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漢字の擬声語

2008-09-26 00:06:34 | 言葉と文字

 「牛」とか「犬」は象形文字ですが、「グ(ゴ)」とか「ケン」という音声は泣き声からとったものとされています。
 つまり古代の中国では、牛や犬は「グ(ゴ)}とか、「ケン」と言う声で鳴くからそのように名づけられたということです。
 ところが、この呼び名は牛の場合は「ギュウ」となり、現代では「ニュウ」となっていて、犬は「ケン」から現代では「ツアン」と変化してきています。
 ところが鳴き声も同じように変化したのかというと、牛は「モウモウ」で、犬は「ワンワン」となって日本と似てきています。
 「モウ」は口偏に「牟」と書くので、新たに作られた漢字ですから、「モウ」という音を表すために造字されたものと思われます。

 「牟」という字は漢和辞典を引くと会意文字で、「牛+モウと声が出るさま」となっていて、牛の鳴き声をあらわすとしていますが、「もとめる、ふえる、大麦、眸(眸)」などの意味も表します。
 音はモ、ボウ、モウと変化して、牛の鳴き声を表すために作られた文字が、ほかの意味をも持つようになって、鳴き声専用の字として口偏に「牟」という字が作られたようです。
 犬のほうは現代では「ワン」と鳴くとして文字のほうは「汪」という字を使っていますが、これは単に「ワン」という音を表すために「汪」という字に同居しています。
 つまり、最初は鳴き声に似せて名前をつけたのですが、名前と鳴き声がそれぞれ変化して別物になっているのです。

 「蚊」「蛙」「猫」などは、象形文字ではなく音を表す文字を既成の単語から借り、偏をつけて意味を暗示していますが、音はやはり鳴き声からとっていて、擬声語だといいます。
 蚊は「モンモン」と羽音が聞こえるので文(モン)という字を借りて、虫偏をつけて文字を作ったといいます。
 「かほどうるさきものはなし、ぶんぶといひて」という狂歌では蚊は「ぶんぶ」と羽音を立てると意識されていますが、これは「文」という字を「ブン」と読むようになったからではないかと思われます。
 ふつう「ブンブン」といえばハエやハチのイメージで、蚊の羽音を聞いても「ブンブン」というふうには聞こえません。

 現代の中国語では蚊は「ウェン」と発音し、蚊の羽音も「ウェン」と発音します。
 現代中国語では文章の文も、紋章の紋も、蚊も「ウェン」と発音しますから蚊という昆虫の発音だけが変わったのではありません。
 羽音も「ウェン」と変わったのですが、文字は口偏に翁(ウェン)と造字して擬声音であることを示しています。
 蛙の場合も名前が「エ(ア)}から「ワ」と変化するのにつれて、鳴き声も「ワ」に変化していますが、鳴き声は哇(ワ)でカラスの鳴き声と同じ字に当てられています。
 猫の場合は現代語では「ミャオ」で口偏に猫というやり方で造字されていますが、「猫」という動物の名前は「マオ」となっていますから、鳴き声と似ていますが少し違います。

 このように鳴き声から名前がつけられたものでも、その後の名前と鳴き声の変化の仕方はバラバラで、一貫性がありません。
 鳴き声の変化と名前の変化が一致する場合もあれば、まったく違うものもあり、それぞれ固有の変化をしています。
 擬声語にしても、単純に音声を借りる場合だけでなく、意味を持たせようとして造字したりする場合もあり、一貫性がありません。
 表音文字的な傾向に努めようとするかと思えば表意化しようとするので、一貫した表意文字化にはならないのです。


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