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知識によって見え方が変わるのか

2006-07-18 23:00:58 | 視角と判断

 上の図は心理学者ヴェルトハイマーが考案した図です。
 白い背景と黒い背景におかれた半ドーナツ型とドーナツ型はすべて同じ明るさの灰色なのですが、条件によって明るさがかなり異なって見えます。
 一番左の例では黒い背景におかれたものと白い背景におかれたものは、明るさの対比によってかなり違って見えます。
 ところが右のドーナツ型を見ると一つにつながって、まとまりをもっているので、黒い背景と白い背景にまたがっているのに、明るさの対比を超えてほぼ一様の明るさに見えます。
 右側のドーナツ型がほぼ一様の明るさに見えるのは、一つのドーナツ型のものだと脳が考えるためだと心理学では説明されます。
 左側の離れた半ドーナツ型の場合は、対比効果によって自然に明るさが違って見え、右の場合はドーナツ型という知識に影響されて同じ明るさに見えるというのです。
 
 こういう説明は至極もっともらしいように感じられますが、ちょっと考えるとおかしな説明だなと気がつきます。
 知識に影響されて見え方が違うというなら、「半ドーナツ型はすべて同じ明るさの灰色だ」ということが分かってから見れば、すべてほぼ一様の明るさに見えるはずです。
 ところが同じ明るさだと種明かしをされてから見ても、やはり黒い背景におかれたものと、白い背景におかれたものは、明るさが違って見えます(一番左の二つの半ドーナツ型)。
 知識によって見え方が変わるという説明は、もっともらしくはあっても事実ではないのです。

 ところで、真ん中の場合は半ドーナツ型はくっついているのですが、右の場合と違って上下を区切る線が入っています。
 そのため左の場合ほどハッキリした差は感じられませんが上下で明るさに差があります。
 ちょうど右と左の中間のような感じであるときは上下が同じような明るさに見えたり、またあるときは上下の明るさを強く感じたりします。
 つまり、知識に依存して見え方が変わるという風な説明は無理筋だということが分かります。
 
 それじゃあどう説明すればいいのかということになるのですが、それは眼を動かすから見え方が変わるということです。
 ためしに黒い背景のほうに眼を向けてみると三つの半ドーナツ型はすべて同じように明るく見え、下の半ドーナツ型は一様に暗く見えます。
 こんどは下の白い背景のほうに眼を向けてみると三つの半ドーナツ型は同じように暗く見え、上の三つの半ドーナツ型は一様に明るく感じます。
 いずれの場合も右のドーナツ型でも上と下とで明るさが違って見えてています。
 真ん中の場合は上下の半ドーナツ型に同時に注意を向けて見ていれば、上下が同じ明るさに見えるようになりますし、左の場合でも上下の半ドーナツ型に注意を集中してみていると同じ明るさに見えるようになります。
 眼を動かせばそれぞれの背景との対比が感じられるのですが、視線を固定させて背景の影響をはずせば同じように見えるということなのです。


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