監督:ロバート・アルトマン
出演:ウディ・ハレルソン、トミー・リー・ジョーンズ、ケヴィン・クライン、リンジー・ローハン、ヴァージニア・マドセン、メリル・ストリープ、ギャリソン・キーラー
※2007年度キネマ旬報・外国映画ベストテン第3位
『今宵、フィッツジェラルド劇場で』、観ました。
ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場で、長年親しまれてきた
ラジオショウ「プレイリー・ホーム・コンパニオン」の、最後の公開生放送が
始まろうとしていた。私立探偵を気取った用心棒ノワール、名司会者キーラー、
カントリーシンガーのヨランダとロンダのジョンソン姉妹、カウボーイソング
デュオのダスティとレフティらが、次々と楽屋入りする。やがてショウが始まり、
白いトレンチコートの美女が現れる……。
巨匠ロバート・アルトマンの遺作。彼がそのキャリアの最後としてこの題材を
選んだのは、決して偶然ではないはずだ。今日の映画産業は合理化が進み、
CGやハイテク技術の進歩によって、スタジオの椅子に腰掛けたまま、脅威的な
映像を創造出来るようになった。しかし、そんな今だからこそアルトマンは問う、
果たしてそれが映画界全体にとって“本当の進化”なのか、と。この映画では、
明日になれば煙のように消えゆく“一夜限りのラジオショー”にスポットを当て、
その裏側で多くの人が互いに知恵を絞り合い、力を合わせながら“ひとつの
作品”を作り上げていくドラマが描かれていく。幾多のトラブルに気転を利かせた
アドリブで乗り越えていくベテラン司会者、出演歌手の無理難題に必死の
時間稼ぎをする声帯模写、哀しみを隠しながらも普段と変わらずステージに
立ち、歌い続けるミュージシャンたち‥‥、それぞれがプロに徹し、その役割を
プロとしてまっとうし、共同作業の中でショーを“ひとつの作品”に仕上げていく。
そして、それは目の前にある困難から逃げることは許されず、待ってはくれない
時間の中で、自らの力をもって乗り越えていかなければならない“人生の
縮図”のようにも思えてくる。
しかも、アルトマンは、そんなアナログ人間たちのドラマを描きながら、映画に
おける“アナログの面白さ”をたっぷりと見せてくれる。鏡の反射を利用した
撮影や、白いコートを着ただけの女を天使に見立てる演出の妙…。この映画を
観ていると、画面の隅々にまで拘り抜いた映像と、地道な作業を経て完成された
職人技に魅入られる。アナログからデジタルへ‥‥、しかし、どんなに時代が
変化しても変わらないもの…、いや、変えてはならないものが“人間力”では
なかろうか。映画中盤、突然の訃報からベテラン歌手の死を嘆く仲間達にショーの
司会者が言う、「老人の死は、哀しいものじゃない」と。さらに「最後のラジオ
ショウが終わるとき、新しい人生のドアが開く」とも。それが、今日(こんにち)の
映画界に託された“アルトマンの遺言”だと思うと、また泣ける。
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