映画とライフデザイン

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異人たちとの夏  大林宣彦

2010-08-15 09:43:49 | 映画(自分好みベスト100)
実に泣ける映画である。心が温まりたまらなくなって泣ける。
大林宣彦監督による昭和の最後63年の作品である。原作は山田太一である。「岸辺のアルバム」「想い出づくり」などのテレビドラマの脚本で当時ナンバーワンの売れっ子だった。風間杜夫が主人公で、名取裕子、片岡鶴太郎、秋吉久美子が脇を固める。離婚後一人暮らしになった風間杜夫の周りに奇妙な事象が次から次へと起きていく。映画の技巧が今ひとつと思わせる部分もいくつかあるが、話の展開がひたすら泣かせる。

テレビの脚本の仕事をしている風間杜夫は、離婚して今は一人暮らしである。その部屋を同じマンションに住む名取裕子が突然訪れる。不意の訪問に風間は身構える。辛いことがあったのか?少し酔っており部屋で一緒に飲みたいという。美女の訪問だが、風間はドアを閉めた。その翌日から彼にとって奇妙なことが起きる。
気分転換に浅草に行った。浅草は主人公にとって12歳まで育った懐かしいところだ。ぶらぶらしたあと、六区の演芸場にはいった。そこで落語を楽しんだ。ある落語家の小噺のとき、客席の男性から声がかかった。その声には聞きおぼえがあった。席を前にうつしてみた。似ていると思った。座が終わると、その男こと片岡鶴太郎がうちに遊びに来いよと誘ってきた。風間は下町の裏通りを歩きながらついていって部屋に入った。そこには秋吉久美子がいて、歓待してビールを注いでくれた。片岡と秋吉は28年前に亡くなった風間の父と母にそっくりだったのである。帰りがけに名前を聞いたら「なんで親の名前を聞くんだと言われた」間違いない自分の親だと確信するが。。。。



このあと話は奇妙な方向に進んでいく。
小さいころに別れた父と母との再会を何度も楽しむのである。しかし、彼はだんだんとやつれていく。それは同じマンションの名取裕子にも指摘される。。。

ゴースト映画の色彩もある。しかし、根底に流れるのは父母と子供との厚い愛情である。それを思わせる言葉を聞きながらそこはかとなく涙が出てきた。こんなに泣けるのは久しぶりだ。そして一昨年連続して亡くなった自分の父と母のことを思った。何もしてあげられなかった無念さを心に思いながら泣けてきた。

昭和の最後である。東京の土地が史上空前の上昇をした直後だ。実勢地価のピークは国土法届け出の通達が出た直後の62年の冬だろう。その色彩を浅草の下町情緒と対比させながら穏やかに映画ができている。傑作というにはちょっと違う。何とも言えないハートフルな気持ちにさせる映画だ。

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2 コメント

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Unknown (フキン)
2010-08-15 17:13:28
時々お邪魔してブログ拝見しています。
去年お母様を亡くされた前後の記事も覚えていますよ。
きっと、この映画をご覧になったのは泣きたかったあなた様の心の反映があったのだと思います。
何も出来なかったと泣いているあなたをお父様もお母様も優しい顔できっとどこかで見つめていらっしゃると思いますよ。
お盆ですもんね・・・。
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ありがとうございます。 (wangchai)
2010-08-15 18:07:36
フキンさんこんにちは

やさしい言葉をかけていただきありがとうございます。何気なく観た映画だったのに、途中からの展開に急にこみ上げるものがありました。

父が2年前の7月、母が11月に亡くなりました。この映画では突如主人公の父母が姿を現します。もし自分の前に出てきたらなんてこと考えていました。私は東京なので、盆は7月に寺に行っています。今年は3回忌で、実は二人まとめて来週やることになっています。そんなこともあってか、地上に舞い戻ってきた気がしてきました。

これからもよろしくお願いします。
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