肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『アレクサンドリア』、観ました。

2012-11-18 18:16:46 | 映画(あ行)

 

監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック

 『アレクサンドリア』、観ました。
4世紀末エジプトのアレクサンドリア。そこには人類の叡智を集めた図書館が
あり、図書館長の娘で天文学者でもあるヒュパティアによる、天体についての
授業が行われていた。宗教を問わずに生徒を集めていた彼女だが、急速に数を
増したキリスト教徒が古代の神を侮辱した事から、市民の間に争いが起きる。
やがて図書館はキリスト教徒に破壊される。数年後、増大するキリスト教徒は、
その支配の邪魔になるヒュパティアに狙いをつける……。
 何の予備知識もなく、軽い気持ちで観てみたらビックリした。この手の
“ハリウッド産”歴史映画にありがちな視覚的(CG)娯楽に比重を置いた大味な
凡作にあらず――。緻密に計算されたメッセージ性と、細部にまでしっかり
作りこまれたドラマ性を兼ね備えた秀作だ。近年の大作では間違いなく
ベストの部類に入る出来栄えだし、何より作品に対するスタンスが素晴らしい。
例えば、殺戮シーンひとつ取ってみても、“神(天)の視点”で描かれているので、
敵味方そのどちらにも肩入れすることなく、狭い輪っかの中で傷付け合い、
殺し合う“人間の愚かさ”だけが際立って見える。鑑賞後、誰が監督したのか
調べてみたら、アレハンドロ・アメナーバルだった、『アザーズ』に『海を
飛ぶ夢』に『オープン・ユア・アイズ』か――。なるほどね、さすがだ。
 さて、映画の舞台となるのは、アレクサンドリア。エジプトの中心都市に
して、文明と文化の発祥地だ。太陽系の惑星が皆、太陽を軸に回っている
ように、当時の世界は、アレクサンドリアを中心に動いていた。そう、どの
世界にも揺るがぬ軸が存在し、そこを基点に回っている。ならば、その人間
社会にとっての軸は何だろう――、それは《神》か??、いや、それは違う。
なぜなら、神も聖書も宗教も、時の権力者によって勝手に捻じ曲げられ、
都合よく形を変えて利用されたに過ぎないからだ。断じて軸には成り得ない。
物語終盤、教会から神への信仰を強制されたヒロインのヒュパティアは言う、
「私は“哲学”を信じます」と。彼女が信じたものは、哲学という名の《真実》だ。
軸は決して揺るがず、何事にも動じない。《真実》もまたひとつのみ――、
いかなる権力者をもってしても捻じ曲げることは出来ないのだ。
 その昔、イエスが十字架刑に処されたのは、人々が盲目だったからだと
いう。だとしたら、このアレクサンドリアもまた、“世界の軸”が何であるかを
見誤って崩壊していったのだろう。いや、そのイエスの寓話を例になぞれば、
この映画におけるヒュパティアこそが、イエスだろう。彼女こそが女神であり、
太陽の場所に位置する。長官のオレステス、奴隷のダオスらにとって彼女への
憧れこそが生きる活力であり、人生の“中心”だった。ここ(人間関係)に、
もうひとつの“円運動の中心力”が存在する。その軸である彼女が消えゆく時、
その男らの人生も崩壊していくのだ。

 
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