あまちゃんの カタコト中文日記

中国・杭州がえりのライター助手、日々のいろいろ。

小池真理子の名作『月夜の森の梟(ふくろう)』 

2023-02-20 | book


2020年1月に死去した、夫で作家の藤田宜永さんをしのんで書かれたエッセイ。新聞連載当時から多くの反響があり、千通近いメッセージが寄せられたという。

このエッセイが朝日に連載されている時に何度か読んだはずなのに(2020.6月~)。あの頃は個人的に落ち着かなくて、じっくりとは読めず。そのうちにどうでもよくなってしまった。
今回、老婆のリクエストで借りたこの単行本。
「今さらこのエッセイかよ。あなた、リアルタイムで読んでたやんか」と心の中でつぶやきつつ。
3日後くらいに「これ、良かった」と返却されてきたので、おやすみ前の読書タイムに読み始めると… いい、すごくいい(これは夜向きかも)。一篇、一篇、その研ぎ澄まされた感性と美しい文体の虜になってしまった。いいやん、小池真理子。

そういえば... 1年前、2022年の年賀状。あるお友だちの近況報告のなかに、
「新聞で『月夜の森の梟』を読んでから小池真理子が図書館の予約リストに加わった」と書いてあったのを思い出した。
遅ればせながら、ボクもいま猛烈に小池真理子の他の作品が読んでみたい。
ぽんちーさん、今度おススメを教えてたもれ〜(^人^)

”猛烈”ついでに言うと。
このエッセイを読んでいる最中、小池・藤田ご夫妻のことが猛烈に羨ましく、憧れてしまった。まるで森に住む野生動物の番(つが)いのように仲のいいお二人が...。

たとえば、こんなところ ↓
(抜粋)
私は生まれつき、他者に向かって感情を爆発させることができない性分だった
そんな私が、心をよぎったことをなんでも話し、怒りも哀しみも不安も苛立ちも、何もかもを共有することができたのが夫だった。彼のほうでも同様で、私たちは人に話せないほどくだらないことから、小説の話、思想的哲学的なことまで、飽きずしゃべり、笑い合っていた

ううむ、いいなぁ〜 理想的ではないか。

最後にYouTubeにアップされているご夫妻のインタビュー動画を( ↓ )。

小池真理子 藤田宜永 直木賞受賞インタビュー 「夫婦そろって直木賞」

エッセイの終盤、小池さんは「先日、むしょうに夫の声が聴きたくなった」と、この動画を見たエピソードを書いている。もちろん、藤田さんが亡くなられた直後はとても見られなかったものだ。
小池さん、やっぱ綺麗だな。藤田さん、そうそう、ちょっとやさぐれた感じの(昔のフォーク歌手?みたいな)人だったな。
ふと、エッセイの前半のほうにあったエピソードを思い出した。2人が出会い、共に住む部屋を探すために都内の不動産屋に行った時のはなし。途中、藤田さんがトイレに立つと、それを待っていたかのように不動産屋の男が怖い顔をして小池さんに向き直い、こう言った。「まだ間に合います。あの人はやめたほうがいい」。
傑作だ。それほど、当時の2人は経歴や見た目(から受ける印象)に格差があったということか。小池さん的には、その後の”波乱に富んだ人生”を予言された瞬間だったという。
ここまで書いて、いつものことながらボクはどうこの記事を終えようか困っている。しかし小池真理子のこのエッセイは〆が絶妙に上手い。ちっとは見習いたいものだ。
コメント    この記事についてブログを書く
« 笠原将弘シェフの「ザ・ヒュ... | トップ | 亜希の『家 ごはんと野球』に... »

コメントを投稿