標題の講演会を聞いてきました。落語会で何度か行った新宿・紀伊國屋ホールが会場でした。
講師は孫崎享氏(元外務省国際情報局長)。講演テーマは「ニッポンの領土と外交」。
氏は66年の外務省入省後、長年情報畑を歩まれて、イラン・イラク戦争時には駐イラン大使館でも勤務をした経験を持っているとのこと。2009年に転出先の防衛大学校教授を退官後、外交関係の評論・講演を多く手掛けており、「戦後史の正体」等外交上のタブーと目される事柄にも果敢に論評を加えております。
氏の話は、日本の政策決定・世論の在り方が「設定された政策に対して、都合の悪い情報(人)を排除する傾向にあり、結果として不利益を被る」という要諦が貫かれていたように思われました。太平洋戦争に突入する際の我が国の様子などは、まさにこの指摘が当てはまる事例かも知れません。
講演の大半は尖閣問題とこのことに伴う日中関係の緊張に割かれました。
解決策としては「棚上げ論」を主張。中国の軍事力を分析するという意識が乏しい、中国内の「ハト派」に対する把握がほとんどなされていないとの指摘もありました。
外交とは、「ある手段を採った場合、自国に得るものはあるのか?」という事を考えるもの。との提起もなされました。現在の安倍政権が採ろうとしている対中政策、尖閣へのスタンス及び安保・外交政策は決して得るものがあるとは思われない。というスタンスを訴えておられました。
しかし、武装した中国漁船が尖閣諸島沖をかすめたり、中国艦船のレーダー照射問題等が起きている現状では、こうした主張は中々世論では受け入れられづらいのでは?という感想を持ちました。民主主義国家における外交のあり方、政治と外交のあり方、外交と世論のあり方等々、重いテーマが潜んでいるようにも思えました。
印象的であったのは、中ソ国境紛争を引き合いに話があった、「どの国にも緊張や紛争が無いと困る人がいる」との発言でした。ちなみに中国共産党では、この場合林彪が「緊張や紛争が無いと困る人」だったとの説明もありました。
イラク戦争後、イラクには大量破壊兵器が無かったという事実は、戦争をはじめたアメリカ自身も認めているところであります。アメリカでは、イラク戦争を推進した人たちは表舞台から姿を消しているが、日本では官民ともに、「戦争推進派」は依然として要職に就き続けている。日本では、ある時期に賛美された政策が、間違いと分かった後でも、その事を取り上げる機運が無いとの指摘も興味深いものでした。
「世界中どこでもメディアは権力が操作しようとするもの。日本人だけが“メディアは客観的な事実を流すもの”と思い込んでいる」との指摘は刺激的でした。
話が中々まとまりませんでしたが、知的好奇心を掻き立てられる講演会でした。
講師は孫崎享氏(元外務省国際情報局長)。講演テーマは「ニッポンの領土と外交」。
氏は66年の外務省入省後、長年情報畑を歩まれて、イラン・イラク戦争時には駐イラン大使館でも勤務をした経験を持っているとのこと。2009年に転出先の防衛大学校教授を退官後、外交関係の評論・講演を多く手掛けており、「戦後史の正体」等外交上のタブーと目される事柄にも果敢に論評を加えております。
氏の話は、日本の政策決定・世論の在り方が「設定された政策に対して、都合の悪い情報(人)を排除する傾向にあり、結果として不利益を被る」という要諦が貫かれていたように思われました。太平洋戦争に突入する際の我が国の様子などは、まさにこの指摘が当てはまる事例かも知れません。
講演の大半は尖閣問題とこのことに伴う日中関係の緊張に割かれました。
解決策としては「棚上げ論」を主張。中国の軍事力を分析するという意識が乏しい、中国内の「ハト派」に対する把握がほとんどなされていないとの指摘もありました。
外交とは、「ある手段を採った場合、自国に得るものはあるのか?」という事を考えるもの。との提起もなされました。現在の安倍政権が採ろうとしている対中政策、尖閣へのスタンス及び安保・外交政策は決して得るものがあるとは思われない。というスタンスを訴えておられました。
しかし、武装した中国漁船が尖閣諸島沖をかすめたり、中国艦船のレーダー照射問題等が起きている現状では、こうした主張は中々世論では受け入れられづらいのでは?という感想を持ちました。民主主義国家における外交のあり方、政治と外交のあり方、外交と世論のあり方等々、重いテーマが潜んでいるようにも思えました。
印象的であったのは、中ソ国境紛争を引き合いに話があった、「どの国にも緊張や紛争が無いと困る人がいる」との発言でした。ちなみに中国共産党では、この場合林彪が「緊張や紛争が無いと困る人」だったとの説明もありました。
イラク戦争後、イラクには大量破壊兵器が無かったという事実は、戦争をはじめたアメリカ自身も認めているところであります。アメリカでは、イラク戦争を推進した人たちは表舞台から姿を消しているが、日本では官民ともに、「戦争推進派」は依然として要職に就き続けている。日本では、ある時期に賛美された政策が、間違いと分かった後でも、その事を取り上げる機運が無いとの指摘も興味深いものでした。
「世界中どこでもメディアは権力が操作しようとするもの。日本人だけが“メディアは客観的な事実を流すもの”と思い込んでいる」との指摘は刺激的でした。
話が中々まとまりませんでしたが、知的好奇心を掻き立てられる講演会でした。