映画「あなたへ」を劇場で見た。
81歳になった高倉健がついに登場だ。いつもながらの演技スタイルは変わらない。以前「夜叉」で一緒だった田中裕子、ビートたけしの明治大学出身の後輩たちが脇を固める。このところ3年前に自分がブログアップした「夜叉」へのアクセスが異様に多い。みんな映画「あなたへ」を見ているんだろうなあと思いながら、今の高倉健を応援するつもりで映画館を訪れた。
ロードムービーは大好きだ。それぞれの地方のいいところを映しつつ、いろんな場所で出会う人たちの触れ合いを映像で語る。雪山を借景にした富山市の風景からスタートして、長崎平戸の古い町並みや風の音を感じさせる灯台の映像など、監督と撮影者は映像コンテの選び方がうまい。抒情的肌合いがある。ここのところ「ダークナイト」「アベンジャーズ」などの末梢神経をとことん刺激する作品を劇場で見てきたので、妙に落ち着いて心地よい。
主人公倉島英二(高倉健)は富山刑務所の刑務官である。受刑者の木細工の手伝いをする技官だ。病気療養中だった妻(田中裕子)が亡くなり、遺言の手紙を添えた女性が訪ねてきた。手紙は2通あった。その一つには自分の遺骨を故郷の長崎平戸の海に沈めてくれないかということが書いてあった。もう一つはすぐ封を切らず郵便局留めにしてくれという。
もともと妻は刑務所に童謡を歌う慰問に来ていた女性だった。刑務所の囚人の一人が恋人だったが、死んでしまい失意だった所を主人公が慰めたのが2人が一緒になるきっかけだった。
映画ではその回想が少しづつ入ってくる。
主人公は刑務所の総務部長(長塚京三)に辞表を提出して、遺言を果たすためワンボックスカーで長崎へ向かうことにした。富山を出発して、飛騨路で高校の国語の教師だと名乗る男(ビートたけし)と知り合った。彼も同じように妻を亡くしたという。慣れない主人公とキャンプ場で一泊したが、目を覚めると本を一冊置いたまま姿を消していた。
そのまま、関西へ向かい京都の駐車場で車を止めていると、バッテリーケーブルを貸してくれと一人の男(草剛)に頼まれる。結局車は動かない。主人公は頼まれるまま、大阪まで男を連れていく。男は北海道の駅弁イカめしを各地のデパートで展示販売する仕事をしていた。人のいい主人公は頼まれるまま、弁当作りの手伝いをする。男には相棒(佐藤浩市)がいた。飲んだ後再会を約束する。
車は九州に向かう。その途中で関門海峡でもう一度国語教師にあう。主人公と国語教師は旧交を温める。その時、なぜかパトカーが近づいてくるのであるが。。。
映画史上に残る傑作というわけではない。ストーリーが起伏に富んでいるわけではない。ビックリするほどの演技が見られるわけでもない。泣ける映画でもない。でもこの映画の根底に流れる独特のムードに2時間安らぎの気持ちを持った。日本映画史を支えてきた大スター高倉健がもつ言葉にいえないオーラを強く感じた。
高倉健はその昔殺し屋やヤクザだった過去のある男性を演じると実にうまかった。「夜叉」もそうだ。顔立ちの奥にそういう連想をさせる凄味を残していたのだ。でもさすがに80をすぎそういうテイストがなくなった。まじめで朴訥な人生を過ごしてきた姿が連想されるようになった。この映画で見せる役は今の健さんの普段の姿なのかもしれない。そんな気がした。
クリントイーストウッドは日本式に言うと高倉健と同じ学年である。彼の俳優としてのラスト映画「グラントリノ」を見た時、これで俳優イーストウッドとお別れと思うとジーンとして、60年代の西部劇、ダーティハリーなど昔の映像が目に浮かんできた。健さんも同様である。佐々木小次郎を演じたサムライ姿、網走番外地や任侠もので見せた凄味、愛妻故江利チエミとの仲の良い姿、マイケルダグラスと男を張りあう「ブラックレイン」の刑事姿、過去のある男を演じた80年代以降の作品と次々目に健さんの姿が浮かんできた。これが最後なのかなあ?同じ思いで映画館を訪れる老人たちも多いのかもしれない。
田中裕子についても触れたい。映画「いつか読書をする時」を見てびっくりした。無表情な顔つきにその昔の妖艶さが全く見えないのである。「夜叉」や「天城越え」で見せた色っぽさがない。演技とはいえ、驚いた。この映画もその流れをくむ。明らかに彼女の顔が変わっている。結婚で苦労しているのかなあ?上の写真の笑顔はここではめずらしい。これは往年の笑顔と同じだ。演技のレベルはもともと高い。ここでも安定している。
あとの出演者は日本映画を代表する人たちだ。ビートたけしはその強い個性を少ししかあらわにしない。佐藤浩市は先だって父親と一緒に原田芳雄の遺作に出演、ここでも高倉と共演する。存在感がないかと思ったら、少しづつ重要性を増す。そういえば父上三国連太郎と高倉健共演の歴史的名作「飢餓海峡」から50年近くたつ。
もう一作くらいやってもらえないかなあ
健さんより年上の名優大滝秀治が踏ん張っているのを見て、もう少し頑張ってもらえるといいんだけど。。。
81歳になった高倉健がついに登場だ。いつもながらの演技スタイルは変わらない。以前「夜叉」で一緒だった田中裕子、ビートたけしの明治大学出身の後輩たちが脇を固める。このところ3年前に自分がブログアップした「夜叉」へのアクセスが異様に多い。みんな映画「あなたへ」を見ているんだろうなあと思いながら、今の高倉健を応援するつもりで映画館を訪れた。
ロードムービーは大好きだ。それぞれの地方のいいところを映しつつ、いろんな場所で出会う人たちの触れ合いを映像で語る。雪山を借景にした富山市の風景からスタートして、長崎平戸の古い町並みや風の音を感じさせる灯台の映像など、監督と撮影者は映像コンテの選び方がうまい。抒情的肌合いがある。ここのところ「ダークナイト」「アベンジャーズ」などの末梢神経をとことん刺激する作品を劇場で見てきたので、妙に落ち着いて心地よい。
主人公倉島英二(高倉健)は富山刑務所の刑務官である。受刑者の木細工の手伝いをする技官だ。病気療養中だった妻(田中裕子)が亡くなり、遺言の手紙を添えた女性が訪ねてきた。手紙は2通あった。その一つには自分の遺骨を故郷の長崎平戸の海に沈めてくれないかということが書いてあった。もう一つはすぐ封を切らず郵便局留めにしてくれという。
もともと妻は刑務所に童謡を歌う慰問に来ていた女性だった。刑務所の囚人の一人が恋人だったが、死んでしまい失意だった所を主人公が慰めたのが2人が一緒になるきっかけだった。
映画ではその回想が少しづつ入ってくる。
主人公は刑務所の総務部長(長塚京三)に辞表を提出して、遺言を果たすためワンボックスカーで長崎へ向かうことにした。富山を出発して、飛騨路で高校の国語の教師だと名乗る男(ビートたけし)と知り合った。彼も同じように妻を亡くしたという。慣れない主人公とキャンプ場で一泊したが、目を覚めると本を一冊置いたまま姿を消していた。
そのまま、関西へ向かい京都の駐車場で車を止めていると、バッテリーケーブルを貸してくれと一人の男(草剛)に頼まれる。結局車は動かない。主人公は頼まれるまま、大阪まで男を連れていく。男は北海道の駅弁イカめしを各地のデパートで展示販売する仕事をしていた。人のいい主人公は頼まれるまま、弁当作りの手伝いをする。男には相棒(佐藤浩市)がいた。飲んだ後再会を約束する。
車は九州に向かう。その途中で関門海峡でもう一度国語教師にあう。主人公と国語教師は旧交を温める。その時、なぜかパトカーが近づいてくるのであるが。。。
映画史上に残る傑作というわけではない。ストーリーが起伏に富んでいるわけではない。ビックリするほどの演技が見られるわけでもない。泣ける映画でもない。でもこの映画の根底に流れる独特のムードに2時間安らぎの気持ちを持った。日本映画史を支えてきた大スター高倉健がもつ言葉にいえないオーラを強く感じた。
高倉健はその昔殺し屋やヤクザだった過去のある男性を演じると実にうまかった。「夜叉」もそうだ。顔立ちの奥にそういう連想をさせる凄味を残していたのだ。でもさすがに80をすぎそういうテイストがなくなった。まじめで朴訥な人生を過ごしてきた姿が連想されるようになった。この映画で見せる役は今の健さんの普段の姿なのかもしれない。そんな気がした。
クリントイーストウッドは日本式に言うと高倉健と同じ学年である。彼の俳優としてのラスト映画「グラントリノ」を見た時、これで俳優イーストウッドとお別れと思うとジーンとして、60年代の西部劇、ダーティハリーなど昔の映像が目に浮かんできた。健さんも同様である。佐々木小次郎を演じたサムライ姿、網走番外地や任侠もので見せた凄味、愛妻故江利チエミとの仲の良い姿、マイケルダグラスと男を張りあう「ブラックレイン」の刑事姿、過去のある男を演じた80年代以降の作品と次々目に健さんの姿が浮かんできた。これが最後なのかなあ?同じ思いで映画館を訪れる老人たちも多いのかもしれない。
田中裕子についても触れたい。映画「いつか読書をする時」を見てびっくりした。無表情な顔つきにその昔の妖艶さが全く見えないのである。「夜叉」や「天城越え」で見せた色っぽさがない。演技とはいえ、驚いた。この映画もその流れをくむ。明らかに彼女の顔が変わっている。結婚で苦労しているのかなあ?上の写真の笑顔はここではめずらしい。これは往年の笑顔と同じだ。演技のレベルはもともと高い。ここでも安定している。
あとの出演者は日本映画を代表する人たちだ。ビートたけしはその強い個性を少ししかあらわにしない。佐藤浩市は先だって父親と一緒に原田芳雄の遺作に出演、ここでも高倉と共演する。存在感がないかと思ったら、少しづつ重要性を増す。そういえば父上三国連太郎と高倉健共演の歴史的名作「飢餓海峡」から50年近くたつ。
もう一作くらいやってもらえないかなあ
健さんより年上の名優大滝秀治が踏ん張っているのを見て、もう少し頑張ってもらえるといいんだけど。。。