【2007年・日本】試写会で鑑賞(★★☆☆☆)
浅田次郎原作の同名小説を映像化。
お江戸に生きた最後の侍が、貧乏神・疫病神・死神にまとわりつかれるという人情喜劇映画。
時代は幕末。【尊皇攘夷】【公武合体】の声が高まりつつあり、時代は大きく変わっていこうとしていた。別所彦四郎(妻夫木聡)は、御徒士という下級武士。別所家は代々将軍の影武者を勤めてきた由緒ある家柄である。しかし、婿養子にいった裕福な井上家からは離縁されてしまい、愛する妻の八重(笛木優子)と息子から引き離されてしまう。現在は無役として実兄・左兵衛(佐々木蔵之介)の家に居候する身分。左兵衛や兄嫁の千代(鈴木砂羽)からは邪険にされ、味方は母のイト(夏木マリ)だけという肩身の狭い日々を過ごしていた。そんなある日、彦四郎は昌平坂学問所でライバルだった榎本武揚と再会する。榎本は軍艦頭取となっており出世街道を順調に歩んでいた。蕎麦屋の甚平(香川照之)が言うには、向島にある三囲(みめぐり)稲荷にお参りしたからとのこと。その夜酔っぱらった彦四郎は、足を滑らせ草が生い茂る川岸へ転げ落ちてしまう。そこで寂れた三巡(みめぐり)稲荷の祠を見つけ、『これは分社に違いない』と手を合わせ祈願をしてしまう。そして翌日、彦四郎は貧乏神の伊勢屋(西田敏行)と出会うことになる…。
「怪談 新耳袋」に収録されている『三人来るぞ』的な物語。
これ、映画だよね?
出演者は豪華だけど、TVドラマよりも低いクオリティ。
「新網走番外地」シリーズ、「現代やくざ」シリーズ、「駅 STATION」、TVドラマの「赤い」シリーズ、「鉄道員(ぽっぽや)」などを手掛けてきた降旗康男監督の作品だけど、喜劇(コメディ)を撮るのは初めてなんじゃないのかな?
3人の災いの神と彦四郎とのやりとりは面白いんだけど、笑えないのである。
井上家の使用人・小文吾(佐藤隆太)が九字を切るシーンや貧乏神の伊勢屋がなさけない声を出すシーンで笑いは起きていたけれど、あれは喜劇的な面白さじゃなくて、奇異な言動をしているコトへの笑いなんだよね。
「エンタの神様」で言うアクセルホッパーの『ポンポンスポポン♪』や、ですYOの『あい、つぅいませ~ん!』みたいなもの。
彦四郎が酔って祈願してしまったのは、3つの災いが巡って来るという三巡(みめぐり)稲荷。
1人目の災いは、貧乏神。
この伊勢屋の働きで、別所家は家を売るしかなくなる程の目に合わされてしまうが、小文吾の九字により、秘法中の秘法である【宿替え】を行うことに成功する。
【宿替え】とは、取り憑いている彦四郎から別の人間に対象を移すことのできる最終手段。
しかし、この【宿替え】は彦四郎の知り合いである人間にしか対処することができない。
かくして、彦四郎の大事な人の家が貧乏に襲われることになってしまう。
2人目の災いは、疫病神。
相撲取りの格好をした九頭龍(赤井英和)である。
疫病神の役目は、相手を病気にしてしまうこと。
彦四郎はアッという間に病に取り憑かれ衰弱していくことになる。
病に伏せながらも一本気で誠実な彦四郎を見た九頭龍は、次第に心変わりをするようになる。
九頭龍は、自分の意志で【宿替え】を決意し、彦四郎の近しい人に取り憑くことになる。
3人目の災いは、死神。
幼い幼女の姿をしたおつや(森迫永依)である。
この子は初代実写版のちびまる子ちゃんなんだよね?
実写版の「ちびまる子ちゃん」は見たことないですが、凄い演技をする子役という噂は聞いておりました。
いや~、この子の演技は凄いです。
この子の演技と3人の災いの神たちとのやりとりはホント面白かったです。
それにしてもこれ映画だよね?
テンポの悪い笑いと今どきのTVでもやらないような稚拙な特撮。
あの稚拙な特撮は、意図的にやってるのかなぁ?
意図的にやっているとしたら、まるっきり逆効果。
途中の災いの神たちの特撮はまだいいとしても、ラストの感動させなきゃいけない場面でのあの特撮は酷すぎです。
予算無かったのかしらん?
監督は降旗康男。
追伸。
上映前には降旗康男監督が登場し、さまざまな裏話を語ってくれました。
『妻夫木くん主演で映画を撮ることが一番最初に決まっていて、物語を探しているときに本屋でこの本が発売されていたので…』的発言。
監督…それを言っちゃダメでしょ。
大人の事情は十分理解しているつもりだけど、それを公の場で言ったら観る方はげんなりですよ。
まずキャスティングありき…なんて、今のダメダメな日本のTVドラマの悪しき慣習と一緒じゃないですか。
嘘でもいいから『この原作をどうしても映像化したくて、彦四郎のイメージは妻夫木くんしか考えられなかった』…とか言ってくれないと。
とにかく上から妻夫木聡主演で映画を1本撮らなくてはいけなくて、やっつけ的に撮影したように思われちゃいますよ。
2007年6月23日公開
公式HP:
憑神