故に東日本大学セブンズではリーグ戦G所属校が好成績を挙げると言われていたこともある。

だが、新たに関東春季大会が始まったことで状況は変わった。4月の日程が詰まることのあおりを受けた格好で、去年も今年同様に連盟セブンズは東日本大学セブンズの翌週に開催された。春季大会を目前に控える中、「東日本」の前か後かではこの大会に対する各校の取組も自ずと変わってくると思う。「いい成績を収めたからといって特別の何かがあるわけでもない」と考えるか、15人のチーム作りを見据えてセブンズ仕様で試合経験を積み、春シーズンから本シーズンを見据えたうえでの戦力や戦術を実戦経験により磨いていくのか。そのことはチーム編成(どんなメンバーが出るか)に端的に表れる。何もない(ように見える)からこそ各チームの考え方や状態がダイレクトに伝わってくるので、そこが私的見どころになっている。

しかし、それは1部所属校からの目線の考え方になる。2部に所属する全チームにとっては、この大会は共通目標である「1部昇格」に向けての絶好の腕試しの場でもあるのだ。パワー、運動能力、戦術の彼我の差は実際に試合を経験してみなければ分からない。参考にならないチームがないでもないが相手は1部所属校。いつの大会も2部校の意気込みの方が1部校より上回ることは必然と言える。それはさておいても、1部と2部の間で実力伯仲のセブンズの大会がずっと続けられることを関係者は誇りにしていい。

お天気に恵まれ拓大グランドへ。YC&ACと同様に立ち見を覚悟していたが、仮設スタンドが設置されていてまずは一安心だった。セブンズはできるだけグランドレベルに近いところで見たほうが楽しいので粋な計らいにまずは感謝。



■1回戦結果

●流通経済大学 14-14 ○関東学院大学 ※抽選
●専修大学 12-20 ○立正大学
○中央大学 33-12 ●東洋大学
○大東文化大学 48-0 ●白鴎大学
●法政大学 0-38 ○国士舘大学
○山梨学院大学 26-24 ●日本大学
○拓殖大学 19-12 ●國學院大學
○東海大学 50-0 ●玉川大学

この大会では2部のチームが1部のチームを破ることは珍しくないし、またそれはけして恥ずかしいことでもない。結果からいうと、下剋上が3つに僅差の攻防が2つと緒戦から2部チームの健闘が光る形となった。普段はなかなか観るチャンスがない2部のチームが元気いっぱいなところを観ることができるのはやはり楽しい。

ということで第一試合から波乱含みの展開となる。流経大はYC&ACや東日本で猛威を奮った主力メンバーは出場していないのはおそらく強豪校との対戦になる春季大会に備えたからと思われる。なんとなくだが、主力は出場していなくても勝てるとみていたふしがあり、堅実な関東学院の抵抗に遭って引き分けに持ち込まれてしまった。内容面でも負けに等しい引き分けということで、試合終了後は出場選手を含めた緊急ミーティングとなった模様。遠く目にもかなりネジを巻かれている様子だった。抽選により関東学院の勝利となったが、引き分けなら(頑張った)下位チームの勝ちというルールにしてもいいのではないかと思った。

本来は優勝を狙うはずの専修大もパワフルな立正大の前に苦杯を喫してしまった。専修大にはYC&ACや東日本大学セブンズで大活躍した看板スターが居る。しかし、近くで観戦していた専修ファンの方々からは「彼は両刃の剣。いい面だけを観ていると裏切られる。」という会話が漏れ聞こえてきた。抜群の決定力を誇る反面、敗戦に繋がる痛いミスを犯してしまうこともあるということらしい。後半に3点差までビハインドを縮め、さぁ逆転というところで「あ~あ、やっぱり」という声が上がった。ミスからダメ押し点を奪われ、痛恨の緒戦負けの結果となってしまった。

専修を撃破した立正大は2年生となったローランド・アライアサが決定力を兼ね備えた司令塔へと成長を遂げた模様。昨年がこの状態ならよかったのにと思いたくもなるが、チーム全体でもプレーに積極性が出てきた点に注目したい。テビタとフィララも相変わらず強力なので、留学生の3人がどの組合せで出てきても2部リーグ随一の破壊力を持っているとみて間違いないだろう。

中央大、大東大、東海大は貫禄勝ち。中央大は住吉藍好のランが冴えるが、2年生の白井や伊藤も要注目選手。大東大は主力の殆どを欠くメンバーながらとくに問題はなし。そしてYC&ACから3戦連続で遠征組を除く主力メンバーで固めた東海大は盤石でまとまりもよい。しかし、敗れたとは言え、東洋大、白鴎大、玉川大も準備のあとが伺われる。残念ながらパワーの差は如何ともしがたく、相手がセブンズに付き合ってくれなかったので敗戦もやむなし。

日大と山梨学院は白熱の好ゲーム。前半、日大が先制した後、山梨学院が2連続トライで逆転するが日大も1トライ(GK失敗)を返して2点差までビハインドを縮める。後半は山梨学院が先行してリードを拡げるが日大も1本返して17-21と1Tで逆転可能圏に。しかし山梨学院が1トライを奪ったところで勝負あり。インジュリータイムで日大が一矢報いるが2点差で涙を呑む。日大はYC&ACから3大会連続で緒戦敗退となり、またしてもコンソレーショントーナメントに回った。果たして3度目の正直はあるだろうかとヘンな期待を抱いてしまった。

拓大と國學院大も痺れる試合となった。國學院大は昨年も入替戦チャレンジまであと少しというところまで来ているし、セブンズでは1部所属チームを技で翻弄する力を持っている。前半は拓大が先行した後國學院も1本返して同点。拓大が1T奪って12-7で前半を終え、後半も1本先行して19-7まで点差を拡げるが國學院も1本返す。緊迫感のある中で7点差のまま何とか拓大が逃げ切った格好。拓大は東日本で高い身体能力を見せたシオネ・ラベマイがマークされると苦しい。

問題は1stのオレンジ&ブルーではなく、拓大とよく似たオレンジ単色のジャージで登場した法政。前日にAチームが春季大会で、当日はBチームとCチームが練習試合でそれぞれ帝京と戦っている状況の中で選手のやりくりが難しいことは分かるが、前半に2本、後半に立て続けに4本取られてあえなく撃沈となってしまった。国士舘大はしっかり準備してくるチームとはいえ、攻撃力を看板にしているはずのチームがゼロ敗は不味いと思った。とくに気になったのは選手間に殆どコミュニケーションがないことで、せめて何とかしなければという気持ちだけでも見せて欲しかった。



■コンソレーション・トーナメント

[1回戦]
○流通経済大学 31-22 ●専修大学
○東洋大学 26-24 ●白鴎大学
●法政大学 5-38 ○日本大学
○國學院大学 26-7 ●玉川大学

この大会は東日本と同様、コンソレーションとチャンピオンシップが交互に行われるプログラミング。だが、さすがに負けると終わりのトーナメントになると、各チームとも気合が入る。出場している選手達の「負けて終わりたくない」という本能のような気持ちはやはり大切だと思う。

さて、その一番目の試合は本来ならチャンピオンシップで実現しなければならなかった屈指の好カード。とくに流経大はかなりネジを巻かれたような感じで本気モードになっている。流経大が立て続けに2本取ったところでそのまま行くかと思われたが、専修が意地を見せて1本返す。流経大が1本とってリードを拡げたのも束の間、専修も2連続トライで17-19の2点ビハインドで折り返しとなる。後半も先手を取ったのは流経大だったが専修が1本返して22-26と緊迫した展開。最後は流経大が1本取って突き放す形となったが、意地と意地のぶつかり合いは見応えがあった。

東洋大と白鴎大の闘いも大接戦となる。東洋大の看板選手は15人制ではSOを担う清原。巧みなステップワークでゲインを重ねるごとにスタンドからは「巧い!」という感嘆の声が上がっていた。國學院大と玉川大の試合は点差が付いたが大きな力の差は感じられなかった。一説にドングリの背比べという辛口の評価もあったのは昨シーズンの1部リーグだが、2部リーグもセブンズを見る限りは実力接近の闘いになりそうだ。

法政はやはり元気(覇気)が感じられない闘いぶりで、コンソレ3連覇を狙う?日大の前に1トライを返すのがやっと。日大のワイドな展開にアングルチェンジをまじえたアタックの前に為す術もなく翻弄されてしまった。殆どの首脳陣やチームメイト、そしておそらく熱心なファンも百草園の帝京グランドに居る孤立無援の状態で戦っていることには同情を禁じ得ないが、緒戦同様に選手間で殆ど会話が交わされない状況には一抹の寂しさを感じた。



[2回戦]
○流通経済大学 47-5 ●東洋大学
○日本大学 33-19 ●國學院大学

[決勝戦]
●流通経済大学 19-26 ○日本大学

流経大にいよいよエンジンがかかった。個々の強さを活かした攻撃力でトライを重ねて東洋大を圧倒。日大も國學院に3本取られて食い下がられたものの、チームの牽引役を担っている有久やYC&ACから精力的な活躍を続けている塚本、決定力のある富樫といった4年生の活躍で圧勝。「2度あることは3度ある」でもないが、遂にこの大会も(裏の)ファイナルにコマを進めてしまった。こうなったら優勝するしかない。

その日大はチームとしての精神面の成長ぶりを見せたのが(3連覇のかかった?)決勝戦だった。前半は日大が2本取って12-0とリードを奪ったのも束の間、流経大に2本返されて12-14と逆転を許し、後半も1本先行されて12-19とリードを拡げられる。チームの勢いからいっても、そのまま流経大が勝利を収めそうな流れになっていた。しかし、日大の見せ場はここから。「絶対に逆転して勝つ」という文字がピッチ上に浮かび上がってくるくらいに全員が一丸となってパスを丁寧に繋ぎ反撃に転じる。1トライを返してGKも決まり19-19と遂に同点。日大は終了間際に1トライを奪い見事3連覇を達成してしまった。この試合は本大会のハイライトと言って間違いない。

日大はYC&AC、東日本、そして本大会の3つのセブンズでは上級生主体のメンバーで闘いに臨んでいる。また、実際に試合で活躍しているのも先に挙げた4年生達。ここでふと思った。おそらく入替戦に敗れて2部降格が決定した後に日大では何かが起こったに違いないということ。勝手な想像だが、昨シーズンに活躍の機会をなかなか与えてもらえなかった3年生(現4年生)の決起(蜂起?)があったのかも知れない。「1部復帰」を自分達の役割と見定め、チームを引っ張っていく。そのためにも俺たちにはこれだけの力があるのだということを実際に試合で見せる。

正直、YC&ACの緒戦で北海道バーバリアンズとあたったときの前半の日大は観ていられなかった。「本当に大丈夫なのか?」とか「4年生はやはりやる気を失っているのだろうか?」という状態。しかしそこで覚醒したのか、YC&ACを含む3大会の戦いぶりを観て、実は上級生が高い戦闘能力を持っていたことを確信した。とくに東日本と本大会で見せたコンビネーションプレーは半年といったような一朝一夕でできるものではない。このまま上級生(とくに4年生)が引っ張る形でシーズンを終えて欲しい。そうなっていれば自ずと結果はついてくるはずだ。



■チャンピオンシップ・トーナメント]

[1回戦]
●関東学院大学 22-24 ○立正大学
○中央大学 28-10 ●大東文化大学
●国士舘大学 5-10 ○山梨学院大学
●拓殖大学 0-35 ○東海大学

昨シーズンは春季大会どころか入替戦にも出場できなかった関東学院はこの大会に期するところがあったに違いない。チャンピオンシップTの1回戦でもパワフルに立正大に対して喰い下がりを見せた。前半は2本取った立正大が12-0でリード。後半に関東学院が1本返すものの立正大も1本を追加して19-5で関東学院は万事休したかと思われた。しかしながら関東学院が2本立て続けに取ったところで試合は俄然白熱する。時間がなくなってきたところで立正大が1本取って逃げ切るかと思われたが、関東学院もインジュリータイムに起死回生のトライ。GKが決まれば再び抽選かと言う状況になったが惜しくも外れて関東学院が2点差で涙を呑んだ。体格面では恵まれない部分があるが、セブンズに必要な基本技術には流石と思わせるものがあった。降格組の日大、立正大ともに難敵だが頑張って欲しい。

中央大はミスが目立ったが、住吉を始めBKにはスピードスターが揃っている。前半こそ拮抗した展開になったものの、後半はトライラッシュで大東大を一蹴。法政を破って勢いに乗る国士舘は山梨学院と接戦を演じたが惜しくも1本差で敗退した。BKだけでなくFWにも好ランナーを揃える東海大はエンジン全開で拓大を一蹴。東海大のスピードスターは石井魁であり近藤だが、今シーズン特に進境著しいのがSHの湯本とたびたび決定的な仕事をしている村松。テトゥヒは大きな身体に似合わず器用な選手で、ディフェンダーをたびたび欺いた背面パスは曲芸の域に達している。



[2回戦]
○立正大学 14-14 ●中央大学 ※抽選
●山梨学院大学 17-26 ○東海大学

[決勝戦]
●立正大学 21-33 ○東海大学

決勝進出を賭けた立正大と中央大の戦いは、立正大が先制したあと中央大が2連続トライを奪って逆転に成功。後半に入り立正大が2本取って19-12と再逆転に成功したところであとは時間を上手く使うだけのところまで来た。しかしながら、中央大も粘って立正大ゴールを脅かす。ここで立正大に痛恨のミスが出てしまった。自陣ゴールを背負った状況での渾身のディフェンスが「そのプレーがなければトライ」に相当すると判断されペナルティトライを献上。GKも難なく決まって試合終了となり、決勝進出校はこの大会2回目の抽選に委ねられることになった。しばらく経って、大会本部のあるサイドに陣取った中央大の選手達から大きな声が上がる。てっきり中央大の抽選勝ちかと思ったらファイナルに進んだのは立正大だったという落ちが付いた。

山梨学院と東海大の戦いは、点差からは接戦に見えるが圧倒的な攻撃力を誇る東海大が前半に3つのトライを奪ったところでほぼ勝負が決まった。しかし、堅守の東海大から3トライを奪った山梨学院も確実に攻撃力を上げている。今までは得点はパワフルなトコキオ頼みだったが、BKでも取れるチームになってきている。新戦力のタイオア・アピレイは司令塔として期待される大型選手で、チームにフィットすれば面白い存在になりそうだ。

東海大と立正大との戦いは決勝戦に相応しい熱戦となった。立正大が先制したあと、東海大が立て続けに3本トライを奪って19-7で前半が終了。しかし、後半は立正大が2連続トライ(GKも成功で)21-19と逆転に成功する。しかし、体力面だけでなく精神面でもタフネスを発揮するのがひときわ結束が堅い大人のチームになった今季の東海大。終盤に2連続トライを挙げて再逆転に成功し、東日本大学セブンズに続き2週連続で優勝カップを手にした。

YC&ACから3大会の戦いぶりを観たが、今年の東海大は非常に期待出来るという想いを強くした。個々が強くてもどこかまとまりに欠ける部分があったチームが、選手同士でしっかりコミュニケーションが取れるチームへと成長を遂げている。現状のメンバーにFW1、2列の選手とBKの数名を加えただけで既に15人のチームができあがりそうな感じ。新たなメンバーも加わっての今後の仕上がりが楽しみだ。



◆大会を観ての雑感

チャンピオンシップ、コンソレーションともにファイナルとセミファイナルは見応えのある好ゲームとなった。しかしながら、日本のセブンズ大会の常で、1回戦が終わった後は試合が進むにつれて観客が減っていく寂しい状況になっていく。本当に残念なことだと思う。せめて出場した選手や関係者だけでも最後まで残るようにしてはどうかと思う。この大会は言うなれば関東リーグ戦Gのお祭りだ。戦いを終えればチームは違っても戦友のたちの戦いぶりを見届けたいと思っている選手も居るはず。表彰式を関係者全員で祝福できるようなリーグであって欲しいと切に願う。

ラグビーは頭脳が9割
斉藤健仁
東邦出版

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