映画とライフデザイン

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映画「狂熱の季節」川地民夫

2022-04-25 19:52:15 | 映画(日本 昭和35年~49年)
日活映画「狂熱の季節」は昭和35年(1960年)の蔵原監督川地民夫主演作品。何気なくAmazon prime で見てみる。いわゆる60年安保で世はデモで騒乱の世界だったのに反して、自由奔放にその日暮らしをする不良少年を描いている。

見ていてワクワクするのは、昭和35年当時の渋谷が鮮明に映し出されていることで、西銀座付近や江ノ島あたりの映像もでてくる。今の時代から見ると、稚拙に見える映像も川地民夫のパワーで押し切る。本屋で昭和30年代の東京の写真集を見て喜ぶ方には一見の価値はある。


渋谷のジャズ喫茶をたまり場にしている主人公は、店で外人の財布をすろうとして現行犯逮捕され少年鑑別所に留置される。出所後も懲りずに外車を盗んで好き放題に遊び回る。江ノ島をドライブしているときに自分を警察にチクった新聞記者とその恋人を偶然見つける。女を無理やり車で連れ去り砂浜で手籠にする。しばらくして、女が目の前に現れて妊娠を告白して、右往左往するという話だ。

この時代には、ありがちなストーリーだ。いくら与太者を映し出す映画といってもコンプライアンス社会の今では考えられない悪さを繰り返す。音楽は黛敏郎、でもモダンジャズが基調だ。今では不良音楽というよりインテリが聴くものなので、ストーリーにマッチングというように感じない。

⒈川地民夫
まあ、ハチャメチャな役柄だ。ドライバーでドアをこじ開けて外車を盗んだり、女性を強姦したりする。何度刑務所に入ってもおかしくはない奴だ。それでも、若くて血気あふれているという感じがにじみ出ている。この映画を見て、同じ年に公開された大島渚監督川津祐介主演青春残酷物語を連想する。川津祐介は学生役なので、むしろ川地民夫の方がアウトローだ。

日活には石原裕次郎、小林旭というスターがいて、この映画が放映される時は赤木圭一郎も生きていた。ただ、映画量産時代にはまだまだ主役は足りない。大映の川口浩、松竹の川津祐介、日活の川地民夫の3人は各映画会社における立ち位置がほぼ同じで、似たような役柄を演じている。川地民夫強姦した後に、その女から付きまとわれるのは処刑の部屋川口浩が若尾文子に眠り薬入りの酒を飲ませて犯して、直後に私のこと好きなの?と追われるのに似ている。そういうのが多数派なわけではないと思うが?

いかにも、現代に生きる女性陣からすると不愉快きわまりない映画ばかりの昭和30年代である。女性の地位は明らかに低かった。田園調布にある強姦した女性の洋館に行ってアトリエをメチャクチャにする。今は格差社会と左翼人はのたまうが、当時のギャップは比較にならない


⒉昭和35年の渋谷
渋谷駅のハチ公前の雰囲気が少し違う。駐車ができる。今よりも街を走る車の台数がはるかに少ないから、できるのであろう。交差点あたりの映像では西村のフルーツパーラーの看板が見える。高速道路が通っていないので、雰囲気が違うけど、今は歩道橋のある渋谷警察署側の東口から、246あたりも道路に車がスカスカだ。銀座線車庫がマークシティの中になって久しい。ただ、自分が見慣れているのがこの映画のシーンにある急な坂の横にオープンエアで車両がある姿だ。

川地民夫がたむろうのが、渋谷のジャズ喫茶だ。これはどこなんだろう?今の西武百貨店が建つ場所に映画館があったことを知っているのは、自分と同年代が最後だろう。小学校低学年で父に連れて行ってもらって渋谷にいくと、センター街あたりの大衆酒場でシラスを食べたものだ。109ができる前のくじら屋にもよく行った。ロシア料理のサモワールに行くのは小学校高学年以降だ。

昭和40年代前半、渋谷駅の外には傷痍軍人が大勢いたし、夜でもサングラスをしている怖いお兄さんセンター街を歩いていた。昭和35年当時は横井英樹襲撃事件で渋谷を縄張りにした安藤昇が逮捕され、留置されている頃だ。とはいうものの怖い男たちが街に多くいたのは子どもの自分でもわかる。


⒊郷鍈治
郷鍈治演じる川地民夫の連れは、どこかに帰属した方が良いと暴力団の仲間入りしようとしている役。彼女は外人相手の街娼だ。結局、抗争に巻き込まれて半殺しを喰らう。クレジットでは郷鍈治は新人となっている。宍戸錠の弟で、ちあきなおみの夫だ。早死にしてしまい、落胆したちあきなおみは再三の芸能界復帰懇願にも一度も首をふらないのは有名な話だ。

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