goo blog サービス終了のお知らせ 

映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「人生の特等席」 クリントイーストウッド

2012-12-04 06:02:25 | クリントイーストウッド
クリントイーストウッドの新作映画「人生の特等席」を劇場で見た。
「グラントリノ」で俳優業卒業と言われていたイーストウッドがメガホンをとらずに、俳優に専念する。
予想よりもよかった。
父娘の愛情をこんなに素晴らしく描いた映画はそうはない。見ていくうちに引き込まれていった。
どちらかというと、娘をもつ父親が感動する映画のような気がする。

主人公ガス(クリントイーストウッド)はアトランタブレーブスの老スカウトだ。ガンコ一筋の性格で妻と死別して27年の一人暮らしだ。弁護士の娘ミッキー(エイミーアダムス)とは別々に暮らしている。老いて最近は目の調子も悪い。検査してもらったら失明の危機すらある状況なのに、そのままスカウト業を続ける。体調の異変に気がついた同僚(ジョングッドマン)は娘に連絡する。娘は弁護士事務所のパートナーになれるかどうかの瀬戸際で、次の裁判に勝ったらパートナーに推挙すると言われていた。そんな多忙の娘であったが、病院に問い合わせて父親の目が悪いことを知る。娘は父に勧告するが、父娘ともに頑固で話はいつものように決裂だ。


主人公は有望選手の出る試合を見にノースカロライナに向かう。そんな主人公を見て、同僚は娘に一緒についていってあげたらという。自分の昇進がかかった大事な時であるが、娘は休暇を取り追いかけて行った。
その有望選手は強打者でドラフトの目玉だ。他のメジャーリーグのスカウトも黙ってはいない。そこには以前主人公がスカウトした男フラナガン(ジャスティン・ティンバーレイク)もレッドソックスのスカウトとして来ていた。投げすぎて肩を壊してブレーブスからはトレードされて、今はスカウトだ。主人公は昔の仲間と旧交を温めにバーへ行く。娘も一緒についていった。そこで娘は店にいた男にからまれた。すぐさま助けに来る父親が男の胸ぐらをつかみ修羅場になる寸前、止めに入る。それをきっかけに娘とフラナガンは近づくようになるのであるが。。。

英題は「Trouble with the curbe」という。curbeはこの映画の中にいくつか出てくる。人生でもあり、車道でもあり、ピッチャーの投げるカーブでもある。一瞬なんだ?という英題が見終わるとなるほどと思えてくる。

野球映画でもある。
「マネーボール」の舞台となったアスレチックスはID野球の本場のようなチームだった。今回はまるで反対で主人公はパソコンは一切触れない、自分の触感だけしか信じられないスカウトとして描かれる。娘もその父の元で育ったので野球好きである。名前のミッキーはミッキーマントルからとられたのは明白、それ以上に野球オタクの域に達している。
劇中に野球の記録知識に関するクイズをレッドソックスのスカウトである恋人とバーで語りあう場面が出てくる。「20勝投手4人いたのに優勝できなかったチームは何処?」「両リーグでMVPを取ったのは誰?」なんて質問を語りあう。この場面、背筋がぞくっとした。少年時代野球の記録オタクだった自分は知っていた。こんな楽しいデートってないだろう。自分も大学時代こんな話を飲み屋で後輩たちと語り合った記憶がある。相手は男だけど、楽しい瞬間なので30年たっていても記憶から抜けない。最後に出た「レジーがワールドシリーズで3本打った時のピッチャーは誰?」しびれるなあ!!レジージャクソンだよね。自分は答えがわからなかった。
そんな娘ミッキーが途中から野球で重要な役どころを見せる。
これは見てのお楽しみだが、楽しい展開だ。

そんな娘との父娘愛も語られる。強い遺伝子があるせいか、2人とも頑固だ。すぐケンカしてしまう。それでも仲直りというか、普通の状態で話ができるというのもやっぱり親子だからであろう。突如小さい時のつらい思い出を普通の食事の時にべらべら話出して、楽しい場面を台無しにしてしまういかにも女性的混乱のシーンを見せたりするのが象徴的だ。

イーストウッドは明らかに「グラントリノ」から年を取っている。そりゃそうだろう、82歳だ。40年以上親しんだ彼の声も老いでかすれてきた。前回俳優業卒業を宣言した後のこの作品は本当に最後になるかもしれない気もした。劇中はほぼ出ずっぱりだったが、この声のかすれは限界に近付いている印象だ。

エイミーアダムスはいつもながらかわいい。今回は弁護士役でインテリだ。父親に距離を置きながら自立する女性を演じる。エリート弁護士に求愛されながらもふん切れない。相手との壁をつくってしまう。30過ぎの美人でインテリだけど結婚しない女の典型をうまく演じている印象だ。

映画「目撃」でも似たような親子愛があった。あの時泥棒役のイーストウッドはローラリニーと素敵な親子を演じた。自分が好きなイーストウッドの一つだ。今回の親子愛はもっと自分の心に響いた。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする