「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・03・16

2005-03-16 07:00:00 | Weblog


 今日の「お気に入り」は山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「『ねずみ講』は日本中の善男善女をだました、許せないと新聞がいうと、
  テレビも同じくいう。だまされたのは欲ばったからで、馬鹿だったから
  だというなら分るが、善人だったからだという。」

 「 ふつうだまされた者は首うなだれ、二度とだまされまいと心に誓うのに、
  だました方が悪い、それを取締らなかった政府はもっと悪いといわれては、
  首うなだれてばかりはいられない。『被害者友の会』でも結成して、損し
  た金を取戻そうと、出来もしないことを出来ると思って奔走する。だまさ
  れるほどの者だから、出来ると思うのである。」

  (山本夏彦著「笑わぬでもなし」所収)


 「 新聞はいつでも、だましたほうを悪玉にして、だまされたほうを善玉にする
  傾向があります。だから、だまされたほうは、はげまされたような気分になる
  のでしょうが、なにだまされたほうは欲ばりかバカだと私は思っています。」

  (山本夏彦著「つかぬことを言う」所収)


 「 私は、正直者は馬鹿をみるという言葉がきらいである。ほとんど憎んでいる。
  まるで自分は正直そのものだと言わぬばかりである。この言葉には、自分は
  被害者で潔白だという響きがある。悪は自己の外部にあって、内部にないと
  いう自信がある。」

  (山本夏彦著「毒言独語」所収)
コメント
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