60歳からの視覚能力

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結果論的な解釈

2007-02-25 22:35:18 | 視角と判断

 上の図の方は心理学者のエーでルソンの考案したもので、「同じ」と記されているのは線で示している部分が同じ濃さの色であるという意味です。
 普通に見ればずいぶん色が違うと感じるはずです。
 物理的には光度計のようなものを使えば、二つの部分はそれぞれ同じ濃さの灰色だとわかるのですが、人間の眼で見ると同じには見えないのです。
 同じ濃さの灰色なのになぜ濃さが違って見えるかという疑問に対し、紙が折れ曲がった形に見え、真ん中の部分が影になっていると脳が判断するからだというのが心理学の一般的な説明です。

 図が三次元的に見え、光が当たっているように見えるので、影の部分と光の当たっている部分とに分けて判断するというのです。
 左上の図の例で言えばいちばん左の列といちばん右の列に光が当たり、真ん中の列が影になって見えます。
 真ん中の列は左の列と同じ色なのに影になっているため、白い部分が灰色に、黒い部分がさらに黒く見えると脳が解釈すると言うのです。
 真ん中の列の下の部分は白い部分が影になっている状態、右の列の真ん中は黒い部分に光が当たった状態と解釈するので、右の列の真ん中のほうが黒く見えるという説明です。

 ところで下の図のように真ん中の部分が灰色になるとどうでしょうか。
 形は上の図形とまったく同じで、真ん中の部分の色が違うだけなのですが、先ほど濃さがずいぶん違って見えた二つの部分はいずれも同じ濃さに見えるようになっています。
 紙が折れ曲がっているように見え、光が当たっているように見えるという点では上の図も下の図も同じです。
 光が当たっているように見える列と、影になって見える列とで同じ色が違った濃さに見えるという説明は成り立っていないのです。

 「光が当たって影が出来たと考えるためにこのように見える」というのはあとから考えられて解釈です。
 図形の部分の元の色がどのようなものであり、どの程度の光が当たっているのかということは上の図からではわからないのです。
 真ん中の列は本当はもっと濃い色で、両脇の列より光が強く当たっているために薄く見えていると解釈することだって出来るのです。
 図形の見え方から元の色と光の強さを決めることは出来ないのですが、図形の色と光の強さが決まれば見え方は決まります。
 心理学的解釈は結果から原因を説明しようとする、いわゆる結果論なのです。
 


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