今日の私の大の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「あの仲よしだった中国とベトナムが不仲になって、中国はベトナムの国境を越えた。中国が支援していた民主カンボジアを、ベトナムが攻めたからである。いわゆる『中越戦争』である。ベトナムと中国は一枚岩だとなが年新聞で読まされていたから、読者は寝耳に水で驚いた。本当はベトナムと中国は千年来不仲で、ベトナムの歴史は中国に侵略された歴史だったのである。ただ当面の大敵アメリカに勝つために、しばらく仲よくしただけのことで、めでたく勝ったからもとのカタキ同士にもどったのである。そしてベトナムはソ連と結んだのである。書いて十五行読んで二十秒――たったこれだけのことを新聞は言わないから、読んで読者は分らなかったのである。」
(山本夏彦著「美しければすべてよし」所収)
「そこにあるものは目にはいるが、ないものは目にはいらない。したがって、そこにないものに私は注目する。」
「そこにないものを見ないと、世の中のことは分らない。それというのも、ものはそこにあるものより、ないものから成ることが多いからである。」
「けれども、あるものさえ見えないのに、ないものを見るのは困難である。」
(山本夏彦著「二流の愉しみ」所収)
「事実があるから報道があるのではない。報道があるから事実があるのである。」
(山本夏彦著「かいつまんで言う」所収)
「私は断言する。新聞はこの次の一大事の時にも国をあやまるだろう。」
(山本夏彦著「『豆朝日新聞』始末」所収)
「あの仲よしだった中国とベトナムが不仲になって、中国はベトナムの国境を越えた。中国が支援していた民主カンボジアを、ベトナムが攻めたからである。いわゆる『中越戦争』である。ベトナムと中国は一枚岩だとなが年新聞で読まされていたから、読者は寝耳に水で驚いた。本当はベトナムと中国は千年来不仲で、ベトナムの歴史は中国に侵略された歴史だったのである。ただ当面の大敵アメリカに勝つために、しばらく仲よくしただけのことで、めでたく勝ったからもとのカタキ同士にもどったのである。そしてベトナムはソ連と結んだのである。書いて十五行読んで二十秒――たったこれだけのことを新聞は言わないから、読んで読者は分らなかったのである。」
(山本夏彦著「美しければすべてよし」所収)
「そこにあるものは目にはいるが、ないものは目にはいらない。したがって、そこにないものに私は注目する。」
「そこにないものを見ないと、世の中のことは分らない。それというのも、ものはそこにあるものより、ないものから成ることが多いからである。」
「けれども、あるものさえ見えないのに、ないものを見るのは困難である。」
(山本夏彦著「二流の愉しみ」所収)
「事実があるから報道があるのではない。報道があるから事実があるのである。」
(山本夏彦著「かいつまんで言う」所収)
「私は断言する。新聞はこの次の一大事の時にも国をあやまるだろう。」
(山本夏彦著「『豆朝日新聞』始末」所収)