今日の「お気に入り」。
「 構(かま)へて構へて所領を惜(おし)み妻子を顧りみ又人を憑(たの)みて・あやぶむ事無かれ
但偏(ただひとえ)に思ひ切るべし、今年の世間を鏡(かがみ)とせよ若干(そこばく)の人の死ぬるに今まで
生きて有りつるは此の事にあはん為なりけり、此れこそ宇治川を渡せし所よ・是こそ勢多(せた)を
渡せし所よ・名を揚(あぐ)るか名をくだすかなり 」
( 宮本輝著「骸骨ビルの庭」 講談社文庫 所収 )
日蓮上人が、建治3(1277)年8月4日、56歳の時に、
沼津に住んでいた斎藤弥三郎に宛てて認めた手紙の一節とか。
「 日蓮が、門下の者にあてた手紙の中に、『日輪のごとき智者たれども、若死あらば生ける犬に劣る』という
一節がある。また別の手紙では、『百二十まで持(たも)ちて名を腐(くた)して死せんよりは、生きて一日
なりとも名をあげん事こそ大切なれ』とも書いている。 」
( 宮本輝著「命の器」 講談社文庫 所収 )