映画「沈まぬ太陽」は山崎豊子のベストセラーの映画化である。
日本航空をモデルにしたと思われる数々の事件とともに歩んだ主人公の動きを追う。
以前本を読んだ後、ブログにアップしたが、1700ページにもわたる大著である。
1960年代前半国民航空社員の恩地元(渡辺謙)は、労働組合委員長であった。社員の待遇改善をめぐって会社幹部と争いを重ねていた。その結果、恩地はパキスタンのカラチへの海外赴任命令を会社から言い渡される。2年という約束であった。しかし、次の異動辞令もイランのテヘラン行きとなる。
その間、会社経営陣は帰国をちらつかせながら組合からの脱退を促していた。同時期に組合にいた同期の行天(三浦友和)は、早々に組合を抜け、エリートコースを歩み始めていた。行天の裏切り、更に恩地の妻(鈴木京香)や子供2人との離れ離れの生活が続いていた。
十年に及ぶ僻地での不遇な海外勤務に耐え、本社への復帰を果たすが、恩地への待遇が変わることはなかった。その中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こる。犠牲者は520名。現地対策本部に配属された恩地は現場に赴き遺族係を命ぜられる。そこで様々な悲劇を目の当たりにする。
政府は航空会社の民営化をを図るべく、国民航空新会長に関西の紡績会社の会長国見(石坂浩二)の就任を要請した。恩地は新設された会長室の部長に任命され復権した。事故によって失墜した会社の再建に尽力した。しかし、主流派からは冷たい目で見られていたが。。。。
3時間を超える長い映画である。重層構造ともいえるいくつものストーリーを積み重なっていく。
主人公の組合活動、不遇な海外赴任、ジャンボ飛行機の事故、外部からの会長就任と構造改革の失敗、不正経理問題の5つのストーリーを主人公を中心に展開させる。
この5つのうち2つでも十分に映画の脚本となる話の内容である。全部を取り上げているので、ディテールが細かいという訳ではない。概略をつかんでいっている感じだ。それでも放映時間3時間にはどうしてもなるだろう。
モデルになった日本航空に労働組合がいくつもあり、それぞれが権利を主張して今回の経営破たんの理由の一つになったというのは有名な話だ。原作によれば、主人公は元々組合活動に関心がなく、推されるように組合専従になったとのことだった。しかし、そこから抜けられなくなる。組合専従がエリートという時代ではあるが、さすがにストをちらつかせた労使交渉には経営者側も左遷辞令を出さざるを得なかっただろう。
60年代前半のパキスタン、イラン、ケニアといえば、完全な未開の地であったのではないか。大変だったと思う。映像ではそんなに深くは取り上げられてはいない。思ったよりもあっさりしている。でもじっくりロケをするわけにもいかないであろうから仕方ないかもしれない。
そして、ジャンボ機の事故である。原作でもこの辺りはドキュメンタリー的に取り上げていた気がする。あの時のことはよく覚えている。自分は休みであったのであろうか。テレビを見ていたら、羽田発大阪行きの飛行機と連絡が取れないというニュースをやっていた。一瞬ハイジャックを連想した。しかし、しばらくして大惨事のニュースが入ってきた。大変なことになったと思った。あのときは日本中がアッと驚いた。
まさに悲劇だといえる。
鐘紡の伊藤淳二氏と思しき会長も登場する。小説では主人公と外部から招へいされた会長だけはまともに書かれていた。今回も無難に石坂浩二を起用して、小説のラインに沿って、他のはえぬきの幹部を腹黒く描く。ここまでやると、さぞかしむかついた人は多いだろう。
伊藤淳二氏は鐘紡時代、組合との協調路線で有名だった。ここでもその手腕を買われ、「不毛地帯」の主人公のモデルでもある瀬島龍三氏と思しき人物に三顧の礼で招聘されている。しかし、会社の中は想像以上に黒い世界だった。ホテル事業子会社を通じた不正経理問題や10年間の外国為替先物予約取引などとんでもない状態だった。汚職の摘発をしようとしても、政治家もからんで主流派から大きな反発を受ける。
フィクションと言うが、明らかに現実の話に基づいている。そういうリアリティはある。
それぞれの俳優については可もなく、不可もなくといったところであろう。現代日本映画を代表するメンバーが出演しているが、演技で特筆することはない。渡辺謙は無難にこなす。三浦友和が悪役じみているのがめずらしい。これも悪くはない。「大岡越前」加藤剛が年をとったのに驚く。
やはりこれらの話をスケール感をもって描いた山崎豊子作品の凄味が映画からも感じられた。
日本航空をモデルにしたと思われる数々の事件とともに歩んだ主人公の動きを追う。
以前本を読んだ後、ブログにアップしたが、1700ページにもわたる大著である。
1960年代前半国民航空社員の恩地元(渡辺謙)は、労働組合委員長であった。社員の待遇改善をめぐって会社幹部と争いを重ねていた。その結果、恩地はパキスタンのカラチへの海外赴任命令を会社から言い渡される。2年という約束であった。しかし、次の異動辞令もイランのテヘラン行きとなる。
その間、会社経営陣は帰国をちらつかせながら組合からの脱退を促していた。同時期に組合にいた同期の行天(三浦友和)は、早々に組合を抜け、エリートコースを歩み始めていた。行天の裏切り、更に恩地の妻(鈴木京香)や子供2人との離れ離れの生活が続いていた。
十年に及ぶ僻地での不遇な海外勤務に耐え、本社への復帰を果たすが、恩地への待遇が変わることはなかった。その中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こる。犠牲者は520名。現地対策本部に配属された恩地は現場に赴き遺族係を命ぜられる。そこで様々な悲劇を目の当たりにする。
政府は航空会社の民営化をを図るべく、国民航空新会長に関西の紡績会社の会長国見(石坂浩二)の就任を要請した。恩地は新設された会長室の部長に任命され復権した。事故によって失墜した会社の再建に尽力した。しかし、主流派からは冷たい目で見られていたが。。。。
3時間を超える長い映画である。重層構造ともいえるいくつものストーリーを積み重なっていく。
主人公の組合活動、不遇な海外赴任、ジャンボ飛行機の事故、外部からの会長就任と構造改革の失敗、不正経理問題の5つのストーリーを主人公を中心に展開させる。
この5つのうち2つでも十分に映画の脚本となる話の内容である。全部を取り上げているので、ディテールが細かいという訳ではない。概略をつかんでいっている感じだ。それでも放映時間3時間にはどうしてもなるだろう。
モデルになった日本航空に労働組合がいくつもあり、それぞれが権利を主張して今回の経営破たんの理由の一つになったというのは有名な話だ。原作によれば、主人公は元々組合活動に関心がなく、推されるように組合専従になったとのことだった。しかし、そこから抜けられなくなる。組合専従がエリートという時代ではあるが、さすがにストをちらつかせた労使交渉には経営者側も左遷辞令を出さざるを得なかっただろう。
60年代前半のパキスタン、イラン、ケニアといえば、完全な未開の地であったのではないか。大変だったと思う。映像ではそんなに深くは取り上げられてはいない。思ったよりもあっさりしている。でもじっくりロケをするわけにもいかないであろうから仕方ないかもしれない。
そして、ジャンボ機の事故である。原作でもこの辺りはドキュメンタリー的に取り上げていた気がする。あの時のことはよく覚えている。自分は休みであったのであろうか。テレビを見ていたら、羽田発大阪行きの飛行機と連絡が取れないというニュースをやっていた。一瞬ハイジャックを連想した。しかし、しばらくして大惨事のニュースが入ってきた。大変なことになったと思った。あのときは日本中がアッと驚いた。
まさに悲劇だといえる。
鐘紡の伊藤淳二氏と思しき会長も登場する。小説では主人公と外部から招へいされた会長だけはまともに書かれていた。今回も無難に石坂浩二を起用して、小説のラインに沿って、他のはえぬきの幹部を腹黒く描く。ここまでやると、さぞかしむかついた人は多いだろう。
伊藤淳二氏は鐘紡時代、組合との協調路線で有名だった。ここでもその手腕を買われ、「不毛地帯」の主人公のモデルでもある瀬島龍三氏と思しき人物に三顧の礼で招聘されている。しかし、会社の中は想像以上に黒い世界だった。ホテル事業子会社を通じた不正経理問題や10年間の外国為替先物予約取引などとんでもない状態だった。汚職の摘発をしようとしても、政治家もからんで主流派から大きな反発を受ける。
フィクションと言うが、明らかに現実の話に基づいている。そういうリアリティはある。
それぞれの俳優については可もなく、不可もなくといったところであろう。現代日本映画を代表するメンバーが出演しているが、演技で特筆することはない。渡辺謙は無難にこなす。三浦友和が悪役じみているのがめずらしい。これも悪くはない。「大岡越前」加藤剛が年をとったのに驚く。
やはりこれらの話をスケール感をもって描いた山崎豊子作品の凄味が映画からも感じられた。