市居嗣治の「今日のお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

寄せては返す波の音 2017・07・27

2017-07-27 15:00:00 | Weblog




   今日の「お気に入り」は、2005年3月4日の記事の再録。


  「 昨日に続いて今日も山本夏彦さん(1915-2002)です。

    小学4年生のときに『人の一生』おおむねかくの如しと書いた綴方が『最後の波の音』の中に

   再録されています。


   『人の一生   4年 山本夏彦
 
    おいおい泣いているうちに三つの坂を越す。

    生意気なことを言っているうちに少年時代はすぎてしまう。

    その頃になってあわてだすのが人間の常である。

    あわててはたらいている者を笑う者も、自分たちがした事はとうに忘れている。

    かれこれしているうちに二十台はすぎてしまう。

    少し金でも出来るとしゃれてみたくなる。

    その間をノラクラ遊んでくらす者もある。

    そんな事をしているうちに子供が出来る。

    子供が出来ると、少しは真面目にはたらくようになる。

    こうして三十を過ぎ四十五十も過ぎてしまう。

    又、その子供が同じことをする。

    こうして人の一生は終わってしまうのである。』


    山本少年10歳のときの綴方ですが、『人は5歳にしてすでにその人』です。

    86歳になった山本老人はこの綴方について『最後の波の音』の中で次のように書いています。


   『もとより十歳の子供のことである。深い魂胆はないが、その直感は小児のときからのものだと

   今にして思われる。はたしてその通りだったのは遺憾である。』  」