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あいまいな比較

2008-01-15 22:26:30 | 視角と判断

 A図はいわゆるミュラー.リヤーの錯視図で、①の軸線のほうが②の軸線より長く見えるというものです。
 図形全体の長さでなく、矢羽根を切り離した軸線の部分の長さを比較するように求められるのですが、うまくいかないのが普通です。
 子供や老人は矢羽根の部分と軸線を切り離して見ることができないため、①の軸線と②の軸線がかなり違うように思ってしまうといいます。
 子供でなくても①と②を見比べれば、①の軸線のほうが長いと感じます。
 ①のほうが長く感じる理由については、いろんな説があるのですが、本当に軸線の長さを比較しているかどうかを確かめようとしていません。
 とくに②のほうは軸線と矢羽根とが重なる部分が多いので、軸線部分を切り離してみることは子供でなくても困難です。

 B図はいずれも正方形なのですが、色や線を加えて見え方がどのように変化するか試したものです。
 左の図形では暗い部分は明るい部分より縮小して見えるため、正方形の下辺が狭くなって見えます。
 まん中の図では斜めの線によって、正方形の左右の両辺が下にいく似に従って内側に傾いて見えるため、下辺は上辺より短く見えます。
 右側の図はA図の①を上辺に重ね、②を下辺に重ねたものです。
 もし①の軸線が②の軸線より長く見えるというのであれば、正方形の上辺のほうが下辺より長く見えるはずです。
 つまりこの四辺形は左の二つの図形と同様に、下辺が狭く見えるはずです。

 ところが予想に反して、この四辺形は下辺が狭く見えません。
 ということは軸線の長さだけを見ることが可能ならば、①の軸線と②の軸線は、ほぼ同じ長さに見えるということになります。
 そうなると①の軸線のほうが②の軸線より長く見えるといっても、きちんと比較して見てはいないということになります。

 B図は上下で比較したのですが、左右にしても同じ結果が出ます。
 C図は正方形の左辺のほうが長く見えるようにしたものです。
 ここでは左の図と真ん中の図は左辺が長く見えますが、一番右の図では左辺が長くは見えません。
 それどころか左辺のほうがこころもち短くさえも見えます。
 矢羽根の錯視というのは、錯視と言えるかどうか疑わしいのです。

 ①と②の軸線部分の長さを比較するといっても、矢羽根の部分と軸線部分の境目がハッキリしないので、軸線部分の比較をしているつもりでも、実際は比較できていないのかもしれません。
 どこからどこまでが軸線かハッキリ分らないまま判断しているのでしょう。
 比較できないまま、図形全体の長さを見比べた印象から①のほうが長いと判断している可能性があるのです。
 視覚の判断といっても、判断の対象があいまいな状態で判断を迫られたために誤るということもあるのです。


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