今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から、昨日と同じ「『戦前』という時代」と題した昭和60年の連載コラムの一節です。
「私はこれらを面白ずくでしている。まんまと敵の裏をかいたと笑っている。本気ではないからありがたく思う人が少いのである。ふりかえってみれば私は何事にも本気ではなかった。第一『室内』という雑誌を三十年もやっているのだって何故か私にも分らない。物のはずみであり縁である。私が成功しないのは笑うからである。けれどもこれが笑わないでいられようか。笑うのは私がいついかなる席でも『他人』だからである。ずいぶん笑わぬように心がけてはいるものの持ったが病いでこれはなおらない。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)
「私はこれらを面白ずくでしている。まんまと敵の裏をかいたと笑っている。本気ではないからありがたく思う人が少いのである。ふりかえってみれば私は何事にも本気ではなかった。第一『室内』という雑誌を三十年もやっているのだって何故か私にも分らない。物のはずみであり縁である。私が成功しないのは笑うからである。けれどもこれが笑わないでいられようか。笑うのは私がいついかなる席でも『他人』だからである。ずいぶん笑わぬように心がけてはいるものの持ったが病いでこれはなおらない。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)