「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

茶の間の正義 2005・03・08

2005-03-08 07:00:00 | Weblog


 今日の「お気に入り」は 、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から 。

 「 我々は世間が許す涙しか流さない 。世間が許す笑いしか笑わない 。
  それでいて泣いたのは 、笑ったのは 、自分だと言いはってきかない 。
   むかし 、世間が『 君には忠 、親には孝 』を当然としたとき 、少年の
  私はそれにさからった 。そのとき彼らが私をとがめた顔つきを 、私は
  まざまざとおぼえている 。いま彼らはその『 忠孝 』を笑う 。どうして
  彼らに和して私に笑えよう 。だから私は 、いま彼らのいわゆる進歩と
  平和を笑う 。それをとがめる顔つきは 、むかし忠孝を笑ったときの顔
  つきと 、瓜二つである 。」

  ( 山本夏彦著「 変痴気論 」所収 )


 「 テレビは巨大なジャーナリズムで 、それには当然モラルがある 。私は
  それを『 茶の間の正義 』と読んでいる 。眉ツバものの 、うさん臭い
  正義のことである 。」

  ( 山本夏彦著「 茶の間の正義 」所収 )



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