昭和30年の黒沢明監督作品。原子爆弾から水素爆弾にパワーアップし、実験が繰り返された世相を反映して、水爆被爆の恐怖症の老人を描く。三船をはじめ、志村喬、千秋実、藤原釜足といった黒澤組が中心で、昭和30年前後の前近代的家内工業の雰囲気もよく表わしている。
いきなり家庭裁判所がでてくる。調停員を演じるのは志村喬である。内容は水爆被爆を恐れ、ブラジルへ渡ろうとする三船敏郎演じる鋳物工場の経営者がいる。その行動がおかしいと準禁治産者の申し立てを三船の息子たちがおこなっている場面である。ブラジルであれば、水爆の恐怖から逃れられると、ブラジルの農場主東野英治郎と土地を交換をしようとしている。もちろん息子たちは大反対。三船の気持ちに志村喬はむしろ三船に同情するが。。。
トロリーバスと都電が走る都内の風景は懐かしい。映画「キューポラのある街」で鋳物工場が舞台となり、同じような工場の場面がでてくる。ここでは住所が品川区東大崎の設定だ。自分の生まれた五反田のそばである。今は大崎駅付近は工場が減って、マンションが増えて大きく変わった。
主人公三船の設定が、妻や子供たちのほかに妾が二人、死んだ妾の子供までいて、面倒を見なければならない人たちがごまんといる。こういう設定はこの当時はまだまだあったと思う。何せ貧富の差が激しい時代である。女が男を頼りに生きていかねばならない時代だったからだ。溝口健二監督はこういうスタイルを描くのが得意だった。あとは、三船の奥さん役がいかにも明治の女を演じているのが印象的。たしか「わが青春に悔いなし」でも同じような役をやったおばさんだ。黒澤映画では人気がない方だが、わりと世相を良くつかんでいる気がする。
私がこの映画にひかれるのは、三船の設定が風貌含めて私の祖父にそっくりであることで妙な親近感があるからだ。そういう映画があってもいいであろう。うちの祖父は明治生まれで戦争に行っていない。本当に運が良かったと思う。きっと三船演じる主人公も同様であろう。戦争に行かず自営の社長をやっていたがんこ親父はなんか共通したところがある気がする。あらためてそう思った。
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特に昭和30~40年代の日本映画が大好きです。
今日、自分のブログに「生きものの記録」について書きました。
下手な英文ですが‥‥お時間がありましたらどうぞ。
ブログでは他にも、
「地球防衛軍」「天国と地獄」「蜘蛛巣城」
「新幹線大爆破」などについて
駄文を並べております。
早速ブログ読みました。
実は「花」さん同様、いちばん好きな黒澤作品は「天国と地獄」です。というよりも日本映画で何か好きなもの?と聞かれるとこの作品と言っています。
「花」さんがおっしゃるように、「天国と地獄」のラストの大詰めで、犯人を泳がせて横浜のスラム街を歩かせるシーンにおける描写は、あらゆる映画の中で私も印象に残るシーンの一つです。
特急「こだま」の身代金授受シーンにしても、赤い煙突の煙のシーンにしろ、いつ見ても背筋をゾクゾクさせますよね。私は30年代の横浜が舞台だからこそできた傑作だと思っています。時代劇もいいですが、現代劇の黒澤の映画にでてくる背景が今にないものが多く心に残ります。
「花」さんの英語わかりやすくて言いたいことが伝わりました。これからもよろしくお願いします。