日本語は縦書きと横書きが並存していますが、これは日本特有の現象のようです。
もともと縦書きであった中国でも現在は横書きになっているのですから、漢字を使うと縦書きでなければならないということではありません。
ビジネス文書は数字が多く使われるので、横書きが便利なため、ほとんど横書きですが一般の書籍や新聞雑誌は縦書きがまだ主流です。
新聞などは横書きにしたら売れなくなるので、縦書きでなければならないという人もいますが、中国では新聞が横書きになっているのですから、本当は日本の新聞が横書きであっても差支えがないのかもしれません。
日本語は縦書きのほうが読みやすいか、横書きのほうが読みやすいかという場合、読む速度を比べることで判定しようとするのが一般的です。
これまでに行われた研究では、小学生から大学生までを対象として、縦書き文と横書き文を読ませ、その読書スピードを比べることでどちらが読みやすいのかを判定しようとしています。
普通に考えれば、目が横に二つついているので視野は横に広く、また視線の移動も横のほうがスムーズなので、横書きのほうが早く読めるのではないかと予想されます。
しかし実際に読書スピードをはかってみると、小学生は縦書きのほうが速く、年齢が高くなるにつれ差が縮まり、大学生になると、あまり差がないという結果でした。
これは字を教える国語の教科書が縦書きのため、縦書きに先に慣れているためで、大学生になれば横書きにも慣れてきているので、差があまり見られなくなっているものと考えられています。
少なくとも、横書きのほうが生理的に読みやすく、その結果速く読めるというようなことではなく、慣れの問題が大きな要因になっているということのようです。
もし、縦書きも横書きも、慣れれば読むスピードが換わらないなら、すべて横書にしてしまったほうが能率的です。
縦書きから教えられているのに、慣れてくれば横書きの読書スピードも縦書きとほぼ同じというなら、最初から横書のみにしていれば、横書の読書スピードのほうが上回る可能性もあります。
しかし読みやすさというのは読書スピードだけで決まるものではありません。
どちらのほうが目が疲れないかという問題もあります。
校正をする場合、横書のほうが疲れやすいという話がありますが、これは横書のほうが、少ししか目を動かさずに読むことができるためです。
横書のほうが視野が広いので、目に入る文字数が多く、結果として焦点を固定した状態で読むことになり、目を少ししか動かさないで、固視に近い状態で読み、毛様態筋を緊張させやすいためだと考えられます。
縦書きの場合は、上下に視線を動かすので、固視しなくなるのと、多くの文字を捉えようとすると、目を大きく開けるので、焦点距離が長くなるためです。
図は縦書きの文章と横書の文章を、逆方向から書いたものと、180度回転させたものとを並べています。
横書の場合は180度回転して逆さまにしても、文字の配列を逆にしても比較的に楽に読めます。
縦書のほうは、逆方向からの読みに慣れていないということもありますが、たいていの人は、横書に比べ逆方法はとても読みにくいと思います。
これは下のほうから読もうとすれば、上の方の文字が認識しにくくなり、視幅が狭くなって全体が読み取りにくくなるためです。
横書の倍は行全体を見やすく、目をほとんど動かさないで読めますが、縦書の場合は目を動かさずには行全体を読み取りにくいのです。
縦書の場合でも正常方向の文字並びの場合には気がつきにくいのですが、逆方向のならびになると、行全体がよく見えていないことに気がつくのです。
読書スピードはともかく、ある程度長時間文章を読むときは縦書のほうが目は疲れにくいのです。